瀬戸際の長野県大町市立大町総合病院 地域医療考える機会に



語ろう大町の未来(1)=瀬戸際の長野県大町市立大町総合病院 地域医療考える機会に 
2010.06.11 信濃毎日新聞 http://www.city.omachi.nagano.jp/hospital/ 
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平成22 年度の医師確保が不可能であった場合の対応について 
平成22 年までの医師確保に相当の確信を持っているが、その医師確保が困難な場合には医療収益の増収策は、亜急性期病床の導入と、療養病床の増床による約7,000 万円の増収にとどまる。その場合の次善の策として、(1)病床数の削減による病院機能の縮小、(2)病床削減に加えて、看護基準に7 対1 看護を導入し、積極的な病院経営の改善を目指す方法、の2 つが考えられるが、いずれにしても病床数の削減は大北医療圏に及ばす影響が極めて大きく、住民感情の反発は免れない。 



5月下旬、大町市立大町総合病院の新任医師歓迎会が市内で開かれた。 
「経営状態は過去最悪の見通し」「病院崩壊の瀬戸際。一人一人が院長のつもりで…」。新たな医師6人の着任を祝う席ながら、同病院事業管理者、赤羽賢浩さん(65)らのあいさつには強い危機感がにじんだ。 

 国の研修医制度の変更を引き金に、ここ数年、深刻な医師不足による自治体病院の経営破綻(はたん)が全国で相次ぐ。 
08年の銚子市立総合病院(千葉県)の例では市長の解職に発展、大きなニュースになった。 

 大町にとってもひとごとではない。大北地方北部の地域医療の中核として1999年に27人いた常勤医師は今年3月時点で19人。 
07年秋には内科医5人のうち2人が相次いで退職。 
診療制限に踏み切らざるを得ず、患者の流出と経営悪化に拍車をかけた。市は毎年度約6億円を病院会計に繰り入れているが赤字体質は改まらず、07年度からは3億円超の純損失が続いている。 

 ところが最近まで、市、病院、市民の危機感は薄かった。「つぶれっこない、病院はあって当然という意識」。 
消化器外科医の高木哲さん(42)の違和感は、昨年夏、さらなる退職で内科医が2人になる恐れがあると分かったことで振り切れた。 

 内科が機能しなければ他の診療科も立ちゆかない。 
自分の派遣元の大学からは引き揚げの打診もあった。 
赤羽さんらと秋から地域懇談会を開いて回り、赤裸々に事実を説明し訴えた。 
「私たちはこの地域に必要ありませんか」 

 最終的には村井知事が信大病院と直談判。 
4月からの医師確保のめどを立てたが、「信大だって医師確保はぎりぎり。 
知事に乗り出してもらう“禁じ手”はもう使えない」。赤羽さんの表情は険しい。 

 病棟を歩くと、所々に空いた病室やベッドが目につく。「一度ほかに流れた患者はなかなか戻ってきてくれない」と職員。診療事務システムの電子化への投資などもあり、09年度決算の赤字は4億数千万円に膨らむ見通しだ。 

 5月30日。「市立大町総合病院を守る会」の設立総会が市役所であった。高木さんらの問題提起でようやく実情を知った市民が動いた。 
地区の懇談会にも参加した市内の男性(57)は「『知るは力』だ。 
なぜこうなったのか、どうしたらいいのかを学び、医師らが働きやすくなるよう協力したい」と話した。 

 国の医療政策に加え、人口減少と高齢化が進む大町市で医療レベルを維持するのは並大抵ではない。 
大北医師会によると病院と連携して地域医療を支える開業医30人余の平均年齢は、昨年6月時点で61・8歳。新規開業が相次ぐ松本、安曇野方面と異なり、後継ぎが帰ってくる予定の医院も少ないという。 

 高木さんは重ねて問いかける。「将来どんな地域を望むのか、市民自ら考えたい。病院がなくなってからでは遅いんです」