公立病院、広がる独法化 自由裁量でスタッフ増員 機器の共同利用でコスト減



公立病院、広がる独法化 自由裁量でスタッフ増員 機器の共同利用でコスト減/大阪府 
2010.12.24 朝日新聞  
  

 7割が赤字とされる全国の公立病院で「地方独立行政法人」に移行する動きが広がっている。 
患者増を狙って医師や看護師らを積極的に採用して成功した病院がある一方、慢性的な医師、看護師不足のあおりを受け、つまずく病院も出ている。 

 (石木歩) 


 「何かお困りですか?」 

 大阪市住吉区の府立急性期・総合医療センターで、紺の制服姿の女性が入院手続きに来た車いすの高齢者に声をかけた。 
9月から導入された「ホスピタルコンシェルジュ」で、ホテルの接客係のように来院者の案内や受付機械の操作などを手伝う。 

 同センターを含む府立5病院は、約66億円の不良債務を5年以内に解消することを条件に地方独立行政法人への移行が認可され、2006年4月に府立病院機構となった。 
4年目の09年度決算で債務を2・5億円まで圧縮。期間内での目標達成はほぼ確実だ。 

 独法化後は経費削減一辺倒でなく、患者へのサービス向上で収益アップを目指す。 
コンシェルジュもその一つ。同センターの藤田哲士事務局長は「年間1800万円の委託費がかかるが、医療スタッフが本来の業務に専念でき、負担軽減につながる」と話す。 

     * 

 独法化のメリットは人の配置や予算のつけ方で自由度が高まる点だ。 
同機構では事務職員を100人減らして、府よりも給与体系の低い機構採用の職員に切り替える一方、独法化前には定員の枠があって不可能だった医療スタッフの増員に着手。診療科ごとの評価をボーナスに反映させるなどの待遇改善を図り、5年間で医師36人、看護師208人を増やし、その結果、患者も約7千人増となった。 

 患者1人当たりの看護師数を増やすと診療報酬が加算される制度の利点も生かし、09年度決算の医業収益は前年度比で約32億円増えた。 
現場の一部職員からは「労働強化が進んだ」という声もあるが、同機構の高杉豊理事長は「独法化で職員の意識改革が図られ、慢性的な赤字体質から脱却できた。権限が病院に下ろされたことで思い切った策が打てるようになった」という。 

 総務省によると、08年度で全国936ある公立病院のうち7割が赤字で、負債総額は1845億円に上る。救急医療を抱えるなど高コスト体質も原因とされるが、同省は自治体に対し、経営の効率化を求める一方、病院の統合・再編や経営形態の見直しを求めている。 
選択肢の一つが地方独法で、今年4月には全国で21病院が移行し、現在42病院に広がる。 

 独法化の効果は国立病院で顕著だ。 
医薬品の共同調達やCTなど高額機器の共同利用を進めた結果、導入が始まった04年は5割以下だった黒字病院が、09年度には8割近くに増えた。 

 しかし、独法化すれば必ず成果が出るとは限らない。05年4月に日本で初めて地方独法化した長崎県佐世保市の北松中央病院(旧江迎町)では医師不足が足を引っ張る。 
今春、外科医2人が派遣元の大学病院に戻り、常勤医が9人に減った。現在は5階建て病棟の4階部分を閉鎖。入院患者数はこの5年で約1万人減ったという。 

     * 

 府内では昨年、赤字が続く府南部の公立3病院(泉佐野、貝塚、阪南市)と府立泉州救命救急センターの経営統合による独法化が頓挫した。 
あてにしていた国の特例交付金が予算見直しで大幅減額され、協議がストップ。 
07年に内科医が一斉退職した阪南市立病院は特に影響が大きく、市は単独で来年度から指定管理者に運営を委ねる「公設民営」の導入を進める。