役人天国市長が挑む厚偶改革の一部始終

 

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RESIDENT  2010年11月29日号 P99~100 一部抜粋

 

役人天国市長が挑む厚遇改革の一部始終

 

大胆な「外部化」で非正規率は四割超

 

自治体の財政は厳しい。だから全国で「改革」が進められている。兵庫県の加西市では、民間出身の市長が、大胆な「職員の外部化」を進めている。中川暢三市長は05年7月に現職市長を破って初当選。07年5月、議会の不信任で失職したが、出直し市長選で再選した。現在2期目。新卒以来、鹿島建設に23年間勤務し、在職中の01年には参院選、02年には長野県知事選挙に立候補した経験をもつ。就任後、まず取り組んだのが職員の意識改革だという。

「いつも『気づきと行動のある職員になってほしい』と言っています。市民の声に耳を傾けるという姿勢が身につけば、自ずと解決策は見えてくる。問題点を感じたら行動すること。それを漫然と見過ごし、放置し、先送りすることは不作為であり、許されません」

市役所の至るところには「子供にツケを回さない」との看板がある。注意を喚起させる黄と黒の配色で、よく目立つ。加西市の実質累積債務は、就任前から減少を続けている。ピーク時の04年度末には655億円あったが、09年度末には496億円と159億円が減少。市はホームページに刻々と債務が減る「借金時計」を掲示して、成果を示す。

中川市長は、債務減少の背景として人件費の圧縮を挙げる。現在、市職員のうち正職員は331人、臨時職員は235人(病院と消防を除く)。一方、5年前は正職員は404人、臨時職員は112人だった。臨時職員の比率が四割以上となった結果、人件費は約5億円減り、歳出に占める構成比も17.8%と2.5ポイント減った。「市職員の給与は、市内の大手企業に比べて3割、一般企業で5割以上は高い。だがこれは職員の責任ではなく、行政の仕組みに起因する問題。行政の仕事にはルーティン作業が少なくない。そうした仕事は臨時職員への置き換えを進める。さらに直接雇用よりも、民間に包括委託したほ.久がコストは安く、給与も適正になります。外部化を進めれば、総人件費で2割、7億円はさらに削減できる」

この「中川プラン」では、正職員を現在の半分以下の150人、臨時職員を「民間職員」として435人にすると試算している。市では来秋以降に委託を始める計画だ。すでに派遣会社など50社以上から打診があったという。

正職員では成果主義の導入を進める。08年のボーナスから部長クラスで年間最大90万円、課長クラスで60万円の収入格差がつくようになった。また37歳の係長や46歳の課長など、従来より若い役職者が出てきているという。社会人採用にもカを入れていて、これまでに15人を採用。元ホテルマンなど多彩な前職の人間が在籍するようになった。

09年12月には市立加西病院に対する地方公営企業法の全部適用を実施。人事や予算作成の権限を市長から病院管理者へ移し、経営の効率化を図る。09年度決算の純損失は、前年比で約1億円少ない約2億円だった。中川市長は、組織改編の結果として、「前例踏襲を変えようという姿勢が出てきている」という。

職場の「非正規化」は、ほとんどの自治体で進んでいる。総務省の調査では、05~08年までの3年間で9.5%の伸びを示す。自治労は全自治体の総数で約60万人と推計。とくに市町村で増大が顕著だ。指定都市を除く市町村では、約1割の管理職を除き、正規職員と非正規職員の比率は2対1となっている。

非正規職員の労働条件は厳しい。自治労の調査によると、賃金の支給形態は時給型と月給型が2対1。このうち時給型では55.1%が時給900円未満、月給型では58.7%が月収16万円未満。さらに通勤費が支給されているのは47.2%と半数以下だった。年収200万円以下の「ワーキングプア」を、行政が自らつくり出していることになる。

もちろん家事や育児で、フルタイム勤務を望まない人もいる。非正規職員の80%は女性だ。ただ、全体の半数程度はほぼフルタイム。「非正規化」による人件費の縮減には限界がみえる。