セミナー「BEYOND TOMORROW」古川元久内閣府副大臣 講演詳報




セミナー「BEYOND TOMORROW」 古川元久内閣府副大臣 講演詳報(3月11日 フジサンケイ ビジネスアイ)・・・高齢化に伴い新たに生まれる医療・介護分野の新市場を生かし、「世界が目指す新しい社会の形を日本をショーウインドーにして示したい・・・・ 


 ■新成長戦略「三方良し」カギ 

 古川元久内閣官房国家戦略室長兼内閣府副大臣を招いた特別セミナー「BEYOND TOMORROW」(産経新聞社・ブルームバーグ共催、後援・徳間書店 
)が2月26日、東京都千代田区の丸ビルで開かれた。古川氏は「世界のフロントランナーとして」と題し、鳩山政権が策定している新成長戦略をテーマに講演。 
日本の誇る省エネ・環境技術や高齢化に伴い新たに生まれる医療・介護分野の新市場を生かし、「世界が目指す新しい社会の形を日本をショーウインドーにして示したい」などと語った。 

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 政府は昨年末に新成長戦略の基本方針を示し、私が室長をしている国家戦略室を中心に、現在、6月の最終とりまとめに向けた作業をしている。 
個別具体の政策に関心がいきがちだが、すべての政策はその背景にある思想、発想を理解していただくことが大事なことではないかと思う。 

 いま、世界は大転換の時代に入ってきている。世界の人口は2000年に60億人を超え、50年には93億人になると見込まれている。 
人口増加や化石燃料に依存した経済モデル、これに伴う地球温暖化などによって地球規模での水不足や食糧不足、資源の枯渇が懸念されている。 

 日本は人類史上初と言っていい、人口減少と高齢化が同時進行する社会に突入している。
08年の人口減少は8万人程度だが、30年までの減り方を平均すると約60万人。40年以降、年間100万人を超える人口減少が起きる。 
これは、中規模の都市が毎年ゴーストタウン化する状況だ。 

 生産年齢人口も現在の8152万人から、50年には4930万人に減る。一方、50年には10人に4人は65歳以上になる。 
私たちが感じている社会と違う社会になるのは、明らかだ。 

 東西冷戦終結後の市場のグローバル化は世界経済の発展に大きな貢献をしたものの、同時にさまざまな問題も引き起こした。貧困や格差の拡大が顕在化し、一昨年のリーマン・ショックを契機に資本主義のあり方を問い直す議論が世界的に活発化している。 

 自民党政権は、この時代の大きな転換を正しく認識せず、政策や予算配分、日本の統治機構のあり方の変更を実現することができなかった。政権交代は偶然ではなく、社会経済の変化に伴って起きた必然だ。 
新しい国造りは古い仕組みから新しい仕組みへ、統治機構そのものを変えていくことを目指している。 

 ◆高齢化 新市場創出 

 新しい国造りは、経営破綻(はたん)した企業の再生とよく似ている。 
企業再生の場合、破綻した原因を徹底的に調べた後、その結果に基づいて再建計画を立てるのが通例だ。 
ただ国家の立て直しは、デューデリジェンス(資産査定)と再建計画の策定をほぼ同時並行に行うことが求められる。 
鳩山政権が「改革が進んでいない」「混乱している」とみられる一因には、デューデリジェンスと同時に再建計画を立てて実行する極めて困難な作業をやっているという面があることを理解していただきたい。 

 過去の成長戦略を検証したうえで、やらなければいけないと思ったのは、これまでのような各省の縦割りや業界バラバラの状態を超えて提携やパートナーシップを行い、新しいものを生み出していくことだ。 

 これまでの成長戦略は、基本的に過去の延長線上で現在と未来をとらえていたが、私たちが目指す新成長戦略は、未来のあるべき日本の姿を描き、その姿を実現するためには何をなすべきか、未来からの視点で成長戦略を描いていく。 

 その中で一つ掲げた大きな目標が、新しい成長概念だ。鳩山首相が掲げる「人間のための経済」の実現には、成長の概念もこれまでと同じであってはならない。 

 08年の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)の講演で、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が「クリエーティブ・キャピタリズム(創造的資本主義)」を提唱した。 
資本主義の仕組みのなかで生まれるさまざまな弊害を解決する仕組みを入れた新しい資本主義の形を作り出そうというのが、その中身だ。 

