検証 全適 登米市立病院の選択(上)/経営効率/改善、現場に実感なし・・・ 河北新報 

検証 全適 登米市立病院の選択(上)/経営効率/改善、現場に実感なし2010.08.28 河北新報  

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 地方公営企業法の全部適用、略して「全適」。自治体病院の予算や人事の権限を首長から病院事業管理者に移して経営責任を明確にするとともに、現場の実情に応じて柔軟で機動的な運営ができる経営形態だ。 
医師不足で経営に苦しむ登米市立病院は2008年度、全適に移行した。形態を変えた効果はあったのか。歩みを振り返り検証する。(登米支局・柏葉竜) 

<新たな負債も> 

 「全適に移行して、何か変わったか」 

 6月、登米市内のホテルで開かれた有識者による「登米市立病院の経営形態のあり方懇話会」の初会合。座長の久道茂県対がん協会長が話を振ると、オブザーバーとして出席した市立米谷、豊里両病院の院長と登米診療所長は素っ気なく答えた。「変わっていない」 

 病院事業の全適移行は県内では大崎、仙台両市に続き3例目。病院事業管理者に権限が集まり、運営に独自色を出せるとみられていた。 

 その期待に反し、初会合で浮き彫りになったのは全適の効果を強調する市医療局と現場との温度差だった。医療局は「経営責任が明確になり、職員の経営改善に向けた意識が高まった」と話す。 

 懇話会の委員からも厳しい意見が相次いだ。 

 太田耕造大崎市民病院院長は「全適移行後2年でやれることはたくさんあった。 
実績を目に見える形で出さなければいけない」と語り、佐々木淳県保健福祉部次長は「次の経営形態に変える前に、改善すべき事項はまだある」と指摘した。 

 「実際の経営にも全適の効果はほとんど見られない」と言い切るのは、市議会地域医療確立調査特別委員会の沼倉利光委員長。 

 市は、運転資金の不足額を示す不良債務の07年度末残高約16億円を解消するため、08年度に公立病院特例債を発行し、出直しを図った。 

 それでも、08年度は医師の減少による医業収益落ち込みの影響で新たに約8億6000万円の不良債務が発生した。09年度末は約9億6000万円に増える見込みだ。 

 沼倉委員長は「経営改善の意識が本当に高まったのかどうかは疑問だ」と強調する。 

<権限縛る制約> 

 いいことずくめのように見える全適の体制にも課題が残る。病院事業管理者が持つ人事や予算の権限に、実際は大きな制約があるというのだ。 

 09年4月に就任した大橋章病院事業管理者(元県総務部次長)は7月の懇話会で実情を指摘した。 
「病院事業と市長部局の間で人事交流があるため、専門的な職員を育成しにくく、給与を独自に決められない。予算は市の一般会計からの繰り入れに頼っており、一定の枠でしか編成できない」 

 現状維持か、非公務員型の地方独立行政法人化などの新たな形態か。 
市は、懇話会が9月2日にまとめる意見を踏まえ、市立病院の今後の経営形態を決める。 

 「いま思い切ったことができなければ独法化しても同じことを繰り返す。全責任はおれが持つという気持ちで決断を下せば、光が見えてくる」 

 8月の懇話会。久道座長は、大橋事業管理者に対して叱咤(しった)するように言い放った。 

<登米市立病院>佐沼、米谷、豊里、よねやまの4病院と、登米、上沼、津山の3診療所で構成される。 
医師は合併で市が誕生した2005年度の45人から現在は38人に減少。医業費用に対する医業収益の割合を示す医業収支比率は05年度が93.9%で、09年度は87.9%の見込み。