全国自治体病院協議会 邉見公雄会長「日本医師会は、医師の代表の団体と言いながら、これまで全体に目配りをしなさすぎた。




全国自治体病院協議会 邉見公雄会長「日本医師会は、医師の代表の団体と言いながら、これまで全体に目配りをしなさすぎた。 家族3~4人でやっているような診療所を重視するあまり、『日本内科無床診療所会』的なところが強かった。日本の医療崩壊に戦犯がいるとしたら、主犯は財務省と厚生労働省だが、日本医師会も共犯それから我々病院団体、学会も間抜けだった。」 
流石 硬骨漢 小山田 慧氏(全国自治体病院協議会名誉会長)の後継者!良くぞ言ってくださった・・・ 
「間抜けだった多くの公立病院は 選択・と集中 再編ネットワークに踏み込まず 既得権益に いまだしがみついている事」を直視 して 強力な指導力を必ず発揮してくださるであろう 
  
    

民主党政権への視線 医療変革へ 「中医協改革」も歓迎―― インタビュー 全国自治体病院協議会 邉見公雄会長 
2010.01.01 薬事ニュース  
  
県や市町村が設置、運営する「自治体病院」。 
住民にとって身近な医療機関であることはもちろん、救急医療や災害時の支援など、地域医療のセーフティネットを担ってきた。 
しかし、前政権の医療費抑制政策、医師不足に加え、市の財政難などにより、経営破たんに追い込まれる自治体病院が全国で相次いでいるのが現状だ。 
全国自治体病院協議会の会長であり、中央社会保険医療協議会(中医協)委員でもある邉見公雄氏に、新政権の医療政策や医療再建への課題についてうかがった。 

中医協人事「おかしなことではない」 
――9月16日に発足した新政権の医療政策について、どのような見解をお持ちか。 
  
マニフェストに書いてあることは、随分よいことが書いてある。ただ、どんどん尻すぼみになっていると感じる。 
やはり財源など、現実の厳しさがわかってきたのだろうか。 
小学生の子どもが「将来パイロットになる」と言っているのと変わらなかったのではと、最近思っている。 

――残念に感じていると。 
 まだわからない。 
60年間、前政権が政治を担ってきた。民主党にとっては初めての政権であるし、生まれたばかりで、まだ立ってもいない状態だから、仕方がないとも言える。 
予算編成と通常国会を一度乗り切ったら、余裕が出てくるのかもしれない。 
今は何もわからないで、五里霧中のまま走っているのだろう。 

――新政権は、政務三役会議や事業仕分けなど、独自のやり方で政策を決めようとしているが。
 意気込みはわかる。 
民主党による政権交代は、明治維新と対比されることもあるが、敗軍にも有能な人材はたくさんいる。 
それを全て排除するのはどうかとは思うが。 

――それは日本医師会の執行部が外された中医協人事についても同様に考えているか。 
 中医協人事については、私はそれほどおかしなことではないと考えている。 
足立信也政務官は、中医協の総会ではっきりと述べた。医療の現状をわかっている人物を選んだと。 
地域医療が大事だということで、駒込(日本医師会の所在地)からは選ばず、都道府県の都市部から1名、地方から1名を選んだ。 
病院から3名、診療所から2名という比率は、病院に対する手当てが喫緊だからであり、大学の医療も大切ということで大学病院からも1名を選んでいる。これは理屈が通っており、むしろ今までのほうが不思議であった気がする。 
 新しいメンバーとなってからの議論も、何も困っていない。 
まあ嘉山先生(嘉山孝正委員・山形大医学部長)が、伊達政宗のような刺激的な発言をするが、それで審議は活性化するし、マスコミの露出も増える。 
ある意味、今まで我々診療側がどれだけ紳士的であったか、支払側もわかったのではないか。 

