低医療費時代を経た病院M&Aの最新事情




低医療費時代を経た病院M&Aの最新事情 
病院M&Aの最新事情(上)最大手の徳洲会は買い控え 
2010.08.17 CB医療介護ニュース  
  

医療費が増え続けた一昔前、病院は高値で売買されたが、2000年代に入り、国が医療費抑制策に転じると、日本の医療界を取り巻く状況は一変した。 
低医療費時代を経た病院M&Aの最新事情を探った。 

▼譲渡相談は老朽病院、中小病院が大半 

全国で66病院や47診療所などを運営し、日本最大の病院グループとして知られる徳洲会―。 
近年では、長期入院患者の受け皿になる慢性期病院などから譲渡の相談が数多く持ち込まれるが、同会では基本的に病院の買い取りには慎重なスタンスだ。 

中川和喜事務局長によると、地域にほかの医療機関が少なかったり、徳洲会以外に買い手がなかったりする場合には、運営継承を前向きに検討する。 
しかし、話が持ち込まれるのは、ベッド数が少なかったり、病棟が老朽化したりした中小病院が大半だ。
中川氏は「たとえ黒字経営の病院を譲ると言われても、慎重に検討する」と話す。 

例えば病棟が老朽化した病院を引き受けても、黒字経営を維持するのが難しいからだ。 
医療法では、病院のベッド1床当たりの面積を6.4平方メートル以上にするよう求めているが、古い病棟にはこの基準をクリアしていないケースも多い。 
買収後に病棟を建て替えて基準を満たそうとすると、ベッド数を減らすか、新たな土地を確保する必要がある。 

建て替えが必要な病院をグループ内に抱えているという事情もある。 
建て替えに伴う膨大な出費が見込まれるため、新たな買収には慎重にならざるを得ない。 

今年3月には、静岡県牧之原市と吉田町が運営していた「榛原総合病院」(408床)を指定管理者として引き継いだ。 
公立病院の運営を徳洲会が引き受けるのは、今回が初めてだ。 

榛原総合病院は医師不足や経営難から運営に行き詰まり、運営を引き継ぐよう自治体側から要請があった。 
これを受けて徳洲会は、 
▽ほかに引き受け手がない 
▽同病院に代わる医療機関が地域に少ない 
▽自治体や住民が病院の存続に意欲的 
▽病棟が比較的新しく、ベッド数も多い 
▽院長をはじめ勤務医が協力的 
―などの要素を考慮して継承を決めた。 

榛原総合病院の再建が軌道に乗れば、自治体から公立病院の運営を求められるケースが増えると中川氏はみている。 

民間病院の買収とは違い、公立病院の運営を指定管理者として引き継ぐ場合には通常、譲渡先の費用負担はほとんど発生しない。 
しかし、それでもなお、すぐには引き受けに踏み切れない。 
運営の継承を決めたものの、仮に勤務医やスタッフの協力が得られなければ自力で確保せざるを得ず、大きなリスクを伴うからだ。 

▼大手グループ幹部「病院多過ぎる」 

埼玉県などで22病院を運営する上尾中央医科グループ(AMG)は08年、「埼玉草加病院」など2病院を運営する医療法人を丸ごと傘下に加えたが、それ以降は目立った動きがない。 

AMGには、取引先の銀行などから病院譲渡の相談がコンスタントに持ち込まれるが、徳洲会と同様、経営難や後継者不在で自力再建が困難なケースが大半だ。 
地域にほかの医療機関が少ないなど、住民のニーズが特に大きいと考えられる場合には、引き継ぎを前向きに検討する。 
しかし、実現するのは一握りにすぎない。 

近年では、ほかの大手グループの動きも軒並み低調だ。これは、 
▽内部に建て替えが必要な病院を抱えている 
▽引き継ぎ後の黒字転換が見通せない―といった要素が足かせになっているケースが多いとみられる。 

現行制度では、病院などが設置できるベッドの総数は、「基準病床数」として各都道府県が地域ごとに設定する仕組みになっている。 
このため、実際のベッド数がこの基準に達した「ベッド過剰地域」では、新規参入自体が難しくなる。 
こうした中で、都道府県から設置認可を受けた病院の「許可病床」が既得権益と化し、医療費が増え続けた一昔前には、病院が丸ごと高値でやりとりされた。 

ところが、国が2000年代初頭に医療費の抑制に乗り出したころから状況は一変したと、関係者は口をそろえる。AMGの宮坂俊弘総局長は、「今はそういう時代では百パーセントない」。徳洲会の中川氏も、許可病床の価値は「あまり評価しない」と話す。 

運営に行き詰まり、譲渡先すら見つけられない病院は「消滅するほかない」と、ある大手病院グループの幹部は話している。 
別のグループの幹部は、日本では病院の数がそもそも多過ぎるという受け止め方だ。「たとえ病院が3分の1減っても、日本の医療は機能すると思う」。