医師不足への対策訴え 県議会 樋口氏(県立病院名誉院長)招き講演




医師不足への対策訴え 県議会 樋口氏(県立病院名誉院長)招き講演
                    (2010.08.05岩手日報)  
  

 岩手県議会は4日、県政調査会(工藤大輔会長)と4特別委員会を開き、専門家を招いた講演などを行った。 
県政調査会は、岩手県立病院名誉院長で日新堂副理事長の樋口紘氏(69)が「医師不足の地域医療はこう守れ―県議会議員のチカラ」と題して講演。 
医師不足と偏在の解決のため、医師の地方勤務義務化など国による対策の必要性を訴えた。

 樋口氏は医師不足について「絶対数の不足のほか、地域や診療科による偏在が大きいことが問題だ。 
医師の適正配置を行わず、大学の医局に委ねてきた厚生労働省の怠慢であり、国による医師配置の体制を確立すべきだ」と主張。 

 「医学部卒業までに1人当たり4千万~7千万円の税金が投入されており、30~40歳の医師に3年間の地方勤務を義務付ける必要がある。 
医師会は率先して医師の資質向上と偏在解決の行動を行うべきだ」と訴えた。 

 地方自治体に対しては「従来通り大学医局に医師派遣をお願いするだけでは打開できない。地域住民の声を国に届ける努力をすべきだ」と指摘。 

 県議には「地域住民と県とのパイプ役として住民を説得する役割を担う一方、国の制度改正へ向け、要望などを積極的に行ってほしい」と求めた。 



明日へのカルテ:第1部・医師不足解消の道/4 実働数把握が急務に(2010.08.05毎日新聞)  

 ◇診療科・地域間の偏在 

 「大学病院などにお願いしてはいるのですが、来てくれません。今はどこも外科医が少ないですから」。 
長野県立阿南病院(長野県阿南町)の温田信夫院長は力なく語った。 

 同病院の常勤外科医の定数は3人だが、昨年3月に唯一の外科医が転勤してゼロになった。 
虫垂炎の手術もできず、患者は30キロ以上離れた飯田市立病院に約1時間かけて行かなければならない。 

 外科医は減少が著しい。厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査によると、医療施設に従事し外科を主たる診療科とする医師は、08年が2万2002人で12年前から約1割減った。 
過重労働や訴訟リスクへの懸念などが原因だ。がんを中心に手術件数は増えており将来、手術に対応できなくなる恐れがある。 

 温田院長は「高齢の患者や家族にとって、(飯田市まで行くのは)負担が重い。 
外科医不在では地域医療も崩壊しかねない。外科医を増やす取り組みが必要だ」と訴える。

 外科など激務とされる科の医師不足を巡っては、医師が増えている眼科などとの「診療科間の偏在」も問題視されてきた。 
実際、眼科の医師数は1万2627人(08年)で、12年前より15%増えた。 
だが実は、眼科でも医師不足が深刻な地域が出始めている。 

 「白内障の手術を1年以上待ってもらう患者さんもいる」。秋田県大仙市の高橋久志眼科医院の高橋久志院長(57)は嘆く。 

 医師は高橋院長1人で、1日に診る患者は約200人。「通院回数を減らすため、1回の診療で2~3回分の薬を出している。 
そうでもしないと、とても回らない」と話す。 

 患者急増のきっかけは、近くの仙北組合総合病院で07年10月に常勤の眼科医がゼロになったことだった。 

岩手医科大から派遣されていたが、同大の医師不足で引き揚げられた。大仙市内で眼科の手術をする医療機関は2カ所だけ。 
高橋医院に通う同市の男性(75)は「2時間待たされることもあるが、先生の体も心配だ」と話す。 

 背景には、眼科医は都会への集中が特に激しいことがある。日本眼科学会によると、人口10万人当たりの眼科専門医数は、最多の東京(13・01人)と最少の青森(4・66人)で3倍近い差がある。 
秋田(5・72人)もワースト5位だ。また、眼科の病院勤務医は08年は4722人で、12年前(4936人)より減り、十分ではない。 

 さらに、眼科医は女性の割合が約4割に達し、診療科別で2番目に多いことも影響している。 
同学会常務理事の石橋達朗・九州大教授は「女性は出産や子育てのため第一線を退かなければならない場合もあり、眼科は医師数と実働者数の差が大きい」と指摘する。 

 厚労省の調査は、フルタイムで働く医師も、育児などのためパート勤務の医師も「1人」とカウントする。実働数を反映しているとはいえず、医師不足問題を巡る正確な基礎データがない状態だ。 

 石橋教授は「医師の適正な配置へ向け、国は地域や診療科ごとの実働の医師数を調べるべきだ」と訴える。