地域医療崩壊の危機




[県政の課題・2010知事選](6)地域医療崩壊の危機(連載)=宮崎 
2010.12.03 読売新聞  
  

 ◆研修医確保へ医師会と連携必要 

 11月2日夜、小林市役所4階の会議室で、市民団体「地域医療を考える会」が作ったDVD「西諸地域の医療の現状と問題点」の試写会が開かれた。 
会員の市民ら約30人が参加。 
市を含む西諸地域が深刻な医師不足に陥っている状況などを15分間にわたり、映像やグラフで説明、スクリーンに映し出された市立病院の坪内斉志(ひとし)院長は「地域の医療が崩壊にひんしている」と訴えた。 

 西諸地域の中核病院でもある市立病院は、2月から4人いた常勤内科医が1人になり、11月には小児科医の退職で小児科は休診に追い込まれた。 
産婦人科は担当医師を確保できず、昨年9月の病院改築時に予定していた診療をいまだに開始できない状態だ。 

 医学生が研修先を選べる臨床研修制度が導入された2004年以降、都市部に研修医が集中し、地方に医師不足のしわ寄せがきている。 
県の被る影響は深刻で、10年度に県内の病院で研修を希望する医学生は、過去最少だった昨年より8人減ってわずか30人。制度が始まって以来、初めて全国で最少となった。 

 県内で希望者が最も多かったのは、54人を募集した宮崎大医学部付属病院の23人、次いで県立宮崎病院の5人(募集定員10人)、宮崎生協病院の2人(同4人)で、いずれも宮崎市内。延岡、日南市の2病院を含む3機関は計7人を募集したが希望者はゼロだった。

 一方、東京は58人増の1409人、大阪は23人増の624人など都市部への集中が目立つ。 
医学生の多くは、指導環境や待遇で研修先を選び、終了後はそのまま勤務を続ける傾向が強いという。 

 危機感を抱いた県は9月、東国原知事の署名を添えた手紙を県出身の医学生約500人に送り、「若い皆さんの力が必要」と呼びかけた。 
県医療薬務課の担当者は「このままでは医者がいなくなる。 
すぐに効果は出ないだろうが、地元を研修先に選ぶきっかけにしてほしい」と望みを託す。

 宮崎大医学部付属病院は、出産前後の母親や子どもをケアする周産期医療などで十分な研修を施せることなどをアピールして確保に躍起になっている。 

 大学病院は地域の拠点病院に派遣される医師の供給元にもなっており、池ノ上克(つよむ)院長は「大学の重要な役割の一つが地域医療の充実。県や市町村、医師会と連携して知恵を絞り、危機を乗り越えなければ」と言う。 

 小林市で3歳の長女を抱える主婦(32)は「安心して子育てをするために、子どもを診てもらえる病院は多い方がいい。 
いざという時に医師が不在だったり、突然、重篤な事態になったりしたことを考えると怖い」と、市立病院が小児科の診療をやめたことに不安を隠さない。 

 地域医療を考える会はDVDを市内の公共施設に配ったり、イベントで上映したりして、コンビニ受診を控えることなどを呼びかける。 
前田隆一会長は「医師の負担を減らすため、市民ができることもある。1人でも多くの医師に来てもらえる環境づくりに皆で協力したい」と話す。(麻生淳志)