行政法人山形県・酒田市病院機構』の再編事例



『地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構』の再編事例 

公立病院改革のモデル・・・総務省は改革ガイドラインが目指すべき最優秀事例として山形県・酒田市病院機構を「公立病院経営改善事例集」で推奨している。 
全国から 再編統合後 3年経過しても 視察者が後を断たない。http://www.soumu.go.jp/main_content/000051412.pdf 
の中の(P60~p66) 
視察に先立って 改革の原点を 振り返ることが有益である。近日中に公表される21年度決算数値は注目である。 

 第2回公立病院改革懇談会(総務省関係者ヒアリング)に当たって(改革の原点 紹介)
公立病院改革懇談会(第2回)平成19年8月29日(水)午後1時30分~3時30分総務省1階共用会議室2 

報告者  酒田市立酒田病院長 栗谷義樹 

=開設者の枠を超えた自治体病院再編と経営形態の移行について= 

1.再編統合、地方独法化に至る経緯 
(首長間合意に至るプロセス、地方独法選択の視点、障害をどうクリアしたかなど) 

2.医療提供体制の見直し(再編前後における異同) 

(1)自治体としての医療の質担保についての考え方 

(2)そのために必要な医療提供体制、規模のあり方 
=国が示す「ガイドライン」に欠けてはならない事項 

3.取組みの現状と今後のスケジュール 

4.今後クリアすべき点 
(自ら解決すべき課題、支援を要する課題など) 

再編・統合への取り組み H19.8.29 

<北庄内の医療環境> 

○庄内 
山形県西部、日本海に面し、北に鳥海山、東は出羽丘陵に囲まれた、平野部面積 2,405.11K㎡(神奈川県よりわずかに少ない)人口 313,174人(人口1.000人当たりで、出生率7.7人、死亡率11.2人と人口減少傾向) 
平成17年の合併により2市12町村が2市3町に再編されたが、行政、医療の中心は北庄内の酒田市、南庄内の鶴岡市の二眼レフ構造。 

○医療圏 
村山、最上、置賜、庄内の4つの二次医療圏の一つとして、二次医療はほぼ完結。ほぼ95%が地域内患者(北庄内)。 
公立病院 (一般病床に占める公立病院の比率が全国一、42.8%) 

一般病床 県立日本海病院(528床)、 
鶴岡市立荘内病院(520床)、 
酒田市立酒田病院(400床)、 
酒田市立八幡病院(46床) 
精神病床 県立鶴岡病院(350床) 

一般病床の充足率は、現行の地域保健医療計画では95%で、161床不足している。 
しかし、2008年から始まる計画での新たな基準病床数算定方式では、100床程度過剰になるといわれている。 

○ 疾病の特徴 
山形県は全国平均と比較して、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎の受療率、死亡率が高い。 
とりわけ、庄内は悪性新生物で受療率、死亡率ともに県内でもトップ。 

◎市立酒田病院 昭和22年開設 
一般病床 400床 
診療科目 15科 
看護基準 入院基本料2 Ⅰ群(2.5:1看護配置、10:1看護補助) 
一般病棟入院基本料 10:1入院基本料に移行(H18.4) 
・看護補助は持ち出しで配置(臨時看護師は正看23名、准看16名、看護助手44名、内日額職員は7名、他はパート雇用) 1 

1. 18年度決算状況 

総収益 6,252,518千円 
総費用 6,067,763千円 
純利益 184,755千円(6期連続黒字確保) 

平成17年11月1日に合併によって引継ぎ資本金等の処理を行った結果、現在の未処分利益は236,641千円。 
内部留保金は約49億1、500万円である。 
病床利用率 77.7% 
平均在院日数 16.1日 
入院単価 35,271円 
外来単価 7,590円 
一般会計繰入金(3条)580,985千円 
一般会計繰入金(4条)151,789千円 
合計 732,774千円(基準と同額) 

経常収支比率 103.1% 
医業収支比率 101.9% 
医業収益に対する給与費比率 53.2% 

2.市立酒田病院経営の経過 

1)平成4年までは病床利用率が100%を超える状況にあり、地域でも病床数が不足の状況にあった。(しかし病院の収益はそれ程伸びていなかった) 

