長崎県/島暮らし・移り住む人々 離島3市2町データ 人口減で疲弊 悪循環 学校、病院...

 

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長崎県/島暮らし・移り住む人々<1・下>離島3市2町データ 人口減で疲弊 悪循環 学校、病院…縮小進む-連載/長崎WIDE 
2010.11.16西日本新聞   
  

 ■シリーズ わたしたちのながさき 第1部■ 

 低迷が続く県内経済にあって特に疲弊が著しいのが離島地区だ。雇用環境の厳しさから若者が島に残れず、人口減は地域コミュニティーの崩壊や交通インフラの衰退などの悪循環を招いている。 
高齢化や人口減が加速することが予想される県内で、離島地区はその“最前線”だ。 
対馬、壱岐、五島の3市と小値賀、新上五島2町の現状をデータから読み解く。 


 3市2町の今年10月1日現在の人口は、計12万7948人。この10年間で2万6677人が島を去った。 
とりわけ小値賀は3765人から2731人に大幅に減少しており、島の存続を危ぶむ声も漏れる。 

 人口流出に歯止めがかからない最大の理由は「働く場所がない」ことだ。 
県内の9月の有効求人倍率は0・49倍で、全国平均の0・55倍を下回っているが、五島はそれをさらに下回る0・39倍、対馬も0・44倍にとどまる。県立五島高では今年3月の卒業生221人のうち、島に残ったのはわずか3人だった。 

   ◇   ◇ 

 雇用環境の厳しさは、国の構造改革による影響が大きい。特に島の経済を支えてきた公共事業の減少が建設業を中心に痛手となっている。 

 対馬、壱岐、五島列島の2009年度の公共事業費は総額249億6300万円。 
00年度の同735億9300万円の3分の1だ。県建設業協会五島支部の加盟社は現在45社で10年前のほぼ半数、従業員数は739人で4分の1にまで減った。同支部の鈴木茂局長は「島では民間からの受注は皆無。公共事業がないと生き残れない」と嘆く。 

 もう一つの基幹産業ともいえる農業も厳しい。06年度の3市2町の農業産出額は計134億7千万円で、00年度を約9億円下回っている。 

   ◇   ◇ 

 人口減はコミュニティーの崩壊に直結する。地域の要となってきた小中学校は、3市2町で00年度は計165校あったが、10年度は139校まで減った。生徒数9人で同年度末の廃校が決まっている対馬市立加志々中のPTA副会長大浦美恵さん(45)は「子どもたちは大勢の中で学ぶ方が得られるものも多いが、運動会などで地域が一つになる機会がなくなるのはさびしい」と複雑な心境を語る。同年度末にはさらに計18校が統廃合される予定だ。 

 また、壱岐、対馬、五島列島の07年度の病院・診療所数は125施設で00年度と比べると34施設減った。 
県病院企業団は効率化による収支改善や医師確保を目指し、対馬、五島、新上五島に3カ所ずつある公立病院を各市町1カ所ずつに統合・移転し、残る病院は分院や診療所にする再編計画を進めている。 

 交通インフラも縮小を続けており、本土との利便性は落ちる一方だ。 

 新上五島、小値賀の両空港は06年3月、利用者の低迷を理由に閉鎖。同様に海上航路も整理が進み、09年5月には佐世保-宇久・小値賀線が廃止された。 

 県離島振興協議会は「人口減によって経済活動が縮小し、さらに人口減を招く悪循環に陥っている。公共事業依存の体質から脱し、島ならではの魅力を発信することで存在意義を見いだしたい」としている。だが、容易に決め手は見いだせないのが現実だ。 

    ×      × 

 ●地域の息吹き書き留める 「わたしたちのながさき」開始 

 地方の疲弊が言われて久しい。 

 県内でも離島や農漁村から若者の姿が消え、都市部でも人口流出は著しい。商店街からかつてのにぎわいが消え、住宅街はコミュニティーを保つことも困難な状況だ。 

 「失われた10年」以降も続く閉塞(へいそく)感。変化を求めるうねりは政権交代をもたらし、長崎はその象徴となった。 
だがその熱気は既に冷め、先の見えない不安が再びまちを覆いつつある。 

 多様な文化や歴史、風俗に彩られながら人々が暮らしを紡ぐ「ながさき」。その価値や可能性を見つめ直すことで、地方が生き残る道を見いだせないか。 

 まちを歩き、人びとの息吹に触れながら地域の今を見つめ記録する長期シリーズ「わたしたちのながさき」を始めます。