病院建設コストと公立病院経営



病院建設コストと公立病院経営(上) 
~町立三春病院の経験から~ 

北海道大学大学院公共政策学研究センター研究員 
(前福島県三春町保健福祉課長)・遠藤誠作 
公営企業 2010.4中小公営企業経営講座 



1.コスト縮減のための改築手法検討の必要性 

地域医療が崩壊の危機に瀕している。 
特に深刻なのは地方の公立病院であろう。 
経営状況を民間病院と比較すると、人件費が割高で病床利用率の低さが目立つ。 
また、建設に民間病院の2~3倍のお金をかけているともいわれる。 
民間病院が資金調達する場合は、投資は年間医業収入の範囲内というから、1床あたり1千万円以下でつくることになる。 
一方、公立病院は、もともと建築単価が民間の倍以上と高く、必要性に乏しい吹き抜けなど無駄で豪華な施設をつくることで、コストが嵩上げされる。 
以上のような背景から、公立病院の経営が破綻する理由として、過大な設備投資に起因する高資本費と高額の人件費負担をあげる人が多い。 
建設費が大きければそれに比例してランニングコストも増えるので、医業収益から病院建設のための企業債を償還することが困難になる。その結果、病院の運営資金がショートして深刻な経営危機を引きおこす。 
過剰な投資をして病院財政を硬直化させると、コスト削減の締め付けが必要以上に厳しくなって医師の処遇改善ができず、大量退職を招き、経営が悪化するという悪循環に陥る。 
たとえば、F県北部の公立F総合病院の場合、平成13年度までは毎年数億円の黒字を計上し健全経営を維持していたが、13年度から始まった病院改築で多額の企業債を発行したことにより、翌年度以降は赤字に転落、17年度には11億4千万円の純損失を計上し経営が急速に悪化した。 
当時の新聞は「企業債76億円が経営を圧迫」と書き、その理由に診療報酬改定と医師不足を上げたが、実際は、資本費負担も堪(こた)えたのだと思う。 
その結果、4年間に常勤医師10名が退職、1人辞めるごとに残されたスタッフの勤務が厳しさを増し、また退職者を出すという悪循環に陥った。 
前は良かったのに病院が新しくなったら経営が悪くなったとはよく聞く話である。 
そこで、本町の町立病院立ち上げを例に病院建設コストと公立病院経営の関係について考えてみよう。 

2.病院改築の概要 

本病院は中核市郡山市の東隣に位置する人口1万9千人の旧秋田氏5万石の城下町、三春町にある。 
ここに昭和26年に設置された県立病院があったが、平成19年3月31日、福島県の行財政改革により廃止された。町はその機能を引き継いで翌日、町立三春病院として開院、指定管理者により運営している。 
また、県との移譲協定による支援を受け、敷地内に新病院を建設した。総事業費は19億円、うち病院の建設に約11億円を充てた(表1)。 

本院には次のような特徴がある。 

(1) 病院の地元である三春町は、同病院が果たしてきた地域医療の機能を守るため、県から移譲を受け公設民営方式(指定管理者)により運営、町立病院を核にして健康のまちづくり行政を進めている。 

(2) 福島県は、地元自治体による病院立上げを支援するため、 
① 病院資産の無償譲渡 
② 立上げ時の初期投資費用19億円の財政支援、及びその他必要な支援を行った。 

(3) 三春町は、指定管理者の選定にあたり、福島県中通り地方の財団法人規模の病院8法人を対象に指名公募した。 
応募条件は、 
① 指定管理者による必要医師の確保 
② 診療科目の充実 
③ 独立採算経営(町は赤字補てんはできない) 
④ 将来の更新財源確保のため減価償却費の負担を求める、の4つ。 

(4) 新病院は、建設費負担が経営を圧迫しないよう、民間の建築手法である設計施工一括発注方式を取り入れ、民間並みの低コストで建設した。 

以上のように町は、華美で高コストの病院建設が経営を圧迫するという先例に学び、病院建設の限界コストを坪当たり60万円として11億円の予定工事費を設定した。 

病院の建設コストを比較すると、官庁工事では1坪(3.3㎡)当たり80~150万円、民間事業者では60万円と大きな差がある(表2)。 
開院から1年後には新病院へ移転することを目標にして、低コストで建設できる発注方式を検討した結果、最終的には建設会社が保有する技術を最大限に引き出せる「設計施工一括プロポーザル競技方式」を採用した。民間のノウハウを活用することでコストを大幅に削減、さらに指定管理者(病院運営主体)の要望も取り入れ機能的な病院をつくることができた(表3)。 