・病床利用率が高く見えるが、平均在院日数が長く収益に結びついていなかった。 

・医局の管理が悪く、医師の言うままになっていた面があり、その結果、医療機器、薬品、医薬材料等の使用効率が悪かった。 

・診療科の収益バランスが悪い。(収入割合で脳神経外科がトップ) 
・専門職員の集団によるバラバラの認識 

2)平成5年、2Kmほど離れたところに県立日本海病院が開設された。経営収支が赤字に転落。 

・建物が老朽化(築37年経過)に伴い、改築構想(平成6年第一次マスタープラン 500床計画)が浮上(西棟:昭和44年建設、東棟:昭和63年建設) 
・患者給食等アウトソーシング実施。組合等の反対運動あり。(行政職〔二〕の受け皿作り) 

3)平成10年、前院長の定年退職により院長が交代 

・診療部長からの抜擢人事で現院長 

・医局管理の徹底、職員への病院情報公開の徹底。 
院内LAN構築(月別患者数、経営収支、患者等からのクレーム、議会質問、答弁など)。
職員の意識改革の徹底。組織ベクトルを強化。 

・使用薬品種類の削減、診療材料種類の削減と不良在庫の撤廃。(医師、看護師を巻き込んだ薬事委員会、診療材料委員会で徹底) 

・不要不急の時間外の削減徹底(看護部門、放射線部門等)特勤手当の見直し。 

・地区医師会との連携強化(ネットによる患者紹介、逆紹介,放射線等の検査依頼と回答による患者の待ち時間短縮と高額医療機器の稼動効率のアップ) 

・ホームページの公開(病院では東北地方では早期) 

・委託企業の職員への協力要請 

・各種委員会の設立(毎週の運営委員会、月1回の診療部代表者会議をはじめ必置、準必置、任意等を含め38委員会を設置) 

・平成15年より診療科別原価計算の構築(毎月計算、酒田方式・実績を各科配分) 

4)効果 

・医師:コスト意識の醸成 
・看護師:接遇意識の変化 
・病院の経営改善には特効薬はない。組織として当たり前のことを当たり前にやれる環境を作ること 
・そのためには、病院長の強いリーダーシップが肝要(医師に明確な病院経営の理念を理解してもらう)。 
医師は知的レベルの高い職能集団、一匹狼のところがある 
・職員に経営意識をつけさせる(医療はサービス業、コスト意識、チームワーク)ライセンスで仕事をする集団だから、他部門には関心が薄いところがあり、職員と患者の絶対権力関係の意識を払拭 

・地域の医療関係機関との連携 患者が病院にアプローチするルートを複線化する。 
医師会からの紹介、行政で実施する検診業務の連携強化 
・病院長の仕事は医師の管理と経営管理、医療関係機関との連携の三本柱で成り立つ。 
それをサポートする事務部長、看護部長の役割は大きい 

5)平成13年度決算より黒字に転換(6期連続) 
施設の老朽化から改築の機運が高まり、一般会計に改築基金を創設。(18年度末 11億4百万円) 


<再編への取り組み> 

平成17年3月、老朽化による改築のマスタープランを作成し、総務省に起債等について相談。 
同省等のアドバイスもあり、有識者による外部検討委員会を同年6月発足し、各委員から意見をいただき報告(同10月)。 
昨今の厳しい医療環境から県立日本海病院との競合が避けられないことから、日本海病院と経営統合して、一般型地方独立行政法人化すべきとの報告書が出された。 



◎ 県立日本海病院の状況(平成5年開設 528床 25科 10:1) 
そもそも開設要望は、庄内全体の要望であつたが、主たる機能は救命救急病院であった。 
しかし、開設当時は100万人に1個所ということで、単独設置が難しかった。 
結果、総合病院として開設され、市立酒田病院と競合が避けられない状況が続いた。 

開設以後、毎年赤字決算が続き、累積欠損金が109億3300万円となった(H18末)。 

県立病院の全体の累積欠損金は287億1800万円だから全体の38%を占めている(H18末)。 
医師会との連携を働きかけたときも、県病全体の議論になり、1病院だけが実施できなかった。 
平成15年度から全適になっているが、病院局、健康福祉部との調整が残っている。 
17年度に病院長が交代をして収益改善が見られるが、累積欠損金等の負担が大きい。 


