(医のかたち)公立病院力:下 再編統合、光と影 似た機能、共倒れの危機



(医のかたち)公立病院力:下 再編統合、光と影 似た機能、共倒れの危機 /広島県http://www.urban.ne.jp/home/hikarihp/oshirase/kaikaku_p.pdf 
2010.04.29朝日新聞   
  

 地域にいくつかある公立病院を一つに統合したり、似たような診療科を持つ近隣の病院同士で機能を分担したりする動きが進んでいます。医師不足や経営の悪化に加え、高齢化によるニーズの変化に応えきれなくなっている面もでてきたからです。ただ、こうした動きで不利益を被る住民もいます。今回は再編統合で変わる「公立病院力」をみていきます。(錦光山雅子) 


 1通の請願書を抱え、山口県光市で農業を営む小川泰治さん(79)は2月、市議会に出向いた。 

 小川さんは2004年に光市と合併した旧大和町に住む。地元住民でつくる「大和病院の存続・充実を願う会」の副会長。かつての町長や収入役も名を連ねた請願書で求めたのは、市立大和総合病院の機能の存続だ。 

 市は2月、大和総合病院(以下「大和」)=写真上=と光総合病院(以下「光」)=同下=という似通った機能を持つ二つの市立病院を再編する方針を掲げた。 

 「光」はこれまで通り急病や手術などで入院する患者のための機能を主に担う。「大和」は、高齢者を中心とする長期の入院患者向けの療養病床に大きく比重を移す。現段階では基本的に手術はせず、救急病院の看板も下ろす方針だ。 

 04年の合併時、それぞれの病院は「存続」と決まった。2病院で市内の病院ベッドの半数を占めているが、収益の柱となる入院ベッド利用率(一般病床)は低迷している。08年度でみると、「光」が67%、「大和」は52%にとどまった。だが、光市の国民健康保険に入っている人の4割以上は、市外の病院に入院していることが市の調べで分かっている。

 二つの市立病院に人気がないのはなぜか。 

 背景の一つは医師の減少。「光」の場合、入院患者の多い脳神経外科は08年、常勤医がいなくなった。週2回の外来だけになり、入院は受け入れられなくなった。 

 市は「ベッドが余り、医師は不足しているのに、似たような機能をこのまま維持したのでは共倒れになる」と危惧(きぐ)。「地域全体で療養病床が不足している」として、その機能を「大和」が担う方針にした。すでに「大和」にある60床の療養病床に限っては利用率が9割近く、高齢者を中心にニーズはあるとみている。 

 ただし、「大和」の地元住民は納得していない。 

 小川さんは反論する。「大和町には後継者のいない診療所1カ所しかなく、大和病院の担う役割が大きい」 

 同会のメンバーでもある土橋啓義市議は病院再編後の地域を心配する。「どんな診療科が残るにせよ、手術をしない病院に、外科医は残ろうとはしないだろう。1日約千人の出入りがある今の大和病院が、高齢者の多い療養病床ばかりになれば、さびれる一方だ」 


 ◆医師不足が招いた「改革」 

 総務省は07年末に「公立病院改革ガイドライン」を出し、近くの病院同士で役割を整理したり、地域でのベッド数を調整したりするよう求めている。各地で再編や統合が進む理由の一つだ。 

 高齢化が進み、これまでのような入院中心の医療から、慢性の病気を抱えながらも自宅などで暮らすお年寄りらを意識した医療に比重を移していく流れもある。 

 しかし、公立病院が再編統合を迫られる最大の要因は、やはり医師不足だ。現在の医師数に見合った形に病院の体制を整えているのが実態。こうした再編は今後広がっていきそうだ。 

 広島県の中山間地にある世羅町の公立世羅中央病院と三原市の公立くい病院の場合、医師不足とベッド不足の両方を再編で補う方法をとる。 

 くい病院には現在、内科や外科など4診療科があるが、常勤医師は院長1人のみ。世羅中央病院も含めて非常勤医の応援をもらい、往診や当直もこなしている。 

 一方、くい病院から車で約10分の世羅中央病院は、外科医が比較的充実していることなどもあり、常にベッドは満員状態。このため、救急で運ばれてくる患者を受け入れるベッドが足りない。救急患者に多い脳卒中や循環器系の病気をみる医師も足りない。 

 このため10月、2病院の機能を再編する。くい病院から45床を世羅中央病院に移し、救急患者に対応できる医師を増やして、これまで断っていた救急患者もみられるようにする。くい病院はベッドのない「診療所」になるが、外来の診療科は維持する。 

 こうした取り組みで、地元消防が搬送する患者の5割しか受け入れられていない現状を6割に近づけるのが目標だ。世羅中央病院の宮川哲二事務長は「地域全体で効率的に医師とベッドを配置し、医療の質を保ちたい」と話す。