公立病院の 予算規則(地方公営企業法施行規則12条)でいう「収益的収入?」とは何か?



公立病院の 予算規則(地方公営企業法施行規則12条)でいう「収益的収入?」とは何か? 水と油を混ぜた偽ガソリンのような表現。地方公営企業法20条と24条の狭間での苦し紛れの用語ともいえるが・・。今日まで何の疑問もなくこの規則12条にもとずいて 予算実施計画が策定されてきた。 
恐るべき事だが「収入と収益」・「支出と費用」の違いが理解されてこなかったのである。 

公立病院が 財政破綻する多くの理由の中の一つは 発生主義の企業会計を義務つけられている(法20条)にも拘らず 予算会計(法24条)では「収入」「支出」とされ 国家財政と同じで「支出」が先で「収入」が後になっている。適正な利益を出そうというインセンティブがないのである。 
結果的に 公立病院の財政状態の危機認識が市民に知らされていない。早期健全化措置防止のために法24条・ 施行規則(規則12条・別表第5号・予算様式)の改正が必要である。(厚生労働省は平成4年7月1日医療法人について改正済み) 

「勘定合って銭足らず(損益計算書では利益が出ているが、資金不足のために常に資金繰りに追われているケース)とか、勘定合わず銭足る(損益が管理されず、資金の入と出のみを押さえているケース)」という認識が公立病院の経営者に決定的にかけている 
、利益が出ていれば、資金も大丈夫とか、医業収入が上がっていれば、当然資金もついてくるといった単純な考え方では公立病院経営者としては失格といわなければならない。・・・長 隆  



地方公営企業(公立病院)の 収益的収支(3条)資本的収支(4条) ・・地方公営企業法施行規則 12条関係の解説 

1・収益的収入および支出 

一事業年度の公立病院の経営活動に伴い発生が予定される全ての収益とそれに対応する全ての費用をいう。 一般的に予算様式(地方公営企業法施行規則・別表第5号)の第3条に示されていることから「3条予算」と呼ばれている。 

2・資本的収入及び支出 

企業の将来の経営活動に備えて行う建設改良及び建設改良にかかる企業債償還金等の支出とその財源となる収入である。一般的に予算様式(地方公営企業法施行規則・別表第5号)の第4条に示されていることから「4条予算」と呼ばれている。 4条予算は常に赤字である。 
利益と減価償却費の留保で資本的支出に充当しようという「意気込み」が最初からないのである 

(地方公営企業法・計理の方法) 
第二十条  地方公営企業においては、その経営成績を明らかにするため、すべての費用及び収益を、その発生の事実に基いて計上し、かつ、その発生した年度に正しく割り当てなければならない 


(地方公営企業法・予算 ) 
第二十四条  地方公営企業の予算は、地方公営企業の毎事業年度における業務の予定量並びにこれに関する収入及び支出の大綱を定めるものとする。 
2  地方公共団体の長は、当該地方公営企業の管理者が作成した予算の原案に基いて毎事業年度地方公営企業の予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならない。 
3  業務量の増加に因り地方公営企業の業務のため直接必要な経費に不足を生じたときは、管理者は、当該業務量の増加に因り増加する収入に相当する金額を当該企業の業務のため直接必要な経費に使用することができる。この場合においては、遅滞なく、管理者は、当該地方公共団体の長にその旨を報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない。 

(地方公営企業法・特別会計 ) 
第十七条  地方公営企業の経理は、第二条第一項に掲げる事業ごとに特別会計を設けて行なうものとする。但し、同条同項に掲げる事業を二以上経営する地方公共団体においては、政令で定めるところにより条例で二以上の事業を通じて一の特別会計を設けることができる。 


地方公営企業法施行規則(最終改正:平成二〇年九月一九日総務省令第一〇三号) 


(地方公営企業法施行規則・予算等の様式) 
第十二条  左の各号に掲げる書類の様式は、それぞれの下欄に定めるところに準ずるものとする。 
一 法第二十四条第二項の規定により調製すべき予算 別表第五号 
二 令第十七条の二第二項に規定する予算の実施計画 別表第六号 
三 削除 別表第七号 
四 令第十七条の二第二項に規定する資金計画 別表第八号 


別表第5号 (第12条関係) 
 予算様式 (略) 

http://www.izai2.net/hongyou.html 


・・・昭和63年の日本経済新聞の経済教室で私(長 隆)は医療法の改正が必要として 特に 病院の「収支計算書」を止めて 「損益計算書」にすべき事を提言しました・・・・4年後(平成4年)に改正された・・・・ 
  
医療法人の会計処理(医療法改正平成4年7月1日・厚生省健康政策局長通知) 

(1) 医療法人が作成する書類を収支計算書から損益計算書に改めた趣旨は、医療法人の会計処理を現金主義から発生主義に改めることにより、医療法人が自らの経営状況を的確に把握できるようにし、もって医療法人の経営の健全化に資することであること。 