3.工事の見積りと発注の官民比較 

建設工事の積算は、日本では官庁と民間では方式が異なり、設計と施工を分離して発注するのを基本としてきた。 
ところが民間では設計施工分離発注方式のほか、設計と施工を同じ業者に一括して発注する方式(設計施工一括方式)も広く採用されている。 
このような発注や積算方法の違いから、官庁工事は民間に比べ2~3割高いといわれ「自治体病院の建替工事費、何とかならないか(籠島忠:全国自治体病院協議会雑誌)」という問題提起もある。 

設計と施工を分離する現在の発注方式によれば、工事の経費率を高く見積る積算と一般的に高いと言われる公共単価を使わざるを得なく、この段階で設計金額が決まってしまうので高止まりになる。 
また、施工者が設計に関与しないので、設計段階で発生するリスクは発注者が負ってしまう。 
したがって、公立病院のように発注側の自治体にその経験がない中では非常に問題が多い。
そのため、これに拠らない発注方法が検討された。その手法として、民間で実績がありゼネコンの持つノウハウを最大限に活用できる方法を選択した。 
また、近年の地方分権意識の高まりや国の財政悪化の流れを受け、首長や議会が従来の公共工事発注システムと公共施設の建築コストに疑問を感じ改革方法を模索していた時期でもあったので、議会の一部に異論はあったが最終的には踏み切った。 

この際に、応募者には次の課題を示して改善提案を求めた。 
(1) 工期の短縮、及び設計を含む工事費用の縮減方法 
(2) 施設のライフサイクルを踏まえた上で、採算性を確保しうるトータルコストの縮減、及び将来の施設管理のための年次整備(営繕)計画の提案 
(3) 瑕疵担保期間を10年以上とすること及び完成後のアフターケアの内容 
(4) 病院建設の際の、地域の建設業者の工事参加に対する考え方 

また、これを当該企業に担保してもらうためには体力が必要と考え、参加要件を次の規模の建設会社に限定した。 
① 一級建築士事務所登録を受けていること。 
② 年間完成工事高実績500億円(うち建築で300億円)以上。 
③ 公示日現在、福島県の指名停止を受けていないこと(全額県の財政支援金で行うため)。 
④ 東北地方に営業所等を置いていること。 



4.町立病院における建設の流れ 

当時は各地で建設業界の談合等の摘発報道があって、公共工事を発注する判断が非常に難しい時期であった。当町の場合、県の支援金の額が既に決定していたため、国の財政再建論議の中で消費税率アップの流れができてしまうと仮需要が発生して建設物価が変動することが懸念された。 
これは支援金が目減りすることを意味し、非常に微妙で対象企業が仮に全社指名停止にでもなれば大変なことになる。 
町立新病院を本方式でつくれるところがなくなるかも知れない、契約したものは走れるが、公募中に対象企業が指名停止にでもなれば、契約はすべきでないという強硬な意見もあったから、膠着して動けなくなる。 
当時はまじめに悩んだ。 
そこで短期にことを進める決断をした。平成18年12月1日公募、15日が参加表明の期限、25日までに応募書類提出という大変厳しい条件ではあったが、締切までにゼネコン3社から応募があり、19年1月の公開ヒアリングによってS社を選定した。19年2月22日に工事請負契約を締結、提案内容を基本にして直ちに実施設計作業に入ったため、姉歯建築士構造計算偽装問題に端を発した改正建築基準法施行による建築確認の遅延、北京五輪などによる建築資材高騰の影響も回避できた。 

建築確認は時節柄、民間でなく県中建設事務所で受けて6月8日に着工、工事期間は11ヶ月で、官庁発注の工事としては異例の早さと言われた。 
新病院は20年4月末に完成引渡を受け、連休中に引っ越して5月7日に仮オープン、旧病院解体や外構工事を行って9月にグランドオープンした。 

