公立病院 医師取り合戦*大学派遣に頼らず独自ルートで*道内激化*退職者補充は綱渡り




公立病院 医師取り合戦*大学派遣に頼らず独自ルートで*道内激化*退職者補充は綱渡り
2010.07.24 北海道新聞朝       

 医師不足に悩む道内の公立病院で、大学などからの派遣に頼らず独自に医師を確保するケースが増え、病院間の医師争奪戦が激化している。 
2004年度に若手医師の研修病院が自由化されて以降、大学や道による派遣医師数が減っているためだ。 
病院や自治体の幹部は道内外で医師の勧誘を続けるが、確保した医師が退職すれば補充も独自で行う必要があり、多くの病院が綱渡りの状態だ。 

*院長人脈で奪取 

 市立稚内病院は4月、市立根室病院にいた透析専門の荒川政憲医師を呼び寄せた。 
泌尿器科に昨年度まで旭医大から派遣されていた常勤医2人のうち1人の派遣が打ち切られたためで、高木知敬院長が大学で同級生だった荒川医師に相談した。 

 市立稚内病院はこれまで、北大や旭医大から派遣された医師がほとんどで、独自に確保したのは今回が初めて。高木院長は「拠点病院でも派遣だけに頼っていられない時代になった」と話す。 

 一方、荒川医師を失った市立根室病院も、06年度から独自の医師確保に力を入れ、現在、16人の医師のうち10人を占める。 
ただ、「確保した医師が退職すると、補充も独自に行う必要があり、永遠に医師確保に走り続けることになる」(同病院事務局)との問題を抱える。 

*住民の不安続く 

 同病院では昨年9月、独自確保したただ一人の産婦人科医が退職。3月に埼玉で後任を見つけたものの、病院側の助産師や看護師不足に加え、勤務中の埼玉の病院でも医師が引き留めに遭い、7月の着任予定が延期に。住民の不安が続く。 

 公立病院に医師を派遣している北大、札医大、旭川医大が08年度、各地の病院に派遣した医師数は1456人で、06年度より50人減。 
これは04年度に医学部卒業後の研修先を自由に選べる新しい医師臨床研修制度が施行され、都市部の民間病院に研修医が流出、大学病院にとどまる研修医が減ったためだ。 
昨年4月の道の調査では、常勤医不足は民間病院も含め104病院で計336人だったが、本年度、道が医師確保対策事業で派遣した常勤医は39人にとどまる。このため各病院は、独自に医師を確保する傾向を強めている。 

 檜山管内奥尻町の新村卓実町長らは5月末、京都に向かい、関西で開業する医師と面談。町立国保病院に3人目の医師を招くためだ。 

*陳情「効果ない」 

 国保病院は07年度以降、大学や道からの派遣が途切れた。「毎年、派遣再開を陳情しているが効果が全くない」(新村町長)ため、昨秋、院長を道北の病院から呼び寄せた。担当者は「申し訳ないとは思うが他をかまっていられない」と話す。 

 道北の別の病院の院長は「独自確保した医師は大学に縛られていない分、いつ辞めるか分からず、綱渡りが続く。抜本的な医師確保策ではない」と指摘。 
ただ、新村町長は「問題はあっても独自策しか道はない。医者確保はそれだけ難しく、状況は悪化している」と話している。