風紋=医療センター改革-何のための議論だったのか




風紋=医療センター改革-何のための議論だったのか(河村雅彦/浜松総局)2010.08.07 静岡新聞        

 一体、何のための改革議論だったのだろう。 
病院経営の立て直しのため、新しい運営体制で再出発を目指していた浜松市の公的病院「浜松医療センター」がすったもんだの末、現体制のまま運営を続けることになった。 
市側は「黒字化のめどがたった」とするが、浜松の地域医療はこれで本当に安心だろうか。

 「実態は破たん状態」「経営の失敗だ」と散々な批判を浴びたのが3年前の行革審(市行財政改革推進審議会)の公開審議。 
ここからトップ人事をはじめ、さまざまな改革が始まり、市側が柱として打ち出したのが、過去の債務を引き受ける代わりに運営を「地方独立行政法人(独法)」に移行させる計画だった。 

 市議の一人は「行革審の指摘は、病院や関係者に危機意識を植え付けるのに十分な効果があった。 
ただ、市側は独法をよく知らないまま、見切り発車してしまった」と指摘する。 
行革がスタート地点の独法化なのに、組織移行に莫大な費用がかかることが次々と明らかになったからだ。 

 残念に思うのは、行革審の顔色ばかりをうかがうあまり、改革の議論が“そろばん勘定”に終始していたことだ。 
行革審の公開審議では、コスト圧縮のため病床数の削減や公的な医療部門のための市の負担金カットの話も上がった。 
病院の2009年度決算では、入院患者の平均在院日数が減り、1日当たりの診療単価が上がった結果、過去最高の利益だったことが報告された。 
しかし、これらは利用者にとって歓迎すべきことだろうか。 

 浜松市は医療体制が比較的、充実しており、恵まれた環境にあると言える。 
医師会、民間病院の協力で夜間救急や救急医療体制も確立されている。医師不足などが叫ばれる中、今後はこうした病院と病院、病院とまちの診療所の連携を維持しながら、機能を集約し、いかに高めていくかが大切な課題となるだろう。 

 医療センターでは昨年、助産師が中心となって出産をサポートする「バースセンター」が開設するなど意欲的な取り組みもあったが、今回は病院がどのような役割を担い、特化していくべきなのか、地域医療全体を見渡す高い視点での議論が欠けていた気がした。 

公的医療機関だからこそ、小児科や産科、救急など不採算部門でも腰を据え、地域医療に積極的に貢献できることがある。 
税金の使い道に厳しい視線を送る行革審も、地域医療全体の向上、市民の安心・安全のためなら、目くじらを立てることはないと思うのだが。(浜松総局・河村雅彦)