(2) 法改正の趣旨に鑑み、病院又は老人保健施設を開設する医療法人にあっては、それぞれ原則として「病院会計準則」又は「老人保健施設会計・経理準則」により会計処理するものとすること。 

(3) 診療所のみを開設する医療法人にあっては、「病院会計準則」に準じて会計処理することが望ましいものであること。ただし、複数の診療所を開設するものにあっては、原則として「病院会計準則」に準じて会計処理するものとすること。・・・・・・・・・・                  長 隆




日本経済新聞「経済教室」昭和63年(1988年)2月18日掲載 
効率的医療経営へ「病院債」を 長期資金、安定的に 固定費削減も‐                   
                 
長 隆



・日本の医療機関を取り巻く環境は今後、自由化、多元化、多様化の方向に向かい「競争原理」の導入が進む。これに合わせて医療経営の理念を明確にする為に、医療法の改正が必要である。 
・医療機関の会計制度には問題が多く、このままでは医療法人の育成、病院新増設の規制という国の方針も、国民の医療費負担の軽減にはつながらない。 

・医療法の改正によって医療機関に企業体としての意識をもたらし、ムリ、ムダ、ムラのない効率的な医療経営を目指すべきである。 

・さらに、効率的な医療経営のためのファイナンスとして、「病院債」の発行を提案したい。 

損益計算書提出も義務化を 
  
高齢化社会を迎えつつある今日、日本の医療需要は増加の一途をたどる傾向にある。 
これからは、必要な医療資源をより効率的に活用しなければ、国民が負担する健保、税金は際限なく増大していくだろう。 
  そうした医療資源の効率的活用の一環として、現在考えられているのが医療法人の育成である。 
例えば六十年十二月、衆院社会労働委員会は医療法人の育成について対策を講ずる決議をした。 
また六十年の改正医療法では、診療所についても医療法人化の道が開かれ、六十三年一月一日現在、四十七都道府県で七百二十三件認可されている。 
  法人化は、医療機関経営の安定と近代化につながるとの観点から、積極的に推進すべきものとされているわけである。 
しかし、日本の医療をみると、法人化は必ずしも医療資源の効率的活用に結びついていないのが実情である。 
このままでは総医療費の抑制に効果があるかどうかも疑わしい。 
  そこで以下、この問題と関係が深い医療法の「会計に関する規程」を中心に取り上げ、日本が高齢化社会に向けて取り組むべき課題を明らかにしたい。 
  
医療法は、医療機関の管理と医療資源の確保、その体制整備などを目的としており、いわば医療の基本法である。 
二十三年に施行されて以来、何度か改正を重ねてきたが、一貫して変わっていないのが医療公経営(非営利経営)という前提である。 
医療機関は国家財政と同様の考え方、つまり「支出が先にあってその後収入が確保される」という論理が相変わらず前提になっている。 
  
この前提が変わらないまま、競争原理が導入されればどうなるか。 
例えば現在、総医療費抑制の有効手段として、地域医療計画による病院の新増設規制が始まったがこうした物理的規制は、短期的には駆け込み増床などによってかえって総医療費増加につながる懸念さえある。
  
医療法の五十二条は、民間の医療機関が毎会計年度終了後、二ヶ月以内に財産目録、貸借対照表及び「収支計算書」を作成し、保健所に提出する事を義務付けている。 
ところが、収支計算書とは資金繰り表のことであり、経営の成績を示すものではない。 
  
例えば、医薬品の仕入代金の支払期限を一ヶ月延長すれば、収支計算上は収支が改善されたことになる。
しかしこの場合、収支が改善されたからといって、経営成績が改善されたとは言えないのである。 
つまり、収支計算書だけでは、医薬品の仕入代をどれだけ支払ったかはわかるものの、医薬品を実際にどれだけ使用したかは明らかにならない。 
  
もし「収支計算書」に加えて、「損益計算書」の提出も義務付ければ、医薬品の実際の使用量はもとより、毎月の医療行為も明示されることになる。 
医療機関の医療行為の総量(企業の売上高に相当)が把握できるわけで、同じ医療行為に無駄ない費用がかかっていないかがチェックされ、同時に、医師や看護婦など一人当たりの収入もわかるので、人件費のムダも排除できる。 
さらに診療科目別の採算も明らかになるというメリットもある。 
  損益計算書の提出を求めない限り、本当の経営成績をつかめないのは当然のことで、一日も早い医療法の改正が望まれる。 
そうすれば、医療機関の経営も国の予算のような発想から脱却し、経営体としての意識を持つ環境が整うだろう。 
  一方、公的病院は収支計算書さえも提出を義務付けられていない。 
これでは民間医療機関との公正な競争は望めない。 
官民の病院に対し、ともに損益計算書も含めて提出を求めることで、正しい経営成績を開示し、お互いが競争しながら国民の批判に耐える経営体質になってもらわなければならない。 


