次代をひらく、第2部医療の新潮流(2) 中国人富裕層を狙え、検診ツアー、温泉地



次代をひらく、第2部医療の新潮流(2) 
中国人富裕層を狙え、検診ツアー、温泉地2010/1/13, 日本経済新聞 地方経済面 (静岡), 

 温泉などの観光地と医療施設を組み合わせ、中国人を呼び込む「メディカルツアー」が伊豆長岡温泉で今年から始まる。狙うのは年収が1000万元(約1億3000万円)を超す富裕層だ。 

 中国では近年、国民の生活水準が向上し、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が拡大している。 
医療技術や設備に課題があるといわれ、自身の健康に関心を高めている富裕層の多くが「国内検診の正確性に不安を抱えている」とツアーを企画する旅行会社、アジアックスの李衛東社長は語る。 

 メディカルツアーは、海外の高度な医療設備や技術を利用するためには高額な出費もいとわない富裕層向けだ。伊豆長岡温泉街に隣接する医療機関や旅行会社、地元観光協会が連携し、短期間で日本国内で最先端のあらゆる検診を受けられるプログラムを提供する。費用は東京や京都での観光も含めた、約1週間の日程で30万~40万円。 

 検査は半径2キロメートル圏内の複数の医療機関で集中的に受けられる。心電図や腹部超音波など検査の大半は伊豆長岡の温泉街に隣接する伊豆保健医療センター(伊豆の国市)で実施。 
医療センターの病院棟内は中国語の案内表示が目立つほか、中国人留学生が協力して作成した中国語の問診票や検診結果解説書を備える。 

 このほか、がん検診に使う最新機器「陽電子放射断層撮影装置(PET)」がある順天堂大学医学部付属静岡病院(同市)や、婦人科検診を専門とする地元診療所の協力を得て「2日間の検診で治療の要否を正確に判断できる」(医療センターの秋山洋保健課長)。 

 検診では専門用語が使われる場面が多いため、通訳が付き添うほか、DVDによる解説映像を準備する。1回の受け入れ人数は4人に絞り、検診の結果は中国語の文書と超音波検査などの画像フィルムをその場で手渡す。このため問題があれば、帰国後すぐに中国国内で治療を受けられる。 

 利用者が検査に費やす2日間で「心も体もリラックスしてもらう」(李社長)ため、地元にある高級旅館に宿泊する。 
「日本旅館が持つもてなしの心は、中国人が旅行に求める“やすらぎ”を十分に提供できる」(同)とみている。 

 ツアーの企画に協力した、伊豆の国市観光協会の相磯和男事務局長は「世界中のリゾート地を開拓している中国人富裕層を呼び込むためには、観光以外の付加価値が必要だ」と医療施設と連携するメリットを強調する。 

 昨年7月、中国国内で富裕層向けに個人観光ビザを解禁したため、旅行需要の拡大が予想されたが、新型インフルエンザの影響で昨年中はツアーを開始できなかった。 

 今年は「初めての取り組みだけに、ツアー開始後にどんな問題が出てくるか分からない」(相磯事務局長)が、3月以降は月1~2組を受け入れる目標を掲げる。 

 医療と観光とを結びつける新しいサービス産業の試みが、伊豆長岡の地で始まろうとしている。(飯塚遼)