社会医療法人 認定進まず 民間病院 優遇措置もハードル高く



社会医療法人 認定進まず 民間病院 優遇措置もハードル高く 
2010.01.23 産経新聞  
  
◆大阪府11 全国トップ 

 都道府県の医療計画に基づいて救急、周産期など医療の重要な役割を担う「社会医療法人」の制度が始まって間もなく2年になる。 
民間病院に公立病院と同等の役割を受け持ってもらうため、法人にはさまざまな優遇措置が適用されるが、認定のハードルは高く、これまでに全国で約70法人が認定されたにすぎない。 
一方、全国の救急搬送の6割は民間病院が受け入れているが、経営的に厳しい病院が少なくなく、社会医療法人制度のあり方は、今後の医療体制に大きな影響を与える可能性がある。 

 社会医療法人は平成18年の医療法改正により、公益性の高い民間医療法人を認定するため創設され、20年度に制度がスタート。これまでに約70法人が認定されている。 

 都道府県が認定する。地域医療と救急医療で中心的な役割を担ってもらう狙いがあり、認定には、経営の透明化のため同族経営を排除。 
また、救急や災害、周産期医療に高い実績があることが要件とされる。その代わり一般の医療法人よりも法人税が軽減されるほか、今年度の税制改正で救急医療に関する施設の固定資産税が非課税にされた。 

 ただ、課題や問題点はある。認定法人と認定を目指す医療法人約200団体でつくる社会医療法人協議会は、国会議員への要望のなかで認定のハードルが高すぎると主張。 
例えば救急実績では、夜間・休日の受け入れが年間750件以上とされているが、地方の中小医療機関にとって、認定の要件をクリアするのはほぼ無理とみている。 

 さらに、認定後に要件を欠くことになると、減免されていた税金を一括納税しなければならない規定もある。実際に認定取り消し例はないが、これがネックで認定申請に二の足を踏む法人が少なくない。 

 都道府県別の認定数は大阪府が11法人で全国トップ。背景には認定のベースとなる救急医療の実績があげられる。 
19年度の府内の救急搬送のうち、77%は民間病院が受け入れた。大阪市内に限れば9割近い。 
このため、救急医療の要件をクリアして社会医療法人となる民間病院が相次いだ。全国的にみても救急搬送受け入れ先の57%が民間病院だった。 

 一方、近年の医師不足で2次救急指定を辞退する病院が増加。特に大阪市内では、ここ5年で14%減少し、その大半が民間病院という。病院関係者によると、300床クラスの民間病院で夜間救急を提供するには1日約40万円のコストが必要で、採算が合わない場合が多い。 
社会医療法人協議会の幹事を務める加納繁照・協和会理事長は「日本の救急医療は民間病院が支えていると言っても過言ではない。社会医療法人は民間病院を中心に地域医療を再構築するモデルだ」としている。 

 ◆経営条件で優遇 公立へ不満の声も 

 社会医療法人は、不採算の公立病院の「受け皿」としての役割や補完も期待されている。しかし救急、地域医療の分野で果たす役割は同じであるにもかかわらず、公立病院の経営条件は民間病院よりも優遇されているのが現状だ。 
なかでも社会医療法人協議会が重視しているのが、自治体から公立病院への繰入金だ。地方公営企業年鑑(20年度)によると、全国の公立957病院は100円の収入を得るのに、平均120円の経費がかかる。大阪府内の場合、21の市立病院で19年度、繰入金を除き計373億円の経常赤字を出した。 

 公立病院と民間病院のコストで差が顕著なのが、事務員と看護師の人件費。公立病院の事務員の平均給与月額は57万円、平均年齢が高い准看護師は56万円、看護師は48万円で、民間よりかなり割高という。 
加納繁照・協和会理事長は「医療は国民皆保険で支えるはずなのに現実には公立病院は税金で成り立っている」と苦言を呈している。