引き続いて病院北側に同方式によって養護老人ホームの移転改築工事を行い21年10月末に完成した。 
町立病院建設では、応募資格を年間工事高500億円以上のゼネコンに限定したため、議会の一部や設計関係団体から抗議や見直し意見が出された経緯もあった。 
この反省から同ホーム工事では、応募資格は旧田村郡内に本社または営業所を有する地元企業で、予定工事費を5億円限度(消費税別)とし、今度は建設会社と設計事務所との共同提案も対象にした。 
結果として選定されたのは建設会社と設計事務所が共同してまとめた提案で、設計業者排除批判の反省は生かされた。 
なお、坪当たり建築費は55万円余であった。 
さて、新病院は一部3階建てで建築延べ面積は6,000㎡、工事費は3.3㎡当たり58万円、1床当りの建築費は1,200万円台と公立病院としては異例の金額で整備できた。 
実施設計や工事の過程では、発注者と工事受注者、指定管理者の現場スタッフが多数参加して延べ40回以上も検討会をもち、使い勝手のいい病院づくりに取り組んだ。これも一括して発注した効果であろう。 

5.設計施工一括発注方式の効用と感想 

経験して分かったことだが、病院のような事業用施設の建築では工事の最終段階まで細かい変更が出る。 
従来のような分離発注方式だったら、その都度、契約変更のための議会審議が必要になり、その分工期は延び、工事費が増額変更になって大変な金額になっただろう。 

従来のように設計と施工を区分した発注では、施主(自治体)が設計事務所に発注し、成果品を自治体の責任で受け取って、その図面で工事を発注する。 
議員も職員も図面を完全には理解できないので、工事が進み、形が見えるようになってから問題に気が付いて大騒ぎになったという経験は多くの自治体が経験していると思う。 

いままでの経験に則して言えば、出来上がった建物の構造上の責任の多くは、結局は設計図書を受け取った施主側(自治体)にあるのではないか。 
ところが、施工ミスを除けばほとんどは設計に起因しているにもかかわらず、工事発注者や議会や住民は施工業者を責めてしまう。業者にすれば非常に不本意であろう。 

さて、民間病院が60万円前後で建設できるのに、公立病院は坪当たり150万円もかけていては黒字で経営できるわけがない。 
現在の医療報酬制度を前提に考えると、特殊な機能をもった病院でない限り、一般病院の建設コストは坪65万円が採算ラインと言われるから、建物コストのオーバー分を医業収入で回収するなど不可能である。 

公立病院の多くは一般会計から多額の繰入れを受けているが、これは表向き「政策医療・不採算医療を担うため」と説明されている。 
しかしこの繰入れは施設整備の過大な借入金償還と医業収入で賄えない人件費の補填に消えているのではないか。 
当町の病院を例に再生の試算をすると、人件費や償却費など経費を民間並みに置き換えただけで帳尻が合う(表4)。 
医師1人で年間1億5千万円の医業収入を上げると言うが、病院の財政状態が悪くなれば、肝心の医師が最も早く去るので運営できなくなる。 
同じ医療保険制度の下で、公立病院の経営が問題になるのは、一部の例外を除いて経営主体にその能力が欠けるからで、中でも設備投資の判断ミスが公立病院経営の致命傷になる。 


6.病院の経験から学んだこと 

病院立ち上げの責任者として考えたのは、まず民間手法を徹底的に研究することだった。 
民間病院の経営者、建設会社の営業マン、業界関係者などから民間病院の建設方法や実態などさまざまな話を聞かせていただいた。 
ここから学んだのが設計施工一括発注方式である。 
病院事業に占める公立病院の比率は一割程度しかないから、医療は民間中心の業界といえるが、これらの変革の動きは速い。 
自治体関係者が知らないだけである。 
たとえば、民間分野における病院建設への取り組みを見ると、一昔前までは基本設計、実施設計、施工監理というように民間でも公共事業と同じ手順、サービスにとどまっていたようである。 
しかし昭和50年代になると、医療動向の情報提供や市場調査などの企画段階でのコンサルティング業務から、土地買収や資金調達手続きの資料作成などの代行サービス、医療機器導入や備品計画に対するアドバイス、そして開院後のメンテナンスまですべてを引き受けるシステムを用意する企業が現れた。 
それから30年以上が経過して今日ではこれが業界の常識になっている。 
本町の公募に応募して採用されたのはこの世界のパイオニア企業であった(日本経済新聞社「医療ビジネス」240頁)。 
民間法人がこれらのサービスを上手に利用して病院事業を行っているのに対し、公立病院は相かわらず従来のやり方を踏襲して高いコストの病院をつくり続けてきた。その結果、高コスト体質を変革できなかったため、折からの深刻な医師不足が重なって、地域医療を崩壊の危機に立たせている。 

