【誰が守る 地域医療】練馬光が丘病院問題(1)救急医療

【誰が守る 地域医療】練馬光が丘病院問題(1)救急医療 
2011.12.16産経新聞 

 □ベッド削減、たらい回し危惧 

 ■隊員は顔見知り 

 深夜の救急外来。7歳の男児が、地元の医院から日大医学部付属光が丘病院(練馬区)に救急車で搬送されてきた。2日前から腹痛と嘔吐(おうと)があり胃腸炎と診断。だが腹痛が続き、高熱を伴っている。 

 「冬季はウイルス性胃腸炎が流行する。嘔吐、下痢、発熱の子供の中に本物の虫垂炎患者がいる」(小児科の当直医) 

 わずかな所見も見逃すまいと、小児科医、外科医が超音波検査機の画面をにらむ。血液検査は臨床検査技師、臓器の病変を見つける腹部(造影)CT検査は放射線技師の出番だ。 

 手術室で専属の看護師が準備に入る。複数の小児外科医や麻酔科医も集まってきた。いよいよ、緊急手術へ。 

 「これがチーム医療、だれ一人欠けてもいけない。あらゆる職種のスタッフが交代で当直し備えている」と当直医。 

 鳴りやまない搬送依頼の電話、次々に運ばれてくる患者。「夜食も食べられず、仮眠もとれない。救急隊員とは、ひと晩に2回も3回も顔を合わせるから、すっかり顔見知りになっちゃって」 

 ■2万人超受け入れ 

 都福祉保健局によると、都が指定する小児の夜間救急病院は47。平均搬送受け入れ数は昨年度472件だったのに対し、日大は2倍以上の1113件に上った。 

 都立清瀬小児病院が統廃合で消えた多摩地区や、隣接する埼玉県南部からの搬送も増えている。 

 区の統計によると、日大光が丘病院の平成21年度救急患者受け入れは延べ2万1758人。うち小児は8480人と約4割を占めている。 

 ■空白期間は10年? 

 「来春の引き継ぎ時、入院患者を減らす」 

 法人交代を審議した8日の区議会医療・高齢者等特別委員会。来年4月から、日大光が丘病院を引き継ぐ地域医療振興協会の病院規模について、区は「日大病院と同規模(342床)で開設」という“公約”を突然撤回した。一時的に患者を減らし、引き継ぎ時の医療の安全を守ったうえで、だんだんをベッド数を増やすと説明する。 

 だが、入院できるベッド数を減らすことは、現在の入院患者を追い出すだけでなく、救急患者の受け入れも制限することになる。 

 多くの区議は「患者数を減らせば引き継ぎのリスクが減って安心だ」と笑顔を見せたが、来年4月1日午前0時を期して、救急患者が行き先を失い、「たらい回し」されるリスクは高くなる。 

 全国医学部長病院長会議の森山寛会長は、来春から生じるベッド数の“空白”期間を危惧する。「大学病院のマンパワーだからこそ、これまで維持できた。公的医療の提供は、自治体と大学病院の使命でもある。ベッド数は、10年で元に戻るかどうか」 

 一連の動きに、病院開設を許可する都は大きな関心を寄せている。 

 「今の患者の医療が損なわれないよう配慮したい。来年4月1日は大きな意味を持つ日になるだろう」

                   ◇ 

 練馬区の光が丘病院の法人交代まで、残り4カ月を切った。練馬区は「病院がなくなるよりは」と、法人交代を進めることが地域医療を守る道だと突き進んでいる。だが、医療水準は、新体制は、と区民の疑問は尽きない。そんな現状をリポートする。 




「光が丘病院問題水面下交渉」寄稿 「内容確認していない」 練馬区課長が答弁 
2011.12.15   


 練馬区議会の医療・高齢者等特別委員会で14日、日大練馬光が丘病院の法人交代にからみ、池尻成二区議(市民の声)が、日大医学同窓新聞に掲載された、区と日大の水面下交渉に関する日大医学部長の寄稿について質問し、練馬区の地域医療課長は「内容を確認していない」と答弁した。 

 しかし、この寄稿について、産経新聞が12日、区の見解を広聴広報課を通じて取材を求めた。同課は寄稿を地域医療課へ回覧し、13日、広聴広報課は「コメントは差し控えさせていただきます」との回答を産経新聞に伝えてきた。同課によると、地域医療課長からの回答だったという。 

 答弁とコメントの食い違いについて、地域医療課長は「出張のため不在」(広聴広報課)として取材に応じていない。 

産経新聞社