医療産業共同購買協会HIGPA(米国) 視察報告

医療産業共同購買協会HIGPA(米国) 視察報告 
(Health Industry Group Purchase Association) 

㈱メディ・ケア情報研究所     笠原 庸介 
㈱チェーンマネジメント       増田 拓哉 


 (1)  施設データ 

視察日 2009年9月2目(水) 
所在地 2025 M Street, N.W. Suite 800, Washington, D.C. 20036 
対応者 Mr. Curtis D. Rooney, President, HIGA 
Mr. Christpher J. Krueger, Manager, Government Relations, SmithBucklin 
Corporation 
Mr. Maurice Maloney, Coordinator, International Bone & 
Mineral Society 
同行者 Mr. Dennis W. Harrison, President, Healthcare, GSIUS 
Mr. John Robert, Director, Healthcare, GSIUS 

(2)  視察先の概要 

HIGPA(医療産業共同購買協会)は営利・非営利に関わらずに結集した17の共同購買組織(GPO: Group Purchase Organization)による連合体で、そのメンバーには営利・非営利の会社組織、購買機構、協会、病院グループや医療提供者グループなどが含まれている。 
HIGPAはそのような加盟メンバーの意見を行政・立法機関に反映させる協会であり、ワシントンにおいてロビー活動を行っている。 

(3)  視察目的とテーマ 

米国における共同購買組織の概要を理解すると共に、これまでの発展の経緯と米国医療におけるその役割に関して話を聞き、現在の日本の医薬品・医療材料の流通との比較、検証を行う。 

(4)  視察内容 

Curtis Rooney氏による概要説明は次の通り。 
資料として配布された下記の参考文献の日本語訳(巻末「参考資料」)を参照されたい。 

①  現在、HIGPAには以下に挙げる17のメンバーが加盟しており、HIGPAはこれらのメンバーの意見を行政・立法機関に働きかけるべく運営を行っている。 
1.      Amerinet 
2.      Broadlane 
3.      Child Health Corporation of America (CHCA) 
4.      Consorta, Inc. 
5.      GNYHA Services, Inc. 
6.      Health Trust Purchasing Group (HPG) 
7.      HPS 
8.      Innovatix 
9.      MAGNET, Co-Op. 
10.     MedAssets Supply Chain Systems 
11.     Medbuy Corporation 
12.     Minnesota Multistate Contracting Alliance for Pharmacy (MMCAP) 
13.     Novation 
14.     Premier, Inc. 
15.     PRIME 
16.     Provista 
17.     United Pharmacy Partners, Inc.(UPPI,LLC) 

②  これら17のメンバーのうち、巨大GPOはノーべ一ション社Novation(第一位)とプレア社Premier, Inc.(第二位)で、両者を合わせると米国共同購買の市場の40%を占める。 
米国内の共同購買組織は合併や買収を繰り返して、それぞれの組織を巨大化させてきたが、この2社はその規模においてGPO市場で既に限界に達している。 
これ以上の組織規模になると、当然のごとく独占禁止法に絡んで政府の介入も予想される為、米国内で大きくなり過ぎた共同購買組織は更なるビジネスの拡充を目指して海外での事業展開を目標としている。 

③ 大きく分けると米国には営利と非営利という2つのタイプのGPOがある。いずれのタイプにしてもGPOが直接売買に絡むことはない。 
単純に言えば、GPOは単に購買価格交渉をして病院の購買を集約するだけであり、それこそがGPOを説明する上で最も簡単な定義である。 
GPOは購入者である病院と契約すると共に、販売者である業者(製造メーカー、卸売業者等とも契約を締結する。 
病院はGPOと業者の間で締結されている契約内容を確認し、どのような品目がどのくらいの価格で購入できるかを吟味したうえで、どのGPOとどの品目について契約するかを決定する。 

④  GPOと契約する製造メーカや卸売業者は自らの市場拡大を狙っている。 
米国には5,000以上の病院と7つの規模の大きなGPOが存在するが、販売業者の営業戦略から考えれば、5,000以上ある病院を個々に相手にするよりも、それら病院の購買部門を集約しているGPOを相手にした方がはるかに効率的に商売ができることから、商品の値引きに対してもインセンティブが働くのである。 

⑤  現在米国においてオバマ政権が進めている医療制度改革では、コストの削減に最も大きな関心が寄せられている。 
米国ではGDPの約16%が医療費に使われており、諸外国と比べても大きな割合を占めている。 
そのような状況の中で、高齢化や病院赤字の問題もクローズアップされ、コスト削減は必須の課題となっている。 

⑥  アリゾナ州立大学のシェネラー教授の研究(添付文献“共同購買の価値-2009")では、米国の医療提供体制におけるGPOの活用によるコスト削減効果は年間約360億ドルである。 
医薬品が約68億ドル、一般医療材料が85億ドルでかなり高い削減効果を示しているが、高額なインプラント製品等(医師選定品目)の値引き交渉にはGPOも苦戦をしており、中でも整形外科のインプラントでは70億ドルの市場に対して、削減効果は8億4千万ドルに止まっている。 

その原因は、医師が独占的に選定権を保持している「医師選定品目」であり、製造メーカは多くの場合、病院やGPOと交渉せずに、直接医師に対して営業行為を行うからである。 


 (Q&A) 
Q: GPOは取り扱う製品の直接売買に絡むことはなく、それらの所有権を持つこともないという説明があったが、商品の運送費やGPOスタッフの人件費等の運営費用はどこから捻出するのか? 