7.自治体病院の建築費高止まりが病院経営に与える影響 

それでは、建築費が高いと病院経営にどのような影響がでるのか整理してみよう。 

(1) 起債の元利償還金負担の重さ 
・病院の収益の中から、建築のための企業債を償還するのは大変なことである。 
・自治体病院の新・改築では採算ラインを超える投資で巨額の元利償還金を発生させ、保有する現金を食いつぶし、経営を不安定にしている。 

(2) 過大な減価償却 
・減価償却費は、企業経営を安定的に継続させるため、再投資の資金を内部に留保させる仕組みで、病院の収益の中から生み出す性格のものである。しかし負担限度を超えた投資の結果、自治体病院は、病院建築に伴う重い減価償却費を積むことができず苦しんでいる。 

(3) その結果、病院財政を硬直化させ、医師不足時代への対応をできなくしている 
・病院財政の硬直化は、医師の招聘を行うための処遇改善を行う余裕を失わせる。それは結果として医師の増員や報酬アップの余裕も奪っている。 

・病院を新しくすれば医師が勤務してくれると、多くの自治体関係者は誤解している。医者も人間である、形だけでは動かない。 
・豪華な病院を建築したため、医師の待遇改善ができず、逆に借金(起債)の返済や財源確保のための査定が厳しくなって、仕事は厳しくなる一方の病院もある。 


(4) 自治体の経営側が医療問題を理解していないため、医師のやる気を失わせ、大量退職を招き悪循環に陥る例は多い。 
そのパターンは次のようなものである。 

①豪華な病院建設~膨大な借金・減価償却費→②病院の慢性的赤字→③現場へしわ寄せ(現場への収益向上の要求、待遇の悪化)→④医師の退職→⑤入院患者・外来患者の減少→⑥医業収益の減少→⑦待遇向上余力の喪失→⑧さらなる医師の退職→⑨資金がショートして給料や薬代が払えなくなる→⑩病院倒産 

「公立病院は儲けなくてもいいが、赤字はまずい。 
だから経営はしなければならない。」ある公的病院長の言葉である。 

8.なぜ、自治体病院の建築費は高くなるのか ~その理由 

それでは、自治体病院の建築コストはなぜ高くなるのか、整理してみよう。 

(1) 業界では、民間に比べ自治体病院の建築費が高いのは常識である。 
・民間は、病院建設によって新しく入る収入と増える費用を考えて、収益で支払える範囲内で建設する。 
・民間には貸し倒れリスクがあるので、医療機関への融資の審査は厳しいのがあたりまえ。経営能力がないところには貸さない。 
しかし、財政にゆとりがあった時代の借入審査は形式的で、よほどのことが無い限り起債は許可された。 
・自治体には「病院建築ありき」で、採算を考えずに豪華な病院を作ってしまう体質がある。 
住民も議会も「お金をかけるほどよい行政」の感覚がある。 
病院の機能を考えずに、盛りだくさんで豪華な病院をつくる方向に流れやすい。 
首長も議員も住民も反対しない、職員も立派な建物を望む。 
・病院経営問題と政治公約を混同するなど、関係者の長期的な視点と経営に対する意識が低く、民間に比べコストの上昇を見逃してしまう構造的な体質がある。 

(2) 起債制度と交付税措置 
高い建築費で病院を作っても、その費用のかなりの部分に交付税措置があるという建前で華美な建設をしてしまう。 
ところが実際に自治体が受けている交付税の総額は15兆円から増えていないため、国が措置しても自治体の財政部門は一般財源だとして出し渋る。一方、病院側は措置された分は交付されることを前提に事業を行うため、資金がショートして深刻な経営危機を引き起こすことがある。 
(3)一部を除いて病院経営や医療現場を知らない設計事務所が多く、コスト削減提案や経営改善提案力が弱い。 
(4) 公立病院は公営企業としての経営を求められているのに、公共工事として高い建築費での発注を期待する業界の体質があり、なかなか変えられない。 



