日大練馬光が丘病院問題 区民の命と健康を守るため全力

日大光が丘撤退問題(2011.10.29 週刊ダイヤモンド) 
後継病院が決定も立ちはだかる三つの難問 


 7月15日、日本大学本部が突如、医学部付属練馬光が丘病院(342床)の撤退を発表した。 
来年3月末をもって運営を終えるとの知らせは、練馬区民のみならず、そこで働く医師をも震撼させた。 

 なぜなら、同病院は年間に約22万人もの外来患者を診ている地域の中核病院。小児救急では、約9000人(区内の34%)を受け入れる重責を担ってきた。 

 病院の建物を所有する練馬区と日大が結んだ貸し付けの契約期間は1991年からの30年間だっただけに、異例の事態である。 

 対応に追われた練馬区は9月15日、公募選定を経て、後継機関に自治医科大学の卒業生を中心に設立された地域医療振興協会を決定したが、今後、三つの難問が立ちはだかる。 

 一つ目は、医師と看護師の確保だ。練馬区は、公募の選定条件に光が丘病院と「同等の規模と機能を維持する」ことを掲げた。 
同病院には、医師120人、看護師298人が働くが、すでに区は初年度の医師数について「70~80人」(地域医療課)とトーンダウン。 

 大学病院は教育のために医師が多いことを割り引いても、まだ医師が不足している点は区も認めている。 

 同協会は、新規募集と大都市圏の協会運営病院からの医師・看護師の確保を狙うが、 

吉新通康理事長からは、すでにため息が漏れる。「自信はないが、やるしかない。 
看護師の確保は、特に四苦八苦しているが、光が丘病院からの転職にも期待している」。 

 二つ目の問題、患者カルテの引き継ぎも時間との闘いである。 

 日大の運営が終了する来年3月末まで残りわずか5ヵ月。 

 通常、自治体が病院を開設して民間事業者が運営を受託する“公設民営”方式なら、カルテ情報を管理している役所の意向で、後継機関へのデータの引き継ぎが容易にできる。 

 だが、今回は民間病院同士で経営を引き継ぐため、個人情報を病院の独断で後継病院に渡すことは法的にできない。 
仮に、患者の同意を得たとしても、紙のカルテは電子カルテと違い、情報の移行に膨大な手間がかかる。 

 「専門業者に確認したところ、光が丘病院の規模で4~5ヵ月はかかる」(吉新理事長)という。 

 練馬区の志村豊志郎区長も「カルテの引き継ぎを終えるのは、来年4月以降になるかもしれない」と、表情を曇らせる。 

 そして三つ目の問題が、日大が区に預けた50億円の保証金だ。区は、契約期間途中での解約を楯に返還を拒否しているが、この問題にも、決着をつけざるをえない。 

 練馬区は10万人当たりの病床数が東京23区平均の約3割の275床で最下位。 
日大の撤退問題は、地域医療の維持か崩壊かを問う試金石となるが、三つの難問を解くカギはいまだに見えない。