鈴木寛・文部科学副大臣に聞く 「医学部の新設」が民主党政権の公約













鈴木寛・文部科学副大臣に聞く◆「医学部の新設」が民主党政権の公約  2010/3/169http://www.m3.com/iryoIshin 





医師数、医師養成数ともに1.5倍増を目指す 



2010年3月16日 聞き手・橋本佳子(m3.com編集長) 



「医師不足対策だけでなく、研究医、さらには新成長戦略としての医療を担う人材の育成のためにも医学部定員増が必要」。 

鈴木寛・文部科学副大臣はこう強調する。マニフェストで掲げた「医師数1.5倍、医師養成数1.5倍」の実現に向けて、この4月以降、医学部の新設などについて議論していくという。 

 医師の増員、さらには医学部新設の是非については、医療界内でも意見が分かれるところだが、医師の需給に関する考えや、医学部新設に向けたスケジュールなどについて、鈴木副大臣に聞いた(インタビューは2010年3月8日に実施。計4回の連載)。 



「医師数、医師養成数ともに1.5倍にしなければいけないという認識は、マニフェスト作成時も、そして今も変わっていない」と強調する、鈴木寛・文科副大臣 



 ――民主党のマニフェストには、「医師数を1.5倍」と「医師養成数を1.5倍」、これら二つが記載されています。改めて確認させていただきますが、両方とも実現するということですか。 



 今の日本の医師数は、人口10万人当たり約200人。今のままで推移すると、OECD諸国の平均(300人)に達するのは2032年です。 

仮に医学部の入学定員を毎年400人ずつ増加させても、OECD平均に到達するには2027年、5年前倒しになるだけです。 

ただ、2027年、あるいは2032年の時点では、OECD諸国の平均自体もさらに増えていることでしょう。 



 したがって、医師養成数を増やす必要があるわけですが、ベースをどうするか。確かにマニフェストでは「1.5倍」としましたが、そこまでは書き込んでいません。 

2010年度の医学部定員は8846人ですが、一番少ない時(2003年から2007年)は7625人。その1.5倍は1万1437.5人なので、まずは1万1000人を目指すとしても、あと2000人の定員増が必要です。 





 ――「今のまま」というのは、「8846人のまま」ということですか。 



 はい。人口の高齢化率が日本と同様に高いドイツでは人口10万人当たりの医師数は340人ですから、ドイツ並みを目指すのであれば、それに到達するのは「2032年以降」になります。 



 加えて今後、女性医師が増えていきます。若い世代の女性医師の割合は、既に3割を超えています。 

これは、男女共同参画や女性外来増などの点から望ましいことですが、出産・育児などで、職場を一時的に離れたり、短時間勤務に変える医師も増えることでしょう。 



 さらに医師の平均年齢の高齢化という要因もあります。確かに毎年、医師数は増えていきますが、その中心は年齢が高い層です。 

日本では、70代の医師が平均週30時間、60代の方でも平均週35時間、働いています。 

一般社会では定年があります。 

ベテラン医師の皆さんには後進の育成や患者の医療相談などではぜひ活躍していただきたいのですが、実際、高齢の医師が本当にこんなに働き続けられるのでしょうか。 



 医師数を考える際には、女性医師の増加と医師の高齢化という要因も考えることが必要です。したがって、医師数、医師養成数ともに1.5倍にしなければいけないという認識は、マニフェスト作成時も、そして今も変わっていません。 





 ――いつ頃までに「1.5倍」を達成するのが目標ですか。2027年当たりが一つの目安になるのでしょうか。 



 まずファンダメンタルにはそうだということです。2010年度は自民党政権時代の予定数よりも上乗せし、医学部定員を全体で360人増員して、8846人にするわけです。 

一大学当たりの医学部定員の上限は1学年120人ですが、その上限の120人に達している大学も多くあり、既存医学部の定数増の余力がかなりなくなっているという現実もあります。 





 ――その余力は、ハードとソフト、その両方でしょうか。 



 医学教育の有り様として、これまで120人という数字を最大値として考えてきました。抜本的に医学教育のやり方を変えていけば、1学年の学生規模も変更できるという考えがあるかもしれません。 

確かに、その議論も始めなければいけないでしょう。ただいずれにしても、「既存の枠組み」の中での余力がなくなってきています。 





 ――昨年来、鈴木副大臣は、「メディカルスクールは、アイデアとしては否定しないが、議論は先」「医学部の新設を含めた議論を行う場を設ける」と発言されています(『「日本の成長戦略上でも医師増が重要」、鈴木・文科副大臣』などを参照)。 



 マニフェストを作成するプロセスで、四病協(四病院団体協議会)は、メディカルスクールの創設を強く要望されていました。 

その考えにも、一定の根拠があると理解しています。一方、既存医学部関係者からは、早急なメディカルスクール導入に対しては慎重に対応してほしいとの要請がありました。 

結論として、今期の鳩山政権においてはメディカルスクールまで一挙には踏み込まず、既存の6年制の医学部の新設をまずマニフェストで約束したわけです。 



 ただし、何もかも認めていいわけでは全くありません。 

医学教育の質確保は大前提ですので、どのような大学の新設を認めていくか、その考え方をきちんと整理する。その前提をきちんと分析し直す。 

この点から始めていかなければなりません。 





 ――「前提」というのは何を意味するのでしょうか。 



 医療需要と医療人材供給の将来に向けたシミュレーションです。今、医師増が必要になっている一番の原因は地域医療の崩壊、地域の医師不足です。 

しかし、「前提」はマニフェスト作成時よりも「進化」しています。政府が2009年12月30日に定めた「新成長戦略」(基本方針)で、「科学・技術立国戦略」を打ち出したからです(首相官邸のホームページを参照)。 

したがって、地域医療を担う人材だけでなく、研究医療人材や国際医療人材の確保という観点からの検討も必要になっています。 







 【掲載スケジュール】 



Vol.1◆「医学部の新設」が民主党政権の公約 

医師数、医師養成数ともに1.5倍増を目指す 



Vol.2◆「地域医療、研究医療、国際医療」の人材養成が必要 

地域医療人材の確保は短期と中長期、二つのフェーズで 



Vol.3◆医学部新設、医師の需給の議論は4月以降開始 

「医学部の設置基準はゼロから見直す」 



Vol.4◆全国医学部長病院長会議の要望書は「唐突」 

医師養成は新しいパラダイムへ、現場の知恵を期待