医療産業で成長けん引 内視鏡・手術支援ロボット...、強み生かす戦略的振興を



医療産業で成長けん引 
 内視鏡・手術支援ロボット…、強み生かす戦略的振興を 2010/3/15, 日本経済新聞  

 社会的負担の面から語られがちな医療・介護は、大きな雇用を創出し、関連企業が機器や薬品を生産する有望産業でもある。 
これまで国には医療を産業として成長させる発想が乏しかったが、規制改革などをテコに日本が優越性を持つ生産技術を生かせば、代表的な知識集約型・高付加価値型産業として経済をけん引する産業になり得る。 

 特に有望なのが日本企業の優れたメカトロ技術を生かした医療機器分野だ。日本の医療機器市場は約2兆円。輸入(2007年1兆220億円)が輸出(同5751億円)の約2倍という大幅な輸入超過が続き、国内市場に占める輸入の割合は年々高まっている。 
  


 輸出額の約40%は画像診断システムで、なかでもスコープを挿入して食道や胃、腸などを観察する消化器用内視鏡はオリンパスが世界シェア70%を占め、国内の3社で90%に達する。 

 医療・介護用ロボットも潜在的な有力輸出商品だ。日本は世界一のロボット生産国で、使用国でもある。 
手術支援ロボットは 
(1)微細な血管を精密につなげる 
(2)患者の体への負担が小さい
(3)医師らの感染リスクを下げる―― 
などの利点があり、遠隔技術と組み合わせれば離れた場所からの手術も可能。 
だが医療機器としての認可がなかなか得られず外国製品が一部の病院で使われているのが現状だ。 

 病気や加齢によって衰えた身体機能を支援したり介護者の負担を軽減したりする介護ロボットも本格的な実用化はこれからという段階。 

世界一の速さで進む高齢化を逆手にとり、日本発の製品開発を進めたい。 
ニーズを取り込んで改良し、効果や安全性を検証するには、多くの医療・介護現場の協力が不可欠で、協力する病院、施設への助成など国の後押しも必要だ。 

 医薬品も審査・承認の遅れや低く抑えられた薬価が足かせとなり、企業が投資に見合う利益を上げにくいことが成長を阻んでいる。 
外資系製薬企業にとっても日本市場の魅力は低く、営業や研究拠点の縮小や撤退が相次ぐ。
規制改革などによる医療品・医療機器の開発促進は大きな課題だ。 

 科学技術の総合力が試される領域だけに、この分野への支援や投資が、他領域の学術研究や産業振興に及ぼす効果は大きい。 
欧米や一部のアジア諸国は国家戦略として医療産業の強化に取り組んでおり、日本も産官学が一体となった強力な体制が必要だ。 

 医療機関の国際化も避けて通れない。 
いい医療を求める患者が国境を越えて移動する「メディカルツーリズム」が興隆、国内でも対応する動きが出始めた。 

 冠動脈の血管内治療で著名な小倉記念病院(北九州市)は、中国やインドネシアなどから積極的に患者を受け入れ、累計で300件を超えた。 
亀田総合病院(千葉県鴨川市)は米シカゴに本部がある国際的な医療認証機関「ジョイント・コミッション・インターナショナル」の認証を国内で初めて取得。 
国際水準の医療提供を売りものに海外から患者を呼び込む。 

 外国人患者の検査や治療は公定価格にとらわれない自由診療。軌道に乗れば病院の収益力が高まり、スタッフや機器が充実して国内患者にも恩恵が及ぶ。 

 人口当たりの糖尿病の死亡率が全国ワースト1の徳島県は、徳島大病院で研究・開発した療法を今後急増するアジアの糖尿病患者に提供することを計画。 
今月中旬、中国からモニターツアーを受け入れて「予防から検査、治療まで行う体制を整える」(同県)。 

 メディカルツーリズムは、インドやシンガポール、タイ、韓国などが先行しており、日本が追いつくためには、医療ビザの発給や通訳の確保が不可欠だ。 

 病院が海外に進出する例もある。 
徳洲会グループは06年、ブルガリアの首都ソフィアに1016床の総合病院を開設。 
心筋梗塞(こうそく)、脳血管障害などの治療技術を現地の医師に指導しながら、患者が増えるとされる東欧全域から患者を集める計画だ。 

 日本には、長寿世界一や低カロリー食などを通じた健康イメージがある。 
世界に先駆けて進む高齢化への対応から様々なノウハウを蓄積。 

次世代のがん放射線療法とされる「粒子線治療」装置が多く、再生医療の研究も進んでいる。 
手先の器用さを生かした外科医の優れた技術は、質の高い手術や内視鏡検査につながっている。 
こうした強みに磨きをかけ、経済成長の一翼を担う有力部門に育てるときではないだろうか。