小樽の医療のあり方は...*埼玉の病院副院長 本田宏氏に聞く*人材生かし、連携構築を



小樽の医療のあり方は…*埼玉の病院副院長 本田宏氏に聞く*人材生かし、連携構築を 
2010.09.23 北海道新聞朝刊地方 
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 深刻な医師不足を放置する医療政策に警鐘を鳴らしている済生会栗橋病院(埼玉)の本田宏副院長が17日、小樽市民センターで講演し、市民や医療関係者ら3百人に日本の医療制度の問題点を分かりやすく指摘した。小樽の新市立病院の建設にも触れた講演後のインタビューとともに紹介する。(宮本武、元井麻里子) 

 新市立病院の建設をめぐり多様な意見が出ている小樽は、このピンチを医療再生への好機と市が考えるべきでしょう。建設地をめぐる曲折で時間を使ってしまいましたが、その間に全国で公立病院のあり方への論議が深まりました。小樽の実情に合わせ、その成果を取り入れればいい。 

 まずは、小樽の医療の必要度を市民全体が共有すべきです。現在や将来の人口、年齢構成、疾病発生予測などを踏まえ、どの診療科が足りないのか、どの病気を札幌で治療しようと考えるのか-。具体的に実態を把握することが第一歩です。 

 小樽ほど高齢化が進んでいれば、医療と介護・福祉との連携構築は不可欠。そのためのマンパワーは充足されているのか。あるべき姿を描く機運と基盤をつくるのが行政の果たす役割です。 

 新病院を作れば、医師が確保できるとの話もあります。ただ、日本の医師数は26万~27万人。経済協力開発機構(OECD)の加盟国三十数カ国中、人口あたりの医師数が下から4番目という貧弱さです。東京など都市部でも医師確保が難しく、まして地方では-というのが状況です。 

 仮に医師が集まっても、看護師や薬剤師などの医療従事者を含めて、成熟した医療チームを築くには時間がかかります。人材流出を防ぎ、今の小樽にある医療資源をベースに体制を築く方が現実的でしょう。 

 将来小樽の医療や介護、福祉システムをどうするかは、小樽市民が責任を持って考えるべきことです。中には388床もの新市立病院は不要だとの意見もあるでしょう。逆に現在の医療環境を考えれば、市立病院が果たすべき役割は大きいと思う人もいるはずです。 

 他の医療機関との関係でも、例えば三重県では公立病院と済生会を含む公的病院が、夜間救急受け入れを輪番制で回し、勤務医の負担を軽減しています。 

 同じ形を小樽で取るには、個々の病院が夜勤を担える態勢を築く必要があります。一方、A病院はこの診療科が強い、B病院はこれ-と軸を想定し、夜間救急態勢を整える方法もありうる。どれがいいかは市、医師会、病院、そして市民が、現状と望むべき医療環境を熟議して決めていくべきなのでしょう。 

 観光など産業基盤がある小樽で、安心して長生きできる態勢が築ければ、あるべき地方都市のモデルになれます。小樽の医療問題は全国から注目されているのです。 

<略歴> 

 ほんだ・ひろし 1954年福島県生まれ。79年弘前大医学部。同第一外科に入局後、東京女子医大腎臓病総合医療センター外科に移り、腎・肝移植の研究に携わる。89年に済生会栗橋病院に赴任、2001年から現職。NPO法人・医療制度研究会副理事長。著書に「医療崩壊のウソとホント」(PHP研究所)などがある。