亀田総合病院で医学生らが見学ツアー,チーム医療の実際に触れる



2010年8月11日 メディカルトリビューン] 
亀田総合病院で医学生らが見学ツアー,チーム医療の実際に触れる 

医師のキャリアパスを考える医学生の会 

 さまざまな先進的取り組みで注目を浴びている亀田総合病院(千葉県鴨川市)。昨年(2009年)8月には,国際的な医療認証機関であるJCI(Joint Commission International)からわが国初の認証を取得した。そんな同院の特徴の1つが,現在わが国で導入が叫ばれているチーム医療の充実だ。「医師のキャリアパスを考える医学生の会」(会長=慶應義塾大学4年生・松本紘太郎氏)は8月4日,医学生,看護学生らを対象とした同院の見学ツアーを実施。同院で働くスタッフとのディスカッションも行い,チーム医療の実際に触れるよい機会となったようだ。 

東大・慶應大をしのぐトレーニング設備に驚きの声 

 今回のツアーに参加したのは,医学生22人,看護学生8人,薬学生1人の計31人。参加者はまず,同院理事長の亀田隆明氏による講演を聞いた。同氏は「どんなつまらないと思うベーシックな技術でも,うまいに越したことはない。それを体得するためには,人よりたくさんこなすことだ。こうして手技がうまくなれば,最終的には患者からの信頼感につながる。自分が患者の立場になったときにどんな治療をしてもらいたいかを考えるべきだろう」とし,チーム医療の在り方については「チームリーダーに任せきりでは,いつまでたっても成長できない。自分がチームリーダーのつもりで考え,行動して欲しい」と述べた。 


 その後は,亀田総合病院の理念が詰まった病棟を見学。床の材質や色で患者,スタッフそれぞれの動線を分けたこと,ベッドになるソファやシャワールームといった同泊者のことを考えた設備,大規模な透析センターなどに,参加者から感嘆の声が上がっていた。また,高度な人体型シミュレーターや気管内挿管,腹腔鏡操作,中心静脈カテーテル刺入操作などが練習できるCSS(Clinical Skills & Simulation)センターでは,東京大学や慶應義塾大学の学生からも「これほどのトレーニング設備はない」との感想が聞こえてきた。 

チーム医療成功の秘訣は「尊敬し合うこと」 

 亀田総合病院の医師,看護師,コメディカルと参加者によるディスカッションでは,チーム医療の在り方を中心に,教育や病院の体制づくり,チーム医療内の役割分担などについて,多数の意見が交わされた。 

 同院では,診療科を超えた横の連携だけでなく,医師や看護師など職種を超えたコミュニケーションの確立が互いの信頼感を生み出し,それが良好なチーム医療を支えているようだ。これが他院で適用できるかについて,同院周産期母子医療センター長の鈴木真氏は「難しい部分もあるが,ここで学んだことを他院でも生かし,その輪を広げていって欲しい」と語った。 

 また,ある医学生からは「チーム医療を乱すのは医師ではないか」との質問があったが,同院東洋医学診療科部長の南澤潔氏は「医師と看護師は熟年夫婦の関係に似ている。看護師は医師をてのひらで転がすくらいがよいのかもしれない。コミュニケーションは言葉一つで変わる。プロ同士として尊敬し合うことが大切だろう」と回答した。 

 同院腎臓高血圧内科部長の小原まみ子氏は「私たちは完ぺきなわけではなく,日々新たな問題や治療法が出てきている状況で,常にそれを解決しようと努力し続けている。チーム医療はこうした問題に全員で当たることだが,個々の問題や環境などによって変化していくもの。それには,コミュニケーションや信頼関係が重要となる。今回は,学生とのディスカッションであらためてこのことを感じた。皆さんには信頼される人になって欲しい」と述べ,未来の医療従事者にエールを送った。 

参加者の声 
松本紘太郎さん(医師のキャリアパスを考える医学生の会会長,慶應義塾大学医学部4年) 

「学んだこととして最も大きかったのは,何をするにも患者を中心に物事を考えるという視点が医療者に共通していれば,何事もうまくいくのかなと感じたこと。そうすれば目標が一致し,チーム医療が動かしやすくなると思う。半面,経営者側にそうした意見がないと,いくら若い人が意識を持っても難しいとも感じた。今回のツアーによって,私を含め多くの学生が亀田にひかれたのではないか」 



野中沙織さん(帝京大学医学部2年) 

「学生が見学したくても抽選になっているなかで,小原先生をはじめ亀田の方々にたいへんなご尽力をいただいた。チーム医療は何だろうという話は大学などで聞くものの,現場の人に会う機会はなかなかない。今回はそうした方々とコミュニケーションを取れたことが収穫。また,医学生は自分たちの殻に閉じこもりがちだが,看護学生や薬学生らとともに参加したことで,交流を持てたことが大きかったと思う。ディスカッションの時間はもう少し多く取りたかった」 



若林大さん(慶應義塾大学医学部5年) 

「病院実習も行っていないため,大学以外の病院を見るよい機会となった。チーム医療という言葉はよく聞くが,実際に私の大学病院でもそんなことを感じる機会はなく,ここに来て少し感じることができたと思う。あいさつをきちんとすることやコミュニケーションをきちんと取ることなど,医療従事者としてというよりも人として重要なことを学んだ気がする。1人の人間として成長していきたいと考えるきっかけとなった」 



竹内麻里子さん(東京大学医学部5年) 

「亀田のキャッチフレーズで『Always Say YES!』というのがあるが,その意味をあまり理解していなかった。亀田ではそれぞれが責任を持って手を挙げ,仕事の領域が重なり合ってすき間をなくしていると聞いた。みんなが『YES!』と言っている状況ならば,手を挙げにくい性格の人でも『YES!』と言いやすい。そういう意味での『Always Say YES!』で,環境・風土づくりに注力していることがわかった」 



根木沙良子さん(慶應義塾大学医学部3年) 

「病院見学自体が初めてだったが,亀田の環境がよいことに驚いた。それと同時に,スタッフの考え方はそれぞれ違うものの,患者のためを思う亀田の信念が行き渡っていることを感じた。ディスカッションを通して皆さんが言っていたのは,“伝える”ことの重要さ。当たり前だけど,それができないから悪くなるというのがわかった。大学の授業では習えないことを学べたと思う」 



(小島 領平)