9.成功のポイント 

本町の例は、公立病院再生の成功事例の一つとして評価されるが、これが実現できたポイントは次のように整理できる。 

(1) 設計施工一括プロポーザル方式を採用したことで、公共工事の煩雑で時間を労す発注事務手続きを最小限にとどめられたこと。 
(2) 施工の専門家が設計当初からかかわり、公共工事単価・歩掛抜きで設計ができ「民間並みの建築単価」を採用したことで、コストダウンができたこと。 
(3) 設計期間と施工期間をオーバーラップさせ、段階的施工によって設計から工事完成まで14ヶ月という工期の短縮ができたこと。 
(4) 詳細設計段階で、減価償却費相当額を負担する指定管理者(民間)の参画により、そのノウハウを活用することができ、使い勝手のいい病院を造ることができたこと。 
(5) 「病院職員の現場感覚」と「経験豊富なゼネコン技術者」、「改革意欲ある発注者」が一つになって、夢を共有しながら設計から施工まで一貫してかかわったこと。 
(6) 移譲を決断した県当局の医療・建築両部局による組織的な支援で、下支えしてくれたこと。 


10.町立病院を核にした地域医療の展開 

病院は作ることが最終目的でない。 
そこが町独自の地域医療政策を展開するためのスタート点であるという認識で、次のような行政を想定し取り組んできた。 

(1) 健康をテーマにしたまちづくりを展開する。~「健康まちづくり運動」 
(2) 地域医療の医療機関、住民団体などと町の保健・福祉行政が連携するシステムづくり 
(3) 福島県立医科大学の医学教育研修プログラムとの連携~県立医大の教授が新病院の計画段階から係わったことで、「家庭医」の後期研修病院の1つに位置づけられている。 
(4) 町は病院に患者の要求を突きつけるばかりでなく、地域医療の質を向上させるため、役場も議会も町民も、研究する体制づくりを続ける。~指定管理者に丸投げしない、町も長寿社会への医療対応を、専門機関と共同で研究しながら長期展望をもって取り組む。 
(5) 町立病院運営の評価と地域医療全体の評価~病院事業運営協議会と地域医療学術評価委員会の2つの組織 


参考及び引用文献 

伊関友伸「まちの病院がなくなる」2007年、時事通信社 
籠島忠「自治体病院の建替工事費~何とかならないか」全国自治体病院協議会雑誌2007年9月号 
日経産業新聞編「医療ビジネス~新時代の病院経営」1985年、日本経済新聞社 
遠藤誠作「コスト削減の可能性~病院改築における設計・建設・管理の一括発注事例から」月刊下水道2009年1月号 
遠藤誠作「県から移譲を受けて指定管理者制度を利用し町立病院として再生した例」科学研究費補助金基盤研究「地方分権が社会保障システムの効率性・衡平性に与える影響の分析」所収、主任研究者泉田信行(国立社会保障・人口問題研究所)2008年 
「三春病院記念誌」2008年、三春病院記念事業実行委員会 




資料 町立病院開設までの動き 
        主なできごと 
        町、行財政改革室に三春病院対策班を設置 
町内各界代表による三春病院対策委員会(対策委)を設置 
(この時期、県職労は県立病院存続・充実要請署名運動を展開) 
対策委、移譲を受け存続すべきと答申、町はこれを受けて受入の対処方針を決定 
町と議会、知事に条件付き受入を伝える 
県立三春病院の移譲合意書を締結 
町は指定管理者を公募 
応募者2者から、(財)星総合病院を選定 
町は新病院を設計施工一括方式で建設するため公募 
新病院建設業者として3社から清水建設を選定、契約 
病院の財産譲渡協定締結、県立病院廃止 
町立病院開院 
新病院建設、起工式 
新病院完成し、診察開始 





表1 新病院建設事業の概算事業費 
工事等区分      内容    金額(税込み) 
1 新病院建設工事       病院本体工、建築延面積6,050㎡   1,096百万円 
2 新病院敷地地業工事   地盤改良杭打ち等基礎工事        52 
3 新病院外構等整備工事 外構及び旧病院解体工事 
外構:駐車場整備7,489㎡、町道三春病院1~3号線整備、看板、電気設備、雨水・上下水道管布設、地盤調査、PCB保管庫、設計など 
解体:鉄筋コンクリート造、2階建て建築面積2,631㎡,延面積4,473㎡,車庫、受水槽、埋設オイルタンクなど一切   299 
(200) 



(99) 
4 旧病院一部解体工事   新病院建設に支障となる旧保健所、院長公舎、霊安室等の先行撤去工事        15 
5 新病院備品購入       医療機器等、備品購入(見込み)    400 
6 事務費ほか   借入金利子、人件費など  38 
計              1,900 

