スタッフヘのリスペクトがチーム医療の根 幹を成す・・・ 医療法人鉄蕉会亀田総合病院 理事長 亀田隆明氏



特集 チーム医療(医療タイムス 2010/8/30) 

スタッフヘのリスペクトがチーム医療の根幹を成す 
医療法人鉄蕉会亀田総合病院 理事長 亀田隆明氏 

(チーム医療亀田ツアーの講演から) 

 チーム医療と一口に言っても、その形態はさまざまだ。 
医療法人鉄蕉会亀田総合病院では、長きにわたり個々の患者に合わせたチームを組み、治療を施してきた。理事長の亀田隆明氏は、チーム医療の目的を「患者に最適な医療を提供する手段」と定義。 

成功の前提条件として「スタッフヘのリスペクトが根底にあること」を挙げた。 
また、必ずしもチームリーダーに医師を据えることはないとも指摘。患者の要望に応じた柔軟な編成を提言する。 

「個々人へのリスペクトが基本」(亀田隆明理事長) 

人手不足で始まったチーム医療 新たな業務も信頼して任せる 

 亀田氏が心臓血管外科を立ち上げるために故郷の亀田総合病院に戻る際、前職の病院でともに診療に従事した医師や看護師、さらに人工心肺技士などで気心の知れた信頼できるチームを作った。 
そこに米国で活躍中であった心臓外科医を招聘することで、診療の質の向上をめざしたのだ。 

 当時も全国各地の病院でチーム医療は行われていたが、ほとんどは医師を頂点としたピラミッド型のチーム。 

医師や看護師をはじめ、各専門職がそれぞれの役割を粛々と果たすのみだった。 
そんな中、亀田氏は役職にとらわれないチームを作る。 

新設の心臓血管外科でスタッフが不足しているため、1人が複数の役割をこなさなければならなかったからだ。亀田氏は、「各人がどれだけ優秀でも、チームの中で輝けなければ意味がない」と考え、チームが患者の治療に向け最高のパフォーマンスを発揮できるよう、マネジメントに注力した。 

 亀田氏が手がけたチーム医療の例として、人工心肺を医師以外のスタッフに扱わせたことが挙げられる。 
当時はほとんどの施設で医師が担っていたが、操作ミスが原因となる事故もあった。 

亀田氏は、この作業が本来工学が専門ではなく手術が専門である外科医は時として集中力を欠くことがあり、ミスにつながると判断。 
別のスタッフを人工心肺操作専門のテクニシャンとしてトレーニングし機器の操作を任せた。これが後に臨床工学技士という新しい職種を生んだ。 

 ミスをすれば、患者の命にかかわるだけでなく、白身や病院の責任も問われる。 
だが、患者により安全な手術を受けてもらえると確信していた。 
加えて、担当するスタッフには徹底的に教育を施すとともに折に触れ「信頼している」と伝え操作の全権を託したのだ。 

 結果、取り扱いミスが原因の事故はゼロ。心臓血管外科が誕生して2年後には、全手術患者の70%が都内の病院からの紹介患者になった。 
「チームは、スタッフ間の信頼なしには成り立ちません。 
スタッフが持つ能力を最大限発揮させるため教育し、相手を信頼することで自信を持たせる。 
そんなマネジメント能力が、リーダーには求められます」 


患者ごとにチームを編成 リーダーが医師以外のことも 

 医療が高度化・専門化し、患者が病院に求めるニーズも多様化している現在、医師がすべてを担うことは難しい。 
病棟のケアに通じた看護師、患者と二人三脚でリハビリプログラムを作成し消化するPT・OT、検査に欠かせない技師たち、医師の処方に意見ができる薬剤師、経済的な相談・支援を担うメディカルソーシャルワーカー、診療報酬を正確に算定するだけでなく、患者や病院スタッフに心地よい環境作りを担う事務職員…。彼らの力なしに、患者により良い医療を提供することはできない。そのためにチームを組むのである。 

 同院の入院患者は約800人。個々人に合わせて800通りのチームを作る。 

注目すべき点は、リーダーが医師ばかりではないことだ。 
リハビリ中心の患者であればPTやOTが中心になり、精神科であれば精神保健福祉士がリードを取ることもある。 
患者の効果的な療養を実現することを中心に考え、それに合わせてリーダーを決めるからだ。 
コメディカルもチームにいる医師や看護師に対しても、リーダーとしてマネジメントを施すこともある。彼らにも医師や看護師と同等のチャンスと責任が与えられるのだ。 



完全個室のKタワー。患者ごとのチームが組まれている。 

 チーム医療は、治療やケアなど病棟のスタッフのみにとどまらない。 
例えば、同院にはコンシェルジュというスタッフがいる。 
入院患者が市内のスーパーに買い物を頼みたい時に、メモを渡して買い物を代行する。 
独居高齢者で見舞いに来る家族もいない患者が増えたことから導入されたものだが、これを提案したのは事務職員だ。 
患者のアメニティ向上も医療の一部と捉え、アイデアを出す姿勢が形になった。 
事務職員もチームのー員であることを示唆する事例と言えよう。 

 同院のチーム医療への評価は極めて高く、全国の医療機関から見学者が訪れる。 
患者も千葉県内だけでなく、全国から集まるようになった。 
「亀田総合病院のチーム医療は日本一だ」との声も少なからず聞かれる。 
だが亀田氏は手綱を緩めるつもりはない。 

 「チーム医療が人と人とのつながりを基礎にしている以上、完全はありえません。スタッフからも、改善点を指摘する声が常に出てくる。常に成長しなくてはいけないと思いますし、その余地はあると思います」 

 亀田総合病院のキャッチフレーズである「Always Say Yes!」には、「はじめからできないと諦めるのでなく、とにかく工夫してやってみる」というあくなき向上心が込められている。 
限られた人材で最大限の効果を生み出すために始まったチーム医療は、数十年の時を経てなお、日々進化を続けている。 

  

医学生がチーム医療を学ぶ 
コメディカルが語る本音とは? 

 4日、医師のキャリアパスを考える医学生の会(松本鉱太郎代表)が、亀田総合病院のチーム医療を学ぶツアーを開催。病院側の全面協力の下、院内見学や職員とのグループディスカッションが行われた。 

学生とスタッフが車座で意見交換 

コメディカルからの発言も 

 学生からは、特にコメディカルに対して多くの質問が挙がった。 
彼らの3分の2が医学部生ということもあり、医師以外の職種のチーム医療へのかかわり方や、現場での難しさを知りたかったのだろう。 
職員からは「忙しいときでも、話しかけられる隙がある人になってほしい」「チームリーダーが常に医師というわけではないので、コメディカル間でも情報共有して提案していくことも必要」などの意見が聞かれた。 
学生のみならず、職員にとっても日ごろの業務におけるチーム医療の再認識に役立ったようだ。