2009年11月の厚生労働省令改正で、手書きレセプトでの請求を行う医療機関などを対象に電子請求の義務化が免除されることになった。



2009年11月の厚生労働省令改正で、手書きレセプトでの請求を行う医療機関などを対象に電子請求の義務化が免除されることになった。 
レセプトコンピューター(レセコン)の需要増が見込みにくい中、SI業者は“地域医療ネットワーク”の構築に商機を見いだそうとしている。 



地域医療ネットワークの胎動(上)SI競争激化に商機 
2010.03.23 日刊工業新聞   
  
医療情報分野でシステム構築(SI)業者間の競争が激化している。 
医療機関では、ここ数年で診療報酬明細書(レセプト)の電子請求が浸透。 
最近は未実施の診療所などのパイをSI各社が奪い合う状況だった。 
さらに昨年11月の厚生労働省令改正で、手書きレセプトでの請求を行う医療機関などを対象に電子請求の義務化が免除されることになった。 
レセプトコンピューター(レセコン)の需要増が見込みにくい中、SI業者は“地域医療ネットワーク”の構築に商機を見いだそうとしている。(大阪・斎藤弘和) 

【付加価値がカギ】 

「医事会計システムだけでは差別化が難しい」(山田直樹富士通ヘルスケアソリューション事業本部担当部長)。この指摘がSI各社の状況を端的に物語っている。 
医療機関にとっては、最新の保険点数計算ルールがレセコン上のソフトに反映されていれば事は足りるため、ハードを替える頻度は低い。 
SI業者がシェアを伸ばすには、他社製品のリース切れ時に自社製品に置き換えてもらう必要がある。各社はそのための付加価値創出に腐心する。 

【SaaS化推進】 

病院向けのレセコンで高いシェアを持つ富士通は、地域連携システム「HOPE」の提案に力を入れる。 
同じ地域にある病院、診療所、調剤薬局が診療データを共有するもので、例えば地域の中核病院は、紹介状を一元管理するなどして事務作業を軽減できる。 

従来はセキュリティー上の理由から、医療機関以外の場所でデータを保存することはできなかった 
。だが今年2月、厚労省が医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを改正。 
SI業者のデータセンター(DC)など、外部でのデータ保存が認められた。 
富士通はこれを追い風に、医事システムのSaaS(ソフトウエア機能のサービス提供)化を進めていく考え。 

【安全をアピール】 

医療機関向けネットワークの構築を得意とする三菱電機情報ネットワークもこのガイドライン改正を歓迎し、地域内連携を推し進める。 
併せて、医療機器のリモートメンテナンスなど、ネットワーク経由でのサービスに力を入れる方針。セキュリティー面が課題だが、「インターネットVPNで閉域網並みの安全性を確保できる」(飯島康雄ネットワークサービス部次長)と自信を示す。医療機関の個人情報保護をいかにサポートするか。SI 
側が医療分野で戦う上で重要なポイントのひとつとなる。 



地域医療ネットワークの胎動(下)電子カルテの普及カギ 
2010.03.24 日刊工業新聞   
  

「電子カルテの普及率を上げる」。 
三洋電機の江本哲メディコム事業部医科企画課長は自社の戦略をこう説明する。 
大病院でも電子カルテの導入率はレセプトコンピューター(レセコン)に比べて低い。 
診療所ではなおさらだ。【連動効果前面に】 

そこで、電子カルテとレセコンの連動効果をアピールし、システムの拡販を狙う。 
例えばレセコンで外来患者を受け付けた際、診療データを電子カルテに連動させることで、紙のカルテを運ぶ必要がなくなるという。 
患者の待ち時間を減らせるなど業務改善効果が期待できるとしている。 

調剤薬局向けで高いシェアを誇るEMシステムズも、レセコンと電子カルテをセットで売る戦略を模索する。 
すでに9割以上の調剤薬局でレセプトの電子請求が行われており、医科分野の強化は必然と言える。 
同社は今年2月、臨床検査を手がけるビー・エム・エル(BML)と共同で、電子カルテの開発会社「メデファクト」(東京都港区)を設立した。2010年度以降に新製品を発売する予定だ。 

【中核病院が起点】 

三洋電機とEMシステムズは、現段階では地域医療ネットワーク構想を前面に出してはいない。 
診療所や調剤薬局が主戦場だった両社が病院を攻めるのはこれからで、現在は地域中核病院を起点としたシステム化構想は進めにくい模様だ。 
しかし地域の医療機関の連携では、患者の診療データを蓄積・共有する電子カルテの普及がカギとなる。両社が電子カルテを重視するのも、この点を踏まえてのことだ。 

【クラウドを活用】 

ただ、これまで普及が遅れていたのは「導入費用が高い」(青山明EMシステムズ専務)という事情が大きい。 
付加価値を訴求する一方で、システム構築(SI)各社にはシステム導入費用の一層の低減が求められる。 
そのためには、SaaS(ソフトウエア機能のサービス提供)をはじめとするクラウドコンピューティングの活用など、従来の医療システムにはなかった仕組みを取り入れることも必要だ。 

幸い、近年は医療情報関連の規制が緩和される傾向にある。この流れを的確にとらえ、費用対効果の高い製品をタイムリーに投入できるか否かが、SI各社の勝敗を分ける。