【誰が守る 地域医療】練馬光が丘病院問題(2)振興協会

【誰が守る 地域医療】練馬光が丘病院問題(2)振興協会 
2011.12.17産経新聞  


 □僻地から都市部へ、ひずみも 

 ■「何とかする」を評価 

 9月上旬、練馬区役所庁議室で日大医学部付属光が丘病院の後継法人を選ぶ選定委員会が、非公開で開かれた。 

 複数の選定委員によると、大和会(東大和市、古瀬信理事長)と地域医療振興協会(千代田区、吉新通康理事長)の医療関係2法人が応募。委員は企画提案書を15項目100点満点で採点した。 

 提案書では2法人とも日大の人的支援を前提としていたという。「大和会は、日大が全員残らなければ運営できないと言った。しかし日大が医師を残すのは解雇にあたり、労働基準法上難しい」(選定委員) 

 一方、振興協会は「(日大が医師を残さなかったら)協会の人的資源を生かして何とかします」と回答。委員らは人材確保に積極的な姿勢がみられ「安全だと評価」し、協会の得点がわずかに上回ったという。 

 「日大が行っている医療を維持するため必要な医師数が提案されている」。区は議会や住民説明会でこう述べ、区報にも記した。 

 ■急激な拡大路線 

 運営を引き継ぐ振興協会は、僻地(へきち)医療の充実を目的に自治医大の卒業生が昭和61年に設立した。全国で52の病院、診療所などを運営し、全国の自治体から誘致の要望が多いという。 

 だが急速な拡大で人材を確保せず運営に踏み切る例が、医療関係者らから指摘されている。 

 神奈川県横須賀市民病院は平成22年春の運営開始時、呼吸器内科、泌尿器科など4科の医師を確保できず病棟を閉鎖した。開設時にいた産科医3人もゼロとなり、出産は助産師のみで担当している。 

 浦安市市川市病院組合(千葉県)から経営を引き継いだ東京ベイ・浦安市川医療センター(344床)も看護師を確保できず、来春200床減らし、144床で開院する。 

 選定委員会と区議会は、北区で協会運営の東京北社会保険病院(280床)を視察。区議から「患者の笑顔をみて安心した」との意見も出た。 

 だが同病院は、品川区にあった社会保険都南総合病院が、16年に医師を含め丸ごと移転した。日大側の医療スタッフが全員引き揚げ、ゼロから作る光が丘病院と比較できない。 

 視察した別の区議は「協会の医師は、過酷な環境でも頑張っていることは分かる。僻地で鍛えられた力だろう」と評価する。一方で、協会関係者から「(同協会が運営する)北社会保険病院、横須賀市立うわまち病院、市立奈良病院などからも数カ月ならサポートできる」と言われたという。だが、区民からは「一時的な医師の派遣では安心してかかれない」との不安も漏れる。 

 ■医師数「答えない」 

 光が丘病院開設準備室の責任者、藤来靖士本部長は住民説明会で、新病院の7つの方針として日大の機能継続▽救急医療、小児医療、周産期医療、災害時医療の実施▽住民や医師会、区、都との連携強化-などを説明した。心筋梗塞患者らを収容するCCU(冠疾患集中治療室)や、診療所の妊婦健診と分娩(ぶんべん)を連携する周産期セミオープンシステムも4月から実施するというが、スタッフ数は明らかになっていない。 

 選定直後の10月、協会の吉新理事長は「引き継ぎ時、ベッドの稼働率は全国どこでも約3割。住民の意識が高い地域ほど、医療事故を防ぐ万全の対策が必要だ」と、医師不足を見越したような示唆をしていた。 

 医師数について、区は「協会によると、開設に必要な最低限の数が確保できた」と答えるのみで、協会も16日現在、「答えられない」としている。