○建設の経緯 
平成18年12月1日 新病院の建設を急ぐため、設計施工一括発注方式の採用を決定。募集開始 
4つの条件 ①理疵担保10年 ②協力業者に地元業者の参加 
③工期短縮   ④低コスト提案 
12月25日 提出期限までに3社応募。提案は坪当たり60万円前後 
平成19年1月19日 プロポーザル審査委員会(委員長・葛西福島県立医大教授)、清水建設㈱を選定したことを町長に報告。町、同社を特定者に決定。 
2月22日 同社と工事請負契約を締結(本体10億3000万円、税別) 
6月8日 新病院建設工事の起工式を挙行 
平成20年1月21日 新病院外構及び旧病院解体撤去工事発注は病院関連工事審査委員会の議を経て、清水建設と随意契約。医療機器の選定、購入方法は、機器を利用し減価償却費を負担する指定管理者の意向を尊重 
4月末日 病院完成引渡し 
5月7日 新病院開院 
8月末 外構工事、旧病院解体工事完了 
4月  病院に隣接して「養護老人ホーム三春町敬老園」改築工事着手(プロポーザル競技方式で施工業者、坪60万円以内、21年10月完成、12月入居)。 
表2 病院・診療所の建築主別、建築単価(建設統計年報2004) 
建築主別        建築物の数(棟)  床面積合計m2    工事費予定額(万円)      1㎡当たり単価(万円)     1坪当たり単価(万円) 
国      34      112,265 2,677,936       23.9    78.9 
都道府県        25      125,299 3,195,199       25.5    84.2 
市区町村        117     275,789 8,930,154       32.4    106.9 
会社    270     260,733 4,824,158       18.5    61.1 
団体    1,140   2,358,230       43,500,951      18.4    60.7 
個人    1,791   575,846 10,543,964      18.3    60.4 
総計    3,376   3,708,162       73,672,362      19.9    65.7 
三春町立病院    1       6,060.43        1,030百万円     17.0    56.1 
出典:井関友伸「まちの病院がなくなる!?~地域医療の崩壊と再生」(時事通信社)ほか 




表3 町立三春病院の新病院建設方式の検討 
検討した方式と概要      長所    短所 
1 設計施工一括発注方式 
【概要】 
高度または特殊な技術力を要し、設計と施工が一体で開発されるなど、個々の業者等が有する特殊な設計・施工技術を一括して活用することが適当と思われる工事について、価格競争及び総合評価により業者を決定し、設計・施工を一括して発注する方式である。    ・単一組織が明確な責任を持つ。 
・発注者自身の調整統合業務を軽減できる。 
・設計と施工期間をオーバーラップさせることにより、工期が短縮できる。 
・さらに段階的施工を採用することで時間削減が期待できる。 
・施工専門家が設計の当初から関わることによるコストダウンや時間削減が期待できる。 
・受注者側に設計に関するリスクを移転できる。 
・事業の早期段階で事業費を固めることが可能である。      ・設備工事の施工者などが全て元請け会社の下請けとなり、その契約内容が直接見えない。 
・専門業者のインセンティブを引き出しにくい。 
・全ての工事に元請けの経費が加算される恐れがある。 
2 設計施工分離発注方式 
【概要】 
建築や設備など種類の異なる工事を分けてそれぞれ別の専門施工者に発注する方式。    ・工事費と工事ごとの責任の透明化が図れる。 
・一括の場合の元請け側の管理経費を節約できる。 
・各施工者が独自で頑張ることができる。  ・工事中及びアフターケアの窓口が複数になり、各工事の谷間部分についての責任の所在が不明確になることがある。 
・発注段階から工事に至るまでの業務量が増える。 
・万全な設計監理体制が必要。 
3 CM(コンストラクション・マネジメント)方式 
【概要】 
建設会社が有償で自治体の発注業務を代行する仕組み。発注者の代理人として、発注方法や工程管理など工事全体を総括する。発注者は対価として手数料を支払う。無償協力と違い、正式な契約を結ぶため、透明性を確保し易い利点がある。 
工事種別の分離発注と設計、施工、監理をクライアント又はクライアントの代理人が行う方式。  ・工事が細分化して発注されるので、工事費と工事内容が透明になる。 
・中間経費を節約できるので工事費削減の可能性がある。 
・専門工事業者の参加機会を増やす効果がある。    ・町内に元請けとなるような施工能力と責任を果たせる業者がいない。 
・通常の発注方式に比べ、工期が長くなる傾向がある。特に複雑な構造となる病院建築においては、工期は延びる可能性が高い。 
・施工と設計の両方に通じているCMRがいないと、CM本来の効果は発揮できない。人選が難しい上、病院建築という特殊な建築物の経験が豊富なマネージャーは皆無に等しい。 
・完成した物件に対する責任の所在が不明確。CMRは一般に体力がないため責任を負えないため発注者のリスクが大きくなる可能性がある。 
・追加工事が頻発し、事業費が当初計画額を上回る場合もある。 