ムリ・ムラ・ムダ排除の努力を 
 もちろん医療法を改正し、損益計算書の提出を義務付けるようにしたからといって、医療機関の効率的な経営がすぐに実現する、というわけにはいかない。 
医療機関自身がムリ、ムラ、ムダのない経営のために、全ての面で十分に検討をし、それを実施する必要がある。   
医薬品の在庫管理一つを例にとっても、人手不足などを理由に医薬品卸業のセールスマンにまかせ、その結果、過剰な在庫を抱えている病院を数多く見かける。 
  患者によって、どのような薬品が必要かは違ってくるので、できるだけ多くの在庫(備蓄)が在った方が良いという考え方もあるが、現在では大半の医薬品は、特に都市部では毎日のように回ってくる卸業者を通じていつでも入手できる。 
手に入りにくい一部の医薬品は別としても、効率的な在庫を目指さないと、いわゆる在庫金利だけでもその負担は重くなる。 
  例えば総収入が年間十億円の医療機関では、医薬品代は平均三億円程度だがその医薬品の在庫期間を四ヶ月間とすれば金利だけで五百万円かかる計算になる。 
このようなムダな在庫をなくす為、東京都内の十の病院グループ(年間医療収入計二百億円)は、毎月末、医薬品の棚卸を実施し、適正在庫管理の手法とされるABC管理を導入している。 
  ここでは消費する医薬品の正確に基づいてA、B、Cに三分類し、需要に応じて発注形態を変えている。これにより「この量まで減らない限り新たな発注はしない」といった適正購入のシステムが確立している。 
  スーパーなど流通業では一週間に一回、全店員を動員して商品を一斉に棚卸することも珍しくない。商品を現金と同様に考えることが、トップから末端まで徹底している。医療機関も固定費化されがちな医薬品代を完全に流動化させることが望まれる。 
  
診療報酬が十分に上がらず、経営が苦しくなる中で、医療機関は必要利益を確保するために、規模の拡大を目指す傾向が見られる。 
しかし、規模拡大による収入増加を百とした場合、人件費や在庫金利といった固定費も六十程度増えるというケースが多い。規模を拡大すればするほど、逆に必要利益は確保しにくくなり、しかも医療費そのものは際限なく増加し、国民に重い負担となってのしかかってくる、という不幸な結果につながりかねない。規模の拡大よりも、まずムダな固定費を削減する努力をすべきである。 


損益計画もたてやすい 
  
医療経営の安定化と効率化のための方法として「病院債」の発行を認めることも有効だと思う。 
病院経営者は最低限必要な増改築もままならないのが実情である。 
そのためにムリな借金をして規模を拡大し、利益を追求するという行動も誘発する。 
営利企業に認められている「私募債」の発行が、病院にも認められてよいのではないだろうか。 
  ここでいう病院債は、証券会社を経由せずに発行病院(医療法人)の特定の取引金融機関に直接依頼して発行するものをいう。 
病院債のメリットとしては次のようなことが考えられる。 
・比較的多額の長期安定資金を調達することが出来る。 
・資金調達コストは発行時に固定され、その後は変動しない。従って損益計画がたてやすい。 
・受託銀行が手続きを一括して行うので、個別の借入より手数が軽減される。 
・増資(持分の定めのある医療法人に限る)の場合と違って、購入者は単に投資目的のために病院債を保有するので、病院の経営には何ら関与しない。 
・「病院債発行病院」ということで対外的信用度評価がさらに強固なものとなり、病院のイメージアップにつながる。 
  
 米国では病院の資金調達手段として病院債(免税債=Tax Exempt Bond)が、免税、低利の魅力から一九七〇年代以後、活用され始めた。 
免税債を購入した人の受け取る利子は連邦所得税法上、非課税とされ、さらに多くの州で住民税も非課税となっていた。 
 このため、米国の病院が発行した免税債額は八十三年が百億ドル、八十四年百一億ドル、八十五年百二十億ドル、八十六年(見込み)百億ドルと、ここ数年、常に百億ドル以上の規模となっている。 
 八十六年度の税法改正により、公共目的以外に発行される債券からの受取利息が課税対象となり、しかも所得税の最高税率五〇%から二十八%に引き下げられたことから、投資家にとって税制上のこの魅力は低下した。しかし、低利安定資金としてのメリットは依然として残っているため、米国では規模の大きな病院が病院債により資金調達する傾向は今後とも続くと予想されている。 
 日本で病院債を認める場合、将来的には非課税債にまで発展させることが望ましいが、当面は国の財政に負担をかけない課税病院債としてスタートさせるべきであろう。金融機関にとっても、金余り現象が続く中で、潜在的資本需要が極めて旺盛な病院への投資は魅力的なものとなる。 
 医療機関の資金調達手段としては、現在禁止されている株式発行なども考えられる。 
株式発行や配当を認めることによって、資本の論理を導入すべきだとの意見もあるが、医療をもうけの対象としてとらえることは、医療法上も国民感情からも望ましくないだろう。 
病院債の導入により、効率的な医療経営、国民の医療費負担軽減のためのファイナンスを期待したい。