鵜の目・鷹の目:笠間市立病院 初期救急診療から半年、成果や課題再点検へ /茨城



鵜の目・鷹の目:笠間市立病院 初期救急診療から半年、成果や課題再点検へ /茨城 
2010.10.14毎日新聞  
  

 <うのめ・たかのめ> 

 ◇平日夜間、平均3人 サービス維持の分岐点 

 笠間市立病院(同市中央、30床)で今年4月、平日夜間(午後7~10時)と日曜日(午前9~午後5時)の初期救急診療が始まり、半年が経過した。 
同病院から約1・5キロにある県立中央病院(同市鯉淵、500床)への軽症の救急患者の増加を緩和し、地元の医療サービス向上を目的としたものだ。 
ただ、日曜日は順調に利用があるものの、平日夜間の受診者数は1日あたり3人前後と伸び悩んでおり、「安心」のコストとして維持すべきか、分岐点に差しかかっている。市は来月上旬の運営協議会で、事業の成果や課題について再点検する。【山崎明子】 

 新たな救急制度導入の背景には、入院や手術が必要な重症患者の診療を担う中央病院で、初期救急診療の負担軽減が求められていたことがある。 
市医師会所属の医師が中央病院に出向く案も検討されたが、厳しい経営状況に直面する市立病院が新たな役割を模索していた事情と重なり、市立病院が平日夜間と日曜日の救急診療受け入れに踏み切った。 

 ■予算4800万円増 

 昨年度までの市内の救急診療は、日曜・祝日の昼間に、開業医2院による「在宅当番医制」を設けていた。利用者数は1日平均30~40人で、医師に対する報酬として1日6万円を市の一般会計から支出。昨年度は876万円を計上した。 

 新制度導入に伴い、市は今年度新事業として病院事業会計に5516万円を上乗せした。 
その一方で、開業医の在宅診療は祝日、市内1カ所のみとし、在宅当番予算額は160万円に縮小。トータルでは新制度導入で市の予算は4800万円増えたことになる。 

 ■開業医連携に効果 

 新制度は、医師1人、看護師2人を含む計5人体制。平日夜間は月~水曜日に市医師会から、木~金曜日は中央病院から派遣された医師が交代で当たるのが特徴だ。日曜日は非常勤の医師が担当する。在宅当番医制ではバラバラだった開業医が一カ所に集まることにより、石塚恒夫院長は「初期診療は市町村の役目。 
病院で地域の医師と顔を合わせることで、連携が深められた」と副次的効果の手応えを強調する。 

 応急処置が目的のため、血液検査やレントゲン撮影は行わず、総合内科で急な発熱や腹痛、けがなどの診療にあたる。 
重篤な場合は中央病院を紹介するという形で分業し、地域医療の役割を明確化する効果も期待される。 

 ■中央病院軽減ならず 

 ただ、この半年の受診状況をみると、当初目的だった中央病院の負担軽減には必ずしもなっていないようだ。 

 市健康増進課によると、4月以降の市立病院の受診者は、日曜日は1日平均30人程度で当番医制度時代の受診者数と大きく変わらないが、新たにスタートした平日夜間の受診はは3人程度にすぎない。 
一方、中央病院の准夜帯(午後5時半~12時半)は、軽症の救急患者の来院数は4~7月の合計が昨年に比べて51人増の1341人になっている。 

 こうした市立病院の平日夜間の受診者数の伸び悩みを受け、市内の開業医の中には「中央病院にも市民にも役立っているか疑問だ。 
過大な税金投入は避けるべきだ」と批判の声も出ている。 

 ■風邪シーズンに真価 

 市は周知不足が原因とみて、新制度導入に関する手作りポスターを公共施設に張るなど、広報を強化している。市健康増進課は「これからインフルエンザの季節になるので、今は様子を見守りたい」と話す。
藤枝泰文・市立病院事務局長は「利用が少なすぎては市の持ち出しがかさむ。 
しかし病気の人が増えても困る」と微妙な心境をのぞかせた。いずれにせよ、新型インフルエンザが流行するこれからの季節に新制度がどう機能するか、真価が試されそうだ。 


 ■記者からひと言 

 ◇納税者自身が議論を 

 体育の日の翌12日午後7時半、笠間市立病院に青ざめた3人の女性が現れ、足早に夜間診療の診察室に入った。市内の主婦(63)が自宅で転倒し頭をテーブルにぶつけ、傷口からひどく出血したため、娘2人に付き添われて受診したという。 

 消毒後、頭に張った白いガーゼが髪から見え隠れする。「頭のけがなので、心配した。 
夜間診療があってよかった」とほっとした表情を浮かべた。その夜の救急患者はこの1組だけだったが、住民に「安心」を提供する役割は果たしたと言える。 

 公立病院の経営は全国的に厳しく、市立病院でもここ数年、赤字経営が続いている。 
では09年3月に病院改革プランを策定し、今年度からの黒字化を目指している。 
収益の増加は患者の利用にかかっており、利便性の向上が課題だ。 

 夜間休日の地域医療体制がどうあるべきか、単に効率だけでは論じられない。納税者であり、患者になりうる地域住民が、どんなサービスを望むか、真剣に議論する必要があるだろう。