ライバルとの連携*地域完結型へ役割分担



<せんこん明日へ 医療再生を目指して>4*ライバルとの連携*地域完結型へ役割分担 
2010.03.27 北海道新聞朝       

 「『集約』の名の下に医師が削られ、医療が崩壊してしまう」。2008年1月、釧路赤十字病院(日赤)の永島哲郎副院長と釧路労災病院(労災)の宮城島拓人副院長は同じ思いを抱いていた。両病院は柳町公園を挟み直線距離で約500メートルの至近距離。だが、それまでまったく没交渉の間柄だった。 

 このころ、大学の医師引き上げで、労災と釧路市医師会病院(当時)の循環器科の医師を、市立釧路総合病院に集約する方針が固まっていた。前年の春には労災の産婦人科と小児科が日赤に集約されたばかりだ。 

 「もう単独では生きていけない」。2人の副院長の頭をよぎったのは、窓から見える“ライバル”の存在。「労災病院とも話し合ってみよう」。永島副院長が共通の知人を介して宮城島副院長に連絡。お互い初対面なのに「同じことを考えていた」と意気投合した。両院長に話し、費用面などを渋る事務部門も説得し、2月には「NRホスピタル構想協議会」が立ち上がった。 

 「NRホスピタル構想」は日赤の「N」と労災の「R」を冠した相互連携だ。地域医療の再生に、経営母体が異なる総合病院同士がタッグを組む例は全国的にも珍しく、医療関係者の注目を集める。 

 日赤は労災にない産婦人科と小児科があり、皮膚科、眼科なども充実。労災は日赤にない脳神経外科、形成外科、神経内科、循環器科などが強み。現在、日赤から皮膚科、労災から循環器科の医師が相手の病院に週1回出向き、入院患者の診察に当たっている。同姓同名の患者をリストバンドで識別する労災の方法を日赤も導入するなど、連携は看護、事務部門にも及ぶ。 

 新年度からは研修医育成にも協力して取り組むほか、将来的にはカルテの共有化や両病院を結ぶシャトルバスの運行なども視野に入れているという。 

 「病院完結型の医療から地域完結型医療へ」。NRホスピタル構想を貫く考えを、永島、宮城島の両副院長はこう説明する。実はこの言葉、病院、診療所など地域にある医療資源の役割分担を最適化することで医師不足の克服を目指す、千葉県立東金病院の平井愛山(あいざん)院長もまったく同じ表現で話していた。 

 釧路は総合病院同士の連携、東金は病院と診療所の連携と、手法は違うが、それぞれきっかけは医師不足で、目的は地域医療崩壊の阻止と、共通点も多い。地域医療再生のヒントは「地域」にこそあるのかもしれない。 

 ただ肝心の地域も疲弊している。最終回では、地域医療再生を目指す過程で、地域や家庭の在りように向き合わざるを得なくなった取り組みを紹介する。