問われる薬事行政の信頼 田辺三菱業務停止



産経新聞 2010.4.15 
問われる薬事行政の信頼 
田辺三菱業務停止 
田辺三菱製薬の子会社がやけどなどの治療薬の治験(臨床試験)データを改竄した問題で、厚生労働省が両社に異例の業務停止処分と業務改善を命じた。 
子会社は薬害エイズ事件や薬害肝炎問題を引き起こした旧ミドリ十字が設立した企業だ。「再び薬害を起こさない」という誓いは、裏切られた。 
薬の製造・販売のための「承認申請」の信頼を失いかねない問題だ。薬事行政を所管する厚労省にとっても監督・指導のあり方が問われる重大事である。 
厚労省や製薬業界は、今回の問題を一製薬企業の不祥事として済ませてはならない。どのように改竄や捏造が行われたかなどを徹底検証し、再発防止に立ち上がることが求められる。 
厚労省の説明だと、田辺三菱の子会社は、治験や市販後の品質管理において不純物の量や無菌試験のデータなど計31項目の検査でデータの差し替えや捏造を行い、16項目が薬事法に抵触していた。 
不正行為は子会社の幹部の指示で、20人ほどが組織的に関与していた。その多くは、旧ミドリ十字出身者だったという。 
厚労省は改正薬事法に基づき、「親会社は子会社の不適切な行為を漫然と見逃した」として田辺三菱製薬も処分した。当然である。しかし、薬害事件で指弾された関係者が再びこのような問題を起こしたという点では、処分は軽すぎるのではないか。 
今回の問題は一昨年12月24日、子会社から田辺三菱製薬側に連絡が入ったという。その後、3カ月後の昨年3月17日になって初めて厚労省に報告があり、同月24日に自主回収が公表された。報告も処分も遅すぎた。 
承認申請を受け付けた厚労省や審査を担当した医薬品医療機器総合機構も、治験内容を厳しくチェックすべきだった。 
薬害エイズでは汚染された血液製剤の投与を受けた血友病患者がエイズウイルスに感染し、500人以上が亡くなった。旧ミドリ十字の歴代3社長や元厚生省生物製剤課長、元帝京大副学長の計5人が逮捕起訴され、「産・官・学」の刑事責任が追及された。 
今回は薬害までには至らなかったが、全体の構図は薬害エイズ事件に共通する部分もあるのではないか。製薬会社、厚労省、医師は人の命を預かっていることを改めて肝に銘じるべきだ。