A: 製品の運送費は一般的には卸売業者が支出する。米国には数千の卸売業がいると考えられるが、その中でも大手であるカーディナルヘルス、マッケソン、オーウェンズ&マイナー等で市場の大部分を占めている。 
GPOが取り扱う製品の価格交渉をする場合には、運送費と物品の価格を分けて交渉する場合と両者をひとつにまとめて交渉する場合がある。 
実際の配送に関しては卸売業者が自前で行う場合もあれば、UPS, FedEx, DHL等の物流専門業者を使う場合もある。また、GPOの運営費用に関しては手数料収入によって賄われている。 
この手数料は顧客である病院からではなく、交渉相手である製造メーカーや卸売業者から徴収している。 

Q: GPOが手数料を徴収する場合の料率は一般的にどのくらいか? 

A: 交渉相手である製造メーカーから手数料を取ることは、一般的にはキックバックと考えられ、違法となる場合もあるが、GPOによる製造メーカーからの手数料徴収に関しては、一定のルールに従って行動する限り、違法とならないとするセーフハーバールール(安全港規定)の下に許可されている。 
そのルールでは主に2つの事項が規定されており、ひとつは契約当事者である両者の関係が書面により示されているということ、もうひとつは徴収する手数料が3%を超えた場合は政府に届け出をしなければならないということである。 
このルールの規定の影響もあり、GPOが製造メーカーから徴収する手数料はほとんどの場合が3%以下であり、平均すると約2.2%となっている。 

Q: GPOが取り扱っている品目の範囲は医薬品や医療材料の他に、高額な医療機器なども含まれるか? 

A: MRI,CT,放射線関連機器など全ての高額の医療機器も含まれる。 

Q: GPOは病院物流のコンサルタント的な位置付けと考えてよいか? 

A:  病院物資の外部調達のコンサルタントと言えると思う。 
価格の情報だけでなく、使用する医薬品の効果等についてもアドバイスする。 
GPOは病院によって所有されているものも多く(複数病院が所有するGPOもある)、そのような場合は病院医師と共に品目の決定に関しても議論を行う。 

Q: GPOはいつ頃から始まったのか? 

A:  約100年前にニューヨークの複数の病院での購買を集約する目的で始まった。 
その後病院の購買部門と非常に密接な関係を築き、購買部門の役割の全てを引き継いで事業を行うGPOもできた。 

Q: それぞれのGPOは独自のカタログを作っているか? 

A:  いくつかのGPOは独自のカタログを作成しているが、卸売業者のカタログを使用している場合も多い。 

Q: それぞれのGPOが使用しているカタログでは共通の製品コードのようなものを採用しているか? 

A: 現状は全てバラバラとなっている。将来的にはGS1コードのようなものに統一できれば良いと考える。 

Q: 医師選定品目のように医師がほぼ独占的に選択権を保持している製品の場合、GPOはどのような交渉テクニックを通じて最大限の値引きを獲得するのか? 

A: そのような場合の値引きはなかなか難しい。 
ただし場合によっては、医師が現在使用している品目に関して、実際に病院が支払うコストを提示しながら、品目の変更に応じた場合に医師に対する報酬の引き上げ(インセンティブ)も含めて交渉を行うこともある。 

Q: シェネラー教授の研究発表の中に、米国はGPOの存在によって年間360億ドルものコスト削減効果を享受しているとあるが、その削減効果は毎年コンスタントに出ていると考えて良いのか? 

A: その通りである。実際には米国の医療費が毎年増大している分、コスト削減額も増えているといえる。 

 (5) 感想・所感 

HIGPA(医療産業共同購買協会)は、法令を遵守するとともにGPOの存在・価値を法的に裏付けするために、活発なロビー活動を行っている一方で、GPOは独占禁止法(反トラスト法)などに絡んで米国内市場が限界に達しており、更なるビジネスの拡充のため、海外への事業展開を目論んでいる点は興味深く、日本へのアプローチを含め今後の展開に注目していきたい。 

GPOの手数料については、セーフハーバールール(安全港規定)の許可の下で、徴収する手数料が3%を超えた場合は、政府に届け出るなど透明性の確保に努めているとの説明の一方で、2年前のプリミア社(Premier, Inc.)および今回のモンテフィオーレ・メディカルセンター(ニューヨーク市)訪問時の「病院が手数料を支払っている」との話と今回の「製造メーカからのみ徴収している」との説明に食い違いがあり、実態が把握しきれなかった点が悔やまれる。 

また「グループ購買組織の手引き・質疑応答」やHIGPAの資金提供により行われた研究論文「共同購買の価値一2009」は、GPOの宣伝活動の一環であり、今回の説明や資料・文献をもって米国GPOの実態の全容を反映していると捉えるのは早計で、多少割引いて理解する必要があるだろう。 

日本での共同購買については、日本国内で共同購買による製品価格値引き、コスト削減を目標に掲げる例は多いが、効果が上がっている事例は一握りのグループ病院にすぎない。その中で、医療制度、医療機器の購買方法、流通チャネルが異なる米国のGPO(特に売買に絡まない、ノーベーション社やプリミア社など営利目的のGPO(病院等の出資による配当を期待))のやり方は参考になるとしても、直接、日本に導入・適用することは業界環境の違いから難しいと思われる。