――その中医協だが、2010年度の診療報酬改定が終わった後、法改正を伴うような改革を行う考えが民主党政権にあるようだが。 
 それもいいと思っている。実は今回の政権交代で、中医協はなくなるのではないかと思っていた。 
今の中医協では、大掛かりなことはできない。 
病院団体は、中医協に遅れて入った委員であったため、私が中医協委員になったときは、碁で言ったらすでに終盤で、碁盤は白と黒で埋められており、打つところがない。 
「この黒を白に変えてはどうか」と言っても、「それは何年改定でこういう経緯で白になっているから、これを白にするにはこっちの白を黒にしなければならない」などと必ず取引きとなる。「これでは腹が立つから碁盤をひっくり返して新しい碁を打ちたい」というのが私の考えだ。 
 しかし、気をつけなければならないのは、新しい碁を打つとき、ルールが変わってしまうことがあることだ。診療報酬に戻して言えば、たとえば『1点7円』などとなってしまうことが怖い。新しい審議会ができ、それが財政制度等審議会のような財務省主導となり、「1点7円にする」と言われたら、3割カットと同じだ。 

――仮に中医協的な役割を果たす新しい検討チームができ、そこに病院団体も入って、新しい碁を始めることができるとしたらどうか。 
 それも悪いことではないと思う。 
要は何を目的に、どういう哲学をもって日本の医療を進めていくのか。 
患者に良質で安全な医療を提供し、効率的で無駄が少ないやり方を検討する場は、どのような政権になっても必要だろう。しかし、現場の人が中心になるべきだ。 

医療崩壊は「日医も共犯」 
――全国自治体病院協議会会長として、病院側から見た医療再生への課題は何であろうか。 
 私は、日本の医療は全治10年と思っている。これは慢性疾患であり、生活習慣病みたいなもの。政治と政策が招いたことだから、政策習慣病といったところか。診療報酬は、2002年度以降引き下げが続き、累計で7・7%下がった。これを取り戻すこと。 
そして、設備投資や人員を増やすためには、10%くらい上げないと無理だろう。 
 イギリスでは、サッチャー首相の政策によってイギリス経済を復活させたが、『ゆりかごから墓場まで』という世界に冠たる社会保障はズタズタとなった。 
急性期病院では入院3ヵ月待ち、手術3年待ちという状態になったわけだ。 
ブレア首相の政策により、10年かけてイギリスの医療費はGDP比7%から10%まで戻ったが、まだ十分とは言えない。 
日本医療は全治10年と言ったが、崩壊の状況がイギリスと同じところまで来ていると感じるからだ。 
この状況から脱却するには、病院、診療所とか、メリハリをつけるなどと言わず、まずは一遍に診療報酬を上げる。 
そして、どうにか生き延びたところで入院医療、救急医療、チーム医療、高度先進医療などにメリハリをつければいい。これらは日本医師会が見逃してきたところだ。 

――日本医師会が見逃してきた、とは。 
 日本医師会は、医師の代表の団体と言いながら、これまで全体に目配りをしなさすぎた。 
家族3~4人でやっているような診療所を重視するあまり、『日本内科無床診療所会』的なところが強かった。日本の医療崩壊に戦犯がいるとしたら、主犯は財務省と厚生労働省だが、日本医師会も共犯だと思う。 
それから我々病院団体、学会も間抜けだった。 
そしてもう一つ、国民も不見識であろう。 
ドクターバッシング、ホスピタルバッシングを嬉々として受け入れ、三流芸人の学芸会みたいなテレビにうつつをぬかしている。 
自分たちの生活がまったくわかっていない。 

――邉見先生は、審議会などでチーム医療や地域連携に言及することが多いが、そのビジョンを聞かせてほしい。 
 まず、開かれた病院づくりが重要だ。 
患者、地域住民に愛される医療機関でないといけない。公立であろうが、私立であろうが、まず患者参加が重要だろう。 
 院内の体制では『多業種協働』だ。 
患者のためには、おせっかいを焼こうという気持ちが大事。「 
私は看護師だから、これはドクターに任せます」というような、「私はここしか守らない」という野球型のチームはダメだろう。ディフェンダーでもゴールを狙う、フォワードでも守備に参加するサッカーみたいなチームが、チーム医療には求められるだろう。 

――薬剤、薬価に対しては、どのような考えをお持ちか。 
 改定の度に薬価が下がっていくのは、確かにおかしいような気もする。 
しかし、「よく売れるものは安くなる」という観点からいえば、市場原理であるとも言える。 
どちらにしても、製薬業界が、未承認薬やオーファンドラッグを作らないというのは、私たちが救急車を断るのと同じだと思う 
。製薬業としての本来の使命を果たされていないと、医療界に身を置く者としてはそう考える。 

