リポートみえ)きしむ救急医療 伊賀・志摩地域、三重大から医師が来ない /三重県



(リポートみえ)きしむ救急医療 伊賀・志摩地域、三重大から医師が来ない /三重県 
2010.10.03朝日新聞  
  

 勤務医不足が深刻な伊賀、志摩地域で、救急医療の態勢にほころびが出始めた。 
臨床研修制度導入で大学病院からの医師派遣が減る中、大学、拠点病院、自治体の連携が不十分なためだ。 
(藤崎麻里、吉田海将) 


 ●入院病床、閉鎖 常勤内科医、9人が1人に 上野市民病院 

 「二次救急を実施できない日が生じてまいりました」 

 7月下旬に各戸に配られた「伊賀地域救急輪番制当番表」。8月2、30日の欄が、初めて空白になった。 

 伊賀、名張両市では2008年度から、名張市立病院、上野総合市民病院、岡波総合病院が休日と夜間の2次救急の輪番制を始めた。 

 しかし、上野総合市民病院で、05年度に9人いた常勤の内科医が、三重大学からの医師派遣が減って8月から1人になり、輪番を埋められなくなった。 

 2日夕から3日朝の救急患者4人は、地域外に搬送して問題はなかったが、伊賀市では3月、70代女性が7病院に受け入れを断られ、死亡する事案が発生している。 

 名張、伊賀両市は7月以降、上野総合市民病院、名張市民病院の二次救急機能をいずれかの病院に集約する方針だったが、必要な三重大学の医師派遣がなく、頓挫。 

上野総合市民病院は救急患者の受け入れを原則中止し、内科の入院病床59床も閉鎖するなど、市民生活への影響が出ている。 

 志摩市の県立志摩病院では、三重大学から派遣された常勤の内科医はピーク時の04年には11人いたが、現在は2人。 
自治医科大学からも新たに派遣を受けているが、救急の空白日が生まれている。 


 ●自治体、確保に必死 地方は過酷、離れる若手 

 県内各地の拠点病院の運営は、三重大学からの医師派遣に支えられてきた。 

 「我々の若い頃には、(地方の病院に)行けと言われれば行ったし、『専門外だからできません』ということはなかった」 

 県内の50代のベテラン医師はつぶやいた。 
臨床研修制度の導入に加えて、訴訟リスクの回避を背景に専門性重視の流れが定着。 
過酷な病院勤務に耐えられなくなった若手医師が開業するなどして勤務医は減り、医師を派遣する余裕もなくなった。 

 自治体も医師確保に必死だ。 
名張市は「小さな病院で多くの経験を!!」とのキャッチフレーズを掲げ、年収1200万円以上を提示して市民病院に研修医を呼び込み、05年に小児科医がゼロになると、市長自ら県外の大学を回り、4人態勢を確保した。 

 伊賀市も昨年から三重大学以外の大学を回り、医師派遣を要請。 
9月市議会には、上野総合市民病院の医師の地域手当を3%から15%に増額し、看護師の夜間看護手当を2倍の8千円に引き上げる条例改正案を提出した。 


 ●新たな仕組み、模索 地域で育てて地域へ派遣 

 厚生労働省の9月末の調査では、三重県内の医師数は1982人で、必要な医師数はその1・16倍だったことがわかった。全国は1・11倍だった。 

 関係者は「医師確保には、若手医師が三重県にいたいと思う仕組みづくりがカギ」と指摘する。 

 県は今年度、臨床研修の優れた研修プログラムを作成した病院に、計2151万円の補助金を出す事業を始めた。 
来年度から13年度までは研修医1人あたり330万円を貸与する制度を新設。今月1日には、県内で勤務経験のある医師らに三重での勤務を働きかける医師確保対策チームを立ち上げた。 

 一方、三重大学の登勉・医学部長は「大学病院だけでなく、中核病院にも地域医療を支える役割を担ってもらわないといけない」と話す。 

 内科、外科と医局単位で医師を派遣するのではなく、大学病院として派遣した指導医が、地域医療を担える若手医師を育て、こうした医師を他の病院に派遣する仕組みが念頭にある。 

 県医師会も、新たな地域医療のネットワークづくりを県や三重大学と検討を始めた。加藤正彦会長は「ネットワークには、開業医も入れていくことが必要」と話すが、議論はまだ始まったばかりだ。 


 ◆キーワード 

 <臨床研修制度> 2004年度に始まった医師の研修制度。これまで医学部生は出身の大学病院で研修していたが、厚生労働省が指定した臨床研修病院の中から研修先を選べるようになり、症例の多い都市部の病院に希望が集中するようになった。 


 ■上野総合市民病院と名張市立病院の常勤医師数 

        上野 名張 合計 

 2005年4月 26 28 54 

 2006年4月 22 23 45 

 2007年4月 20 22 42 

 2008年4月 18 22 40 

 2009年4月 17 23 40 

 2010年4月 14 23 37 

 2010年7月 11 23 34 


 ■救急医療を担う国公立病院への三重大学からの医師派遣数 

 病院           地域   派遣医師数 前年比増減 

 桑名市民病院       桑名市    25     0 

 三重病院         津市     23    -2 

 三重中央医療センター   津市     71     1 

 県立総合医療センター   四日市市   59    -2 

 県立志摩病院       志摩市    20    -2 

 市立四日市病院      四日市市    9     0 

 亀山市立医療センター   亀山市     6     0 

 松阪市民病院       松阪市    25    -1 

 市立伊勢総合病院     伊勢市    38    +2 

 名張市立病院       名張市    16     0 

 伊賀市立上野総合市民病院 伊賀市    17     0 

 尾鷲総合病院       尾鷲市    16    -1 

 紀南病院         御浜町    15    -2 

 県内外の病院総計           965   -27 

 ※2009年10月時点。全診療科を含む