表4 三春病院再生のためのコスト削減試算 

項目    旧病院  再生試算        説明 
医業収益 
(100%)  962,679 
(100.0%)        962,679 
(100.0%)         
医業費用 給与費        759,836 
(78,9%) 531,885 
(55.3)  給与費を民間水準に合わせ70%と見積る。 
材料費  260,241 
(27.0%) 208,192 
(21.6)  薬品費、食事材料、医療材料等。80%と見積る。 
経費    179,015 
(18.6%) 152,163 
(15.8)  光熱水費、燃料費、修繕費、その他を85%と見る。 
減価償却費 
資産減耗費      81,113 
(8.4%)  56,778 
(5.9)   固定資産の取得費を70%で調達できると見る。 
研究研修費      8,462 
(0.9%)  13,661 
(1.4)   職員の資質向上、専門職の技術研修に予算を使う。 
医業費用 計    1,288,667 
(133.9%)        962,679 
(100.0) 医業収支均衡を目標に試算。 
注:()は、医業収益に対する比率。単位は千円、%。数値は平成16年度決算を使用。 


表5 公立病院をめぐる4つの問題 
1 財政的な問題 
・国の診療報酬の抑制政策 
・累積欠損金の増大~一時借入金増大 
・破綻寸前の自治体財政~繰入抑制圧力 
・財政健全化法施行 
・公立病院改革ガイドラインによる誘導 
・民営化~指定管理者制度・民間譲渡 
・施設の老朽化・建て替え 
・医療機器の購入 
・電子カルテの導入      3 医療の提供に関する問題 
・進歩する医療技術への対応 
・医療安全対策 
・インフォームドコンセント 
・カルテ開示 
・少ない人員・忙しすぎる環境 
・セカンドオピニオン 
・医療事故の発生と相次ぐ訴訟 
2 病院運営上の問題 
・勤務医の大量退職による医師不足 
・産科・小児科・救急医療の崩壊 
・新医療法による療養病床廃止圧力 
・7対1看護:看護師不足 
・後期高齢者医療制度による医療費抑制    4 医療現場の問題 
・平均在院日数の短縮 
・病院間の競争激化 
・入院・外来患者の伸び悩み 
・強い労働組合 
・職員の無関心 
・高コスト体質 
注:① 自治体病院は「不採算」医療を抱えているから赤字経営だ、と説明してきたが… 
〈不採算医療〉は、つぎのようなもの… 
・僻地、小児科、産科、救急、結核、感染症、精神、高度・専門医療など 
・住民への健康教育、疾病予防など健康政策への協力、保健・福祉と連携した医療の提供、医療従事者への教育活動 
これに対応しなければ、一般会計から繰入れをする理由がなくなる? 
② 地域にとって必要な病院か、住民のニーズに応えているかが、判断基準になる。 



(参考) 県立病院と町立病院の診療体制比較 
区分    県立三春病院    町立三春病院 
開設    昭和26年(1951)2月       平成19年(2007)4月1日 
診療科 
(囲みは新規開設科)      (常設)内科・外科産婦人科耳鼻咽喉科 
(非常設)小児科・整形外科・眼科 
7科 
診察日月~金(土日休み)  (常設)内科・外科・小児科・整形外科 
(非常設)産婦人科・耳鼻咽喉科・皮膚科・ 
泌尿器科・心療内科・精神科・眼科・リハビリテーション科 
12科(4科新設)診察日月~土(全日) 
職員数 
(カッコ書きは臨時、外数)        医師5、薬剤師4(1)、放射線2、検査2(1)、看護師43(5)、その他8(1) 
合計64+臨時8=72名(18年3月)      医師4(30)、薬剤師2、放射線2、検査3、看護等57、リハビリテーション科13、その他(栄養士・事務職員)7 
合計88名(21年1月) 
看護体制        2対1    2.5対1