――今後の民主党政権に望むことは何か。 
 やはり、マニフェストに書いてあることを最低限実行してほしい。 
国民のほとんどはマニフェストを信じた。 
だから、先の総選挙では308議席も獲得したのだ。 
前政権与党の自民党は不言不実行、ある意味正直だった。 
2200億円の医療費抑制も、実質は守らないなどと言いながら、一度もきちんと「止めます」とは言わなかった。あれは節度ある態度だったかもわからない 
。民主党は、口約束的にきれいごとを並べて国民を欺いた、などということにならないようにしてほしいものだ。 



民主党政権への視線 「中医協人事見直し」の意味 
2010.01.01 薬事ニュース   
  

 民主党政権の発足からほぼ4ヵ月が過ぎた。 
「社会保障費2200億円枠の撤廃」「総医療費対GDP比のOECD諸国水準への引上げ」そしてずばり「診療報酬の引上げ」を謳った新政権への医療界の期待は大きかった。しかし、蓋を開けてみれば、医療をめぐる政権運営は迷走に迷走を重ねた。 
すべての始まりは、中医協人事見直し騒動だ。 
新政権に「振り回された」と感じる医療関係者も少なくないこの4ヵ月の端緒となった中医協委員見直し騒動とはなんだったのか、いま一度検証したい。 

■政治主導の象徴「政務三役会議」 
 鳩山内閣発足と同時に始動した「政務三役会議」。 
長妻厚労相をトップに、副大臣の細川律夫衆議院議員、長浜博行参議院議員、それに大臣政務官の山井和則衆議院議員と足立信也参議院議員の5名の協議により、厚労行政の針路を決定するという触れ込みだった。 
 「チーム長妻」を自称する5人のメンバーのなかで、医療政策面でのカギを握るのは足立信也政務官 
。副大臣の両名は、細川副大臣が党「次の内閣」のネクスト法務大臣、長浜副大臣がネクスト国土交通大臣を務めるなど、どちらかといえば畑違い。 
また、山井政務官は、党では年金調査会「消えた年金」担当主査、医療介護改革チーム座長代理などを歴任。「次の内閣」でも厚生労働副大臣を務めるなど、厚労行政との縁も深いが、野党時代から「ミスター年金」長妻大臣の片腕として主に年金分野で手腕を振るい、政務官としても雇用、年金、福祉、介護を担当する。 
  
対して足立政務官は文字通り医療分野のエキスパート。筑波大学卒業後、医師となり、筑波大学付属病院や国立霞ヶ浦病院消化器科医長等を歴任。 
04年7月の参議院選挙で初当選後も党内で副幹事長、政策調査副会長を務める傍ら、同党の医療分野での政権公約と位置づけられる「民主党医療政策」の作成に当たっては取りまとめ役をこなした。 
すなわち、チーム長妻のメンバーでもっとも医療分野に精通した人物であり、医療政策を主導する人物ということになる。 
 その足立政務官の口から「中医協の委員構成の見直し」とした発言が飛び出したのは9月28日の三役会議終了後会見のこと。 
足立政務官は「長妻大臣から、現在の委員の評価と変更になった場合の影響などを調査してほしいといわれた」として、中医協の人員構成の素案作成の指示を受けたことを明かすとともに、10月1日に委員の任期満了が迫っていることから「タイミング的に7日に開催予定の総会に間に合わせる必要がある」などと述べたのだ。ここから、様々な憶測が飛び交った。 

