救急医療で地域の要に、日経実力病院調査、診療体制編、幅広い疾患対応。



救急医療で地域の要に、日経実力病院調査、診療体制編、幅広い疾患対応。

2010/12/16, 日本経済新聞  
  
日本経済新聞社が、公開されているデータを基に実施した「日経実力病院調査」の「診療体制編」では、「救急患者を決して断らない」など、救急医療を中心に地域社会を支える中核病院が高評価となった。 
上位病院にはコストがかかる救急医療を充実させるため経営効率化に取り組んだり、地域の医療機関との連携で役割を分担したりする医療機関が目立ち、中核病院を柱とした改革が進みつつある。 
  


 最優先で治療が必要な患者は赤色カーテンで仕切った部屋へ――。相沢病院(長野県松本市)は県内の私立病院で初めて新型救命救急センターに認定されるなど救急車の受け入れは年間約5500件。 
1日平均15件で搬送患者が到着すると、すぐに重症度を判定。緊急性が低ければ黄色、軽い処置なら緑色のカーテンで仕切られた部屋に振り分け、限られた救急病床を効率的に活用している。 

 今回の調査では、同病院は診断群分類別包括払い(DPC)制度で、今年度から導入された「機能評価係数II」の5項目でいずれも最高のA評価だった。 

 5項目は 
(1)入院期間の短さ(効率性) 
(2)重症患者など治療が複雑な患者の受け入れ(複雑性) 
(3)より多くの疾患の治療への対応(カバー率) 

(4)がん、脳卒中、周産期医療などへの貢献(地域医療) 
(5)救急患者の受け入れ(救急医療)――。 
厚生労働省がDPC制度に参加している病院から得た情報を基に算出した。 

 同病院は1990年代半ばに就任した相沢孝夫院長が打ち出した「北米型のER(救命救急室)を目指し、救急患者は決して断らない」という方針で、救急医療を強化。同時にがん、脳卒中などを中心に幅広い治療に対応できる体制を構築、高評価につながった。 

 体制づくりには多大な費用が必要だったが、DPC制度に参加、経営の効率化に取り組んでいるのが特徴だ。特に診療情報を管理・活用する職員を4人から8人に倍増、他病院のデータと比較するなど改善点を探っている。 
相沢院長は「救急患者を多く受け入れるだけではなく、医療の質も日本のトップクラスに高めることは地域医療に貢献するための両輪」と強調する。 

 済生会熊本病院(熊本市)も同係数IIの各項目でいずれもA評価だった。 

 同病院は入院から退院までの標準的治療スケジュールをまとめた「クリニカルパス(治療計画表)」を全国に先駆けて1996年に導入。 
事前に退院時期や医療費のメドを示して患者の不安を和らげるとともに、副島秀久院長は「医師や看護師、薬剤師など専門スタッフが定期的に計画表に改善点がないか議論し、医療の質の向上につなげている」という。 

 同病院も「救急患者は断らない」と役割を明確にする一方、地域の中小病院や診療所には、急性期を脱した患者や慢性疾患の患者を引き受けてもらう地域連携も強化。院内の端末には約1600施設の診療体制データが入力されており、医師はデータを見て転院先を決められる。 

 さらに2002年に発足したTQM(質管理)部では転倒などの事故や院内感染、床ずれなどを常に監視し、問題があれば改善を指示する。 
院長直属組織として指示を徹底、患者の床ずれの発生率は大幅に減少、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出率も減少傾向が続いている。 
  

機構評価、亀田総合など首位 ITで他の病院と連携 

 日本医療機能評価機構(東京)の認定病院で最も評価が高かったのは 
亀田総合病院(千葉県鴨川市)と、 
織田病院(佐賀県鹿島市)の2病院。 

DPCの5項目評価では上位に入らなかったが、同機構の審査結果を100点満点に換算すると80点で、平均点(69.8点)を大きく上回った。 

 同機構は病院から申請を受け、書類審査に加え、病院長や看護部長などを経験した評価調査者が訪問審査し、「患者への説明と同意の方針や手順を明確に定めているか」「診療・看護の記録が適切か」など数百項目をチェック。5点満点の3点以上でないと認定や更新を受けられない。 

 トップタイの亀田総合病院は千葉県南部地域の救急医療を担う925床の基幹病院。 
昨年は国際的な医療機能評価「国際病院評価機構(JCI)」の認定を国内で初めて取得。
技術の高い医師やスタッフを集め、海外からも多くの患者が治療や検査のため来日する。 

 90年代半ばに電子カルテを本格運用、地域の医療機関と連携を強めている。 
地域全体の救急医療を充実させるため、関連法人が運営する病院で救急センターの増築計画も進めている。 
亀田信介院長は「基幹病院が医療の質と患者サービスを高めれば地域社会の価値は高まる」として、地域を巻き込んだ改革に取り組んでいる。 
  

▼調査の概要 日経実力病院調査では全国8739病院(2009年)のうち、日本医療機能評価機構(東京)の認定を受けて審査結果を公開している1923病院(10月5日現在)について、評価時期や病院規模による評価項目の差を勘案し、比較可能なように5点満点の全項目を合算、100点満点に換算した。 
  
各医療機関の診療体制の特性を評価する「機能評価係数II」は、各病名ごとに医療費を定額とするDPC制度で今年度から導入。 
厚生労働省が7月30日付告示で公開している1390病院の係数を数値の大きい順に4等分にし、上位からA~Dで格付けした。 
 実力病院のより詳細なデータを電子版「ライフ」で掲載します。 
 日経実力病院調査では、来年1月からがんなど各疾患ごとの調査結果を掲載する予定です。 
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