「積み重ね、水の泡」元看護師が思い語る 職員80人が分限免職の米内沢病院/秋田県




「積み重ね、水の泡」元看護師が思い語る 職員80人が分限免職の米内沢病院/秋田県 
2011.04.13朝日新聞  

 公立米内沢総合病院(北秋田市)の解散に伴い、職員80人が3月末で分限免職(解雇)となった。 
中には再就職先が決まらぬまま、失職した職員がいる。 
看護師だった女性(51)は「財政的に大変なのはわかる。 
でも、こんな簡単に辞めさせられるのは、やりきれない」と話した。女性は今、保育園で臨時職員として働いている。 


 財政難による病院側の解雇方針を女性が知ったのは昨年1月。 
「赤字病院」と周囲から言われていた。経営が苦しいことを理解したうえで、最大15%の賃金カットにも応じていた。 
それなのに――。ショックで言葉が出なかった。 

 「積み上げてきたもの、崩れちゃった」。 
高校卒業後、看護学校に進み、24歳で看護師に。米内沢病院一筋で28年。 
「患者との心のやりとりができること」が魅力だった。突然の解雇方針に眠れなくなり、睡眠導入剤を使うようになった。 
家族から「決まったこと」と諭され、患者からも心配された。 


 ●「再配置」の約束 

 病院組合の管理者は2005年、「米内沢病院を市立病院とし、職員を市職員として再配置する」と約束していた 
。だが、約束は守られず、職員との団体交渉はすべて拒否された。 

 昨夏、職員37人は、分限免職処分取り消しを求めて病院を運営する北秋田市上小阿仁村病院組合の管理者(津谷永光・北秋田市長)を提訴。 
しかし、先月、敗訴した。秋田地裁は「組織が違えば、地位の継承は困難」と判断した。 

 女性は、同僚4人と控訴。今月1日には、病院事業を引き継いだ北秋田市を相手に、公務員としての地位確認、損害賠償などを求める新たな訴訟を秋田地裁に起こした。 

 女性は、しばしばハローワークに足を運んだ。しばらく仕事に就くのはやめようと思ったが、夫は農業。農閑期は女性が収入が生活の支えだ。3月末、保育園の臨時職を見つけた。

 昨年末、病院側が、ハローワークの求人だけが入った封筒を職員に配ったことがある。A4で数枚。女性は「馬鹿にしてると思った」。 
北秋田市民病院と、米内沢病院を引き継ぐ北秋田市立米内沢診療所からは職員公募が4度来た。 
計51人を募っていた。 


 ●「新規」と同条件 

 履歴書と筆記試験を求められた。 
新規応募者と同じ条件に、女性は「(地域医療を担ってきたという)プライド捨ててまで応募する気にならなかった」。 

 病院側は、財政事情や医師不足から、病院の診療所化を決めている。 
裁判では1993~2009年度に約91億円を病院組合が負担し、10年度も8億円の負担が見込まれると主張した。 

 米内沢診療所は試験の結果、13人を採用し、今月1日開所した。医師2人、非常勤職員ら6人を合わせた21人態勢でスタートした。 

 免職された職員80人のうち、再就職が決まらなかった約20人は今もハローワークに通う。(笠井哲也)