診療報酬、募る不満 野党推薦、医師に心配/佐賀県



(クニのゆくえ 2010参院選)診療報酬、募る不満 野党推薦、医師に心配/佐賀県 
2010.06.03朝日新聞 )  
  
5月27日夜、県医師会メディカルセンター。県医師会の政治団体「県医師連盟」(池田秀夫委員長)の執行委員53人の前で、参院選佐賀選挙区に立候補予定の民主党公認、甲木美知子氏(38)と自民党公認、福岡資麿氏(37)が医療政策について語った。 

 出席者によると、県医師会長でもある池田委員長が、医療費の恒久的な財源確保について質問すると、甲木氏は「(予算の)無駄をなくす」、福岡氏は「消費税」を挙げた。4月に国の診療報酬=キーワード=改定で診療所の再診料が引き下げられたが、福岡氏は診療所の重要性も訴えたという。 

 両氏の退出後、決を採ると委員全員が福岡氏に挙手し、福岡氏の推薦が決まった。池田委員長は「医療政策について福岡氏の方が精通していた」としたうえで、「(再診料の引き下げにより)診療所にはまったくプラスになっていないのが現状で、医療費の大きな底上げが必要。そういうことも総合的に考えての判断だと思う」と述べた。 

 県医師連盟の会員は約750人。かつては医師一人で数百票の集票力があると言われた。6年前の参院選で県医師連盟が応援した比例区候補の医師は、全国の比例区候補128人の中で、4番目に多い約4500票を県内で得た。 

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 財政再建を目指した自民党の小泉政権は社会保障費の抑制を進め、2年に一度見直される診療報酬は02年度以降、引き下げが続いた。 

 一方、「医療崩壊の解消」を掲げる鳩山政権は今年4月、10年ぶりに診療報酬を引き上げた。ただ、再診料は勤務医の待遇を改善させる目的で、病院は90円引き上げ、診療所(19床以下)は20円引き下げて690円に統一され、診療所が割を食った格好だ。 

 県中部にある整形外科医院には、一日百数十人の患者が訪れる。20円の再診料引き下げで年間数十万円の減収になる。「小さな診療所は経営が厳しくなるだろう。地域の診療所が閉鎖されれば患者が困ることになる」と指摘する。 

 佐賀大医学部付属病院の元院長で、「県立病院好生館」の十時忠秀理事長は「病院の経営は厳しく、今回の改定で医師の待遇がよくなるか分からない」と話す。同病院も06年度から3年間、赤字決算が続いている。 

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 4月、日本医師会の会長に民主党との太いパイプを持つ原中勝征氏が選ばれた。「親民主」路線を掲げる原中氏が委員長を務める日本医師連盟は早速、参院選比例区で自民現職の推薦を撤回。民主党から立候補予定の新顔を推薦することを決めた。 

 ただ、各都道府県の医師連盟は、選挙区での対応が分かれている。大分県は、民主現職を推薦することを決定。一方、静岡県は自民新顔の推薦を決めている。 

 佐賀県医師連盟はこれまで、政権与党だった自民党を支援してきた。池田委員長は今後、与野党とは等距離で臨むことを強調する。しかし、次回の診療報酬改定は2年後。民主党政権が続く可能性が高いことから、開業医の間では全員一致での福岡氏推薦について不安の声も漏れる。 

 佐賀市内の開業医は「医療政策を決めるのは政権与党。民主の候補を応援しないと、医師会の意見や主張は通りにくくなる。自民党の候補を推薦して本当に大丈夫なのか」と心配している。