近郊ナウ 春日井市民病院本年度 13年ぶり単年度黒字へ




近郊ナウ 春日井市民病院本年度 13年ぶり単年度黒字へ 入院患者増 経費削減 09年度赤字8割圧縮 地域連携さらに推進 
2010.09.12  中日新聞  
  

 【愛知県】春日井市民病院(鷹来町)の経営健全化に向けた努力が、着実に実を結びつつある。 
五カ年計画の「中期経営計画(公立病院改革プラン)」がスタートした二〇〇九年度に早くも赤字の八割圧縮に成功していたが、本年度はさらに地域医療機関との連携強化を推し進め、十三年ぶりに単年度黒字を確保できる見通しだ。 

 十億六千六百万円。春日井市民病院の〇八年度の赤字額は、十ケタの大台に達する深刻さだった。 
中期経営計画でも、〇九年度に圧縮できるのは五割と見積もられていた。 
ところが、ふたを開ければ想定を三億円以上も上回って八割減の二億三百万円まで圧縮。新築移転した一九九八年以降では最小の赤字額となった。 

 最大の要因は、医業収益の六割強を占める入院患者が増えた点にある。 
〇九年度の伸び率は3・9%で、人数では前年比で六千八百人増の十七万九千人。 
病床利用率も89%と3ポイント上昇し、医業収益は九億七千六百万円増えて百二十七億円に達した。 

 背景にあるのが、看護師の増員だ。 
〇八年一~六月に大量退職で看護師の数が不足し、一時的に入院患者の受け入れを制限した際、収益悪化に直面した苦い教訓が生きている。 
〇八年度以降、毎年約四十人を採用し、四百四十七人まで増やした結果、小児病棟では患者七人に対し看護師一人の「七対一基準」を満たすことで診療報酬が加算され、〇九年度には五千二百万円の増収となった。 

 〇九年四月に導入したレセプト包括請求(DPC)も経営改善に貢献している。 
従来の入院医療費は検査や投薬のたびに加算する「出来高払い」だったが、DPC導入で病気に応じて定額を払う制度に変わり、業務の効率化につながった。病院の宮沢勝弘管理課長は「平均在院日数が減るとともに三億円の増収になった」と話す。 

 さらにコスト削減への努力も功を奏した。光熱費を抑えようと〇六年に省エネ委員会を設置し、職員が院内を巡回して不要な照明を消したり、空調機器の温度を調整したりした結果、年間三千万円の節減を達成した。 
価格の安い後発医薬品(ジェネリック)の使用や委託業務の見直しも進んでいる。 

 今後の課題は、地域の医療機関との連携強化だ。患者を診療所から受け入れる「紹介」と、市民病院から診療所に移ってもらう「逆紹介」の割合が60%を超えれば、県の地域医療支援病院に指定され、報酬加算により年間一億二千万円ほどの増額が見込める。 
目標達成のため、六月には病院一階に地域連携ステーションを開設した。 

 六十億円の累積赤字を考えれば道半ばではあるものの、地域医療の安定に向けて心強い状況と言える。 
渡辺有三院長は「取れることは取り、削るところは削るという意識が職員間でも徹底されてきた。本年度は七月末時点で利益を確保しており、通年でも黒字化できるだろう」と話している。 

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 記者の目 

 公立病院は市民にとって「健康のとりで」。全国の自治体では病棟の閉鎖や統廃合が絶えないだけに、安定経営に向けた不断の努力を続けてほしい。(木谷孝洋)