◎ 経営統合への新たな展開 

市は、外部検討委員会の報告に沿い、経営統合を県に申し入れた(H17.12)。 
山形県は県立病院の経営改善策を外部監査法人に委託(H17.11)。 
(途中経過がH18.5.21付け「社会保険旬報」に掲載される) 
平成18年8月に県の報告書が提出され、9月13日に知事、酒田市長の間で両病院は統合再編することが合意された。(9.14両者記者会見) 

11月14日に第一回運営委員会を開催し、再編に向けた協議会を設立。 
再編の具体的なあり方は(病床数、施設整備、経営形態等)は協議会で検討。具体的な協議を三部会等で検討。 

平成19年3月に再編基本構想をまとめる。 
同2月には経営形態の有り方を検討する有識者委員会を設置し、協議。 
5月に一般型地方独立行政法人が最も望ましい旨の報告があり、7月に協議会で決定。9月にそれぞれの議会での定款等の議決が予定されている。 

◎ 統合決断の背景 
平成20年に予定されている新地域保健医療計画では100床程度病床過剰とされる(従来の計画では161床不足とされていたが、そのことが市病改築の原動力になっていた)。 
しかし、診療報酬改定を含め、病院を高機能化していかないと、将来的にも黒字経営は厳しくなることが予想された。(看護基準を上げる、平均在院日数を短縮する、病床利用率を上げるとなると)将来はさらに病床過剰が想定される。 

一方、市の現施設では老朽化が進み、施設の状況から病床利用率を上げるには困難。 
県立日本海病院には多額の累積欠損金があり、単独では再生不可能との評価もあった。 
当時はそれでも県立病院を廃止する議論はなかったが、むしろ、県では両病院機能の分化を希望していた。 
つまり、急性期を県立で、慢性期を市立でというスタンス。 
しかし、市病が単独改築した場合、200~250床では急性期としても相当の経営努力をしないと黒字は難しく、まして慢性期では困難との判断。 

現時点では市立病院は黒字であるが、規模縮小しても二つの病院が存続していくとは考えにくく、結果将来、競合状態が続き、北庄内から急性期の病院が一つもなくなるという懸念もあった。 

地区医師会でも両病院の統合を希望していた。 
医師を派遣している大学での地元定着率が低く、医師不足が深刻になり、毎日の外来が持続できない診療科が発生している。 
毎日診療している科でも、一人勤務の診療科が増えている。 
勤務医の労働条件が厳しくなってきており、病院への定着が懸念される等多くの懸案があった。 

◎ 統合再編の課題 
・統合時期 (現在、H20年4月を想定) 
・経営形態の模索(県のH18年8月報告は、設置者を一部事務組合、経営を独立行政法人と想定する2段階論もあった) 

・結果、複数の団体の出資による一般型地方独立行政法人(全国初) 
・過大な累積欠損金等の処理と健全な病院経営 
・職員の雇用を守るための方策 
・職員組合の問題(自治労と医労連) 

・地域の総医療資源の活用(民間病院との機能連携、介護との連携、福祉との連携)自治体病院だけでは地域の医療水準を支えるのは困難になるだろう。 
それぞれの存在を認めながら「独立行政法人機構」が必要になるだろう(三重県桑名市が民間病院との独法化を方針決定)。 

・厳しい医療を取り巻く環境への対応、診療報酬改定への対応。在院日数短縮化 DPC導入等への対応 
・医師確保対策 
・持続可能な北庄内の地域医療がどうあるべきか 
・高度救急医療体制の整備 (新型救命救急センター) 
・三大疾病(ガン、心臓病、脳血管)への対応機能の充実 
・ICU HCU CCU SCU等の機能の充実 
・消化器病センターの設置 
・ガン拠点病院としての機能充実・外来ガン化学療法センターの設置 
現在、こういった課題への対応も含めて、議論が精力的に進み最後の詰めの段階に入っている。 
以上