銚子市立病院 再開1カ月 内科のみの診療・・・

再建策を考える前に、そもそも銚子市立病院は本当に必要なのか否か、今一度、冷静に考え直しても良いのではないだろうか,
2日前に猫に手を咬まれた老婆の傷の手当てをするために、銚子に行こうと決意する医者は決して多くはないだろう。http://www.city.choshi.chiba.jp/mayor/press/h22press/pdf/h220312-201_plan.pdf 

  

銚子市立病院、再開1カ月 内科のみの診療、患者1日10人(2010/6/8 日本経済新聞) 

 財政難を理由に休止した銚子市立総合病院(千葉県銚子市)が、1年7カ月ぶりに「銚子市立病院」として診療を再開して1カ月が過ぎた。 

常勤医1人、診療は内科外来のみでの船出は、1日の平均患者数が10.9人という厳しい状況だ。 
病院は今後、診療科を増やすために医師の確保に努めるが、離れた患者をどう呼び戻すかなど、多くの課題も抱えている。 
 病院内は休止前の姿をとどめていた。 
待合のテレビに書かれた病院名は「市立総合病院」のまま。フロアの隅にはかつて使われていた器具が、当時のまま置かれていた。 
  
近所の女性(76)が診療に訪れた。2日前に猫に手をかまれたという。「猫のかみ傷は深いですから。気をつけてくださいね」。看護師が助言する。 
「手早く処置してくれて助かった」と女性はホッとした表情を見せた。 
 病院は指定管理者による公設民営方式をとっている。 

運営は医師や企業経営者らでつくる「銚子市立病院再生機構」が担う。 
理事長である笠井源吾院長が常勤医を務め、9人の非常勤医が交代で診療する。 
野平匡邦市長は複数の診療科をそろえてから再開する道も探っていたが、最終的に早期再開を優先した。 
  
再生計画では5年後の2014年度末までに、外科、小児科、産婦人科など10科目をそろえることを目指す。 
科目を増やすために医師の確保を進め、入院が必要な「2次救急」にも対応する。 
単年度の黒字化は14年度。それまでは赤字での運営を覚悟するという。 
 とはいえ、1日の患者がわずか10人強という状況の厳しさは関係者も認める。市病院再生室は「患者は複数の疾患を抱えている場合が多い。複数科目がそろわないと、患者をひき付けることが難しいのかもしれない」と話す。 
  
体制の充実に今月から月2回の整形外科を始める。 
非常勤医の1人が睡眠障害に詳しいため、同月中旬から月1回の「いびき外来」も始める。
だが地元で最も求められているのは、入院が必要な2次救急など比較的高度な医療への対応。 
機構の田中肇専務理事は「そのためにも、早い段階で医師を確保することが必要だ」と認める。 
  
今、田中専務理事が進めているのが、複数の大学から研修医や医師を集め、市立病院に派遣してもらう組織の創設。 
「大学の医局に似ているが、特定の大学に偏らないのが特徴」(田中氏)。 
かつての市立病院が特定の大学に医師派遣を頼っていたため、医師の確保に苦労した反省を踏まえているという。 
秋までには形を整え、派遣に道筋を付ける考えだ。 
他施設に流れる 
  
ただ、医師の確保にめどがついても、患者を呼び戻すのは簡単ではない。銚子市に住む50代男性は、5月に母親が心臓を患い、市内の別の病院で検査を依頼した。 
「設備も新しく、親切に対応してくれた。 
以前は市立病院をよく使っていたが、こちらでも問題ないと感じた」と話す。 
  
休止前の市立病院は16の診療科を抱え、病院にかかり切りの高齢者も多かった。 
それだけに休止は切実な問題として受け止められ、市長の解職請求にまで発展した。 
同市在住の40代の男性は「冷静になってみれば、市内の他の医療機関でも補える機能はあった。 
今はその事実に市民も気づいたのではないか」と語る。 
  
1度休止に追い込まれた病院を再建するのは、新設よりも難しいといわれる。 
「1年7カ月の空白期間に別の病院や医院で新たな主治医を見つけた人も多い。多くの市民は再建の様子を見ている」(50代の銚子市民)。 
市立病院は再建に向け、病院の将来像を早く市民に示す必要に迫られている。 


  
雪国に暮らす医系技官の独り言心療 ブログ 引用させていただきました(June 08, 2010 ) 

本末転倒の病院再建・・・銚子市立総合病院 

 世の中には手段の目的化と言われるようなことが実に多い。 
 「手段の目的化」とは、本来の目的を見失って、最初は目的を実現するための単なる手段に過ぎなかったことがあたかも本当の目的、究極の目標であるかの如く扱われてしまうことである。 
 銚子市立総合病院の再建も、そうした本来の目的を見失ってしまい、病院再建のための再建となってしまった事例の一つであろう。 

 病院とは、本来、治療を必要としている人、つまり患者に医療を提供するために存在するものである。患者がいないのであれば、医師も必要ないし、そもそも病院も必要ない。 
 病院を再建するために医師を集めるとか、病院経営を安定させるために患者を集めるなどと言う発想は、全く以て本末転倒としか言いようがない。 
 患者がいないのであれば、病院は廃止すれば良いのである。 

 千葉県内の病院を訪れる外来患者は、人口10万人当たり一日平均952.3人(医療施設(静態・動態)調査・病院報告[平成20年])である。 

銚子市の人口は70,251人(平成22年6月現在)なので、単純に計算して、毎日668人の銚子市民がどこかの病院に通院している計算になる。 
 それに対して、銚子市立病院の1日平均外来患者数は、わずかに10.9人であり、銚子市の通院患者668人の1.6%に過ぎない。 
つまり、銚子市民の98.4%という圧倒的多数は、市立病院以外の病院に毎日通っているということになる。 

 もともと地域住民のための精神科病院としてスタートした銚子市立病院は、政治家らの様々な思惑から、16診療科を擁する総合病院となってしまったが、そもそも銚子市に、これほどの規模の市立病院が必要なのか、最初から大いに疑問のある施設であった。 
  
目の前に患者がいて、本当に医師が必要とされているのであれば、どんなに条件の悪い病院であっても、そこから逃げ出す医者は滅多にいないものである。 

日本の医者のモラルは、それほど低くないし、世界的に見れば、高潔な部類に入ると思う。
 しかし、そうした使命感の高さは、自分の医師としての存在に疑問を感じた時に、逆に熱意ややる気を急速に喪失させてしまう原因となる。 
2日前に猫に手を咬まれた老婆の傷の手当てをするために、銚子に行こうと決意する医者は決して多くはないだろう。 

 再建策を考える前に、そもそも銚子市立病院は本当に必要なのか否か、今一度、冷静に考え直しても良いのではないだろうか。