存続模索する社会保険病院 地域の中核、先行き見えず





2011.03.08 共同通信   
  
存続模索する社会保険病院 地域の中核、先行き見えず 
 全国に52カ所ある社会保険病院の先行きが危ぶまれている。 

社会保険庁の解体で保有主体が独立行政法人に移行。厚生労働省は新体制での存続を模索しているが、めどは立たず、地域住民から不安の声が高まっている。 
  
「今国会で方針を示してもらわないと人材確保や施設整備が間に合わない」。 

高松市の住宅街にある社会保険栗林(りつりん)病院。前場隆志(まえば・たかし)院長は「先を考えると非常に不安」と打ち明けた。診療科は16、ベッド数271床の中核病院だ。 
  
社会保険病院を現在保有しているのは「年金・健康保険福祉施設整理機構」。 
機構は昨年解散する予定だったが、解散時期を2年間延長する法律が成立。 
厚労省は地元と調整ができれば病院を売却、またはさらに新しい独立行政法人の下で存続させる考えだが、将来像は示されていない。 
  
栗林病院は常勤医不足が進む。 
「不安視した大学病院が医師の派遣を控えている」と前場院長。 
耳鼻咽喉科は休診が続き、循環器科も非常勤医師が週2日診療に来るだけ。 
老朽化する建物の建て替えも国からストップがかかり、ままならない。 
 ただ住民の利用は多く、決算は黒字。退院したばかりという会社員宮本和代(みやもと・かずよ)さん(50)は「家族みんなで利用しているので、なくなると困る。今のまま継続してほしい」と不安そうな表情を浮かべた。 
  
唯一民間に売却されたのが浜松市の浜松病院。2002年に移転用地を確保したが、社保庁解体で棚上げに。医師が3人まで減り、閉院に追い込まれた。 
土地は地元の医療法人に売られ、来年新しい病院ができる。この医療法人は「自身の病院と統合して建て替える。社会保険病院とは違う、付加価値の高い病院にする」と説明する。 
  

都市部ではない病院はさらに深刻だ。 
ベッド利用率が36%にとどまる鰍沢(かじかざわ)病院(山梨県富士川町)では、住民団体が清掃ボランティアに熱心に取り組む。 
団体の青木茂(あおき・しげる)会長は「病院がなくなれば地域医療が崩壊する。政治の責任で存続させてほしい」。 
  
08年度決算で、浜松を含む53病院のうち黒字は30で、赤字の23を上回る。 
各自治体は、厚労省に公的病院としての存続を強く求めている。 
48カ所を運営する全国社会保険協会連合会の伊藤雅治(いとう・まさはる)理事長は「切り売りすれば病院の機能が失われる」と批判している