■根回し一切なし 
 10月1日に任期満了を迎えたのは診療側委員6名と支払側委員2名。 
現在の中医協の委員構成は診療、支払がともに委員7名、公益委員が6名だから、診療側は日本歯科医師会代表の1人を除いて全員が任期満了を迎える。 
一部全国紙は、竹嶋康弘副会長、中川俊男常任理事、藤原淳常任理事の3名の代表を送り込む日本医師会の「委員枠」をひとつ削って、その分を「勤務医の団体関係者に振り替える方針を長妻厚労相が固めた」と報じた。 
 しかし、当の病院代表委員である西澤寛俊・全日本病院協会会長は、9月30日に行われた四病院団体協議会の会見で「(中医協への委員派遣の要請などは)なにも聞いていないし、こちらから働きかけるつもりもない。 
静観する」とコメント。 
一方、削減を報じられた日医の中川常任理事も同日の会見で、「日医は日本の医療関係者を代表する唯一の団体。 
正式な情報がきていないのでコメントは差し控えたいが、きちんとした考え方と十分な理解に基づき、委員の新任、再任をしてもらいたい」と述べていた。 
さらに驚くべきことに、9月30日の時点で保険局も「なにも指示は受けていない」(中医協関係者)ということ。 
要するに会見での足立政務官の発言は、当事者への根回しなしに打ち上げられた、文字通り「政治主導」のアドバルーンだったわけだ。 
日医の中川常任理事が「政権交代がいかに大変なことか、日増しに感じている」と困惑した表情で洩らしていたのが印象的だった。 

■「現場に近いブレーン」の構想 
 さて、民主党はもともと医療政策に「中医協の運営等の改革」を掲げ、また2月には前田俊英委員の再任案を否認した経緯もあるなど、現行の診療報酬決定プロセスを問題視していたことは事実だが、足立政務官と同じく厚生労働委員会に所属するある参議院議員は鳩山内閣発足の直前、「(法改正等を伴う中医協改革は)次の次の改定までの中期的課題」と語り、目前に迫った10年度改定に関しては現行のプロセスを踏襲する可能性を示唆していた。 
ただ同時に、次のような構想も明らかにしていた。 
いわく、「政府の審議会に入っている役所のブレーンではなく、より現場に近い方をブレーンとして迎え、現場の声をスピーディーに反映させたい」。 
そして結果的には、この考え方が中医協人事にそのまま反映されることになった。 
 10月26日に長妻昭厚労相が記者会見で発表した中医協委員は、日医役員3氏の後任に、安達秀樹・京都府医師会副会長、鈴木邦彦・茨城県医師会理事、嘉山孝正・山形大学医学部長の3氏を充てるというものだった。 
長妻厚労相は「これまでは日医の役員から3名を選出していたが、病院に対する手当が喫緊の課題であることに鑑み、従来の(日医役員3対病院代表2の)比率を変更し病院関係者を3名とした」と説明。 
全体として「都市部と地方のバランス」や「地域医療代表と病院代表」など「幅広い観点から配慮した結果」と委員選出の理由を解説するとともに「日医外し」との指摘に関しては「(医師委員の)5名全員が医師会の会員」であることを挙げて否定し、「選挙云々も関係ない」とした。 

■すべては選挙のために 
 結局のところ、長妻厚労相の説得力に欠ける説明が浮き彫りにするのは、「自民党の有力な支持団体だから外した」という政権与党の論理で、要するに今夏の参院選を睨んだ“踏み絵”だったわけだ。 
当初は「懲罰人事だ」と反発した日医も、現在では「象徴的に外さざるを得なかったのだろう」(中川俊男常任理事)と政権交代の重みを受け止めているようだ。 
 しかし、民主党にとって誤算だったのは、「国民目線での医療再建」を期待されて任命した新委員が、期待通りの働きをしたがゆえに、今度は支払側の態度を硬化させてしまったことだろう。08年改定で2200億円の一部肩代わりという煮え湯を飲まされ、今度は協会けんぽの財政負担肩代わりまで突きつけられている保険者団体にしてみれば、患者負担増に直結する診療報酬引上げを認めることは、すなわち「診療側=正義」という図式を甘受することに他ならなかった。 
支払側にとっての「正義」は「患者負担増回避」であり、こうして中医協は互いが正義を主張したまま身動きが取れなくなってしまった。言い換えるならば、民主党政権が、「根回し」や「妥協」といった旧弊を否定し、「正論」で突っ走る委員を中医協に送り込んだ瞬間から、結末は見えていたともいえるわけだ。 
  
意見書取りまとめを断念した直後、ある診療側委員は「これは中医協の役割放棄だ」と吐き捨てた。 
が、診療側と支払側による「労使折衝」の場としての中医協の機能は、そもそもの始めから、民主党政権の手によって破壊されていたのである。 
果たして民主党は、いわば“自作自演”ともいえるこの結果を受け、これ幸いとばかり「中医協解体」を推し進めるのか、興味は尽きない。