 ゲイツ氏はロックバンド「U2」のメンバーのボノ氏と「プロダクト・RED(レッド)」というものを始めている。 
私の手元にある赤い「iPod(アイポッド)」、これは商品が売れると利益の一部がアフリカのエイズ対策に寄付される。 
つまり、ビジネスが成功すればするほど、市場のなかで拡大している格差の是正などに役立つ。 
ビジネスとグローバル化の課題の解決が両立する「ウィン・ウィン(互恵)」のプロジェクトだ。 

 こうした考え方を、日本人は古くから持っていたと思う。商売が成就するためには売り手良し、買い手良し、世間良しの「三方良し」でないといけないという近江商人の発想は、ゲイツ氏の提唱する創造的資本主義と共通する。 

 さらに、日本には八百万(やおよろず)の神という言葉に象徴されるように、自然との共生を大切にする考え方がある。 

 新しい成長概念はそうした日本のうちにあるものを見つけ出し、世界にも大きな示唆を与えるものにしたい。 

 ◆脱石油社会 実現を 

 世界のフロントランナーとして、日本はどういう社会を目指すのか。世界が温暖化や資源の問題で、将来的な成長の限界リスクを抱える中、日本はこれらの問題を打ち破る可能性がある環境や省エネ技術で世界のフロントランナーの位置にある。 

 これまでの日本は、基本的にほかに模範とする例が存在し、それを見習う形で発展してきた。だが、いまは見習う模範が存在しない。 
従ってこれまでの発想の延長線上の成長戦略では、1%前後といわれる今の潜在成長率を大きく高めることはできない。 
抜本的なイノベーションが現在の技術の延長線上ではなく、非連続の飛躍から生じるように、日本も非連続の飛躍ができる発想、社会的イノベーションを実現しないといけない。 
そのためには世界のフロントランナーとして立っている立場を最大限に生かす形の社会構造を作る発想が必要だ。 

 そこから申し上げると、まずは世界に先駆けてエネルギー革命を実現し、脱化石燃料の社会をつくることを目指す。 

 高齢化社会を逆に生かす形で、世界で最も健康で、最も長く生きられる健康長寿の社会システムも目指したい。 

 医療や新薬の分野での需要増大や介護を含めたマーケット、高齢化だからこそ広がってくるマーケットもある。 
長寿化の進展に伴って新しい産業や雇用を生み出し、最終的に定年などという概念のない、人を年齢や性別で区別しない、だれもが居場所と出番が与えられる健康長寿の社会システムを構築したい。 

 こうした社会を実現することは、日本のためだけでなく、世界が目指すべき新しい社会の姿を、日本社会そのものをショーウインドーとして示すことにもつながる。 

 企業では「トリプルボトムライン」という概念がある。経済的な利益のみならず環境保全や、社会への貢献を同時に達成することが重要との考え方だ。 
これを国に当てはめると、新しい時代の「三方良し」は環境良し、社会良し、そして経済良し。 
そのことによって国民が真に幸せを感じられる、そうした日本を目指す。世界の範となる国の姿だ。 

 私たちは世界の大転換時代において、直面するさまざまな課題に正面から挑戦し、フロントランナーとして、新たな成長社会のモデルを世界に示してまいりたい。 

 ◆「第3の開国」が必要 

 最後にこうしたビジョンをいかに実現するか、申し上げたい。まず閉ざされた内向きの発想ではなく、外へ開かれた発想を根底に持つことが必要だ。明治維新、戦後に次ぐ「第3の開国」が求められている。 

 第2に、もたれ合いやなれ合いとは異なる新たな政官民のパートナーシップをつくり、オールジャパンの体制を築く。 
オールジャパンとは日本人だけではなく日本とともに「ウィン・ウィン」の関係を持とうとする人や組織を含む。日本企業やスポーツチームで外国人が活躍しているように、もはや一国だけで完結する時代ではない。 

 第3は、世界と協力してアジアの持続的な発展に寄与する形での日本の成長を目指すことだ。今後ともアジアは世界の成長の最前線に立つ。 

 先行きには変化や困難が待ち受けていると思うが、ひるむことなく歴史を変える一歩を踏み出していくことを約束したい。 

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【プロフィル】古川元久 

 ふるかわ・もとひさ 東大法学部在学中、司法試験合格。1988年に卒業後、大蔵省(現財務省)入省。米コロンビア大大学院留学後、政治家に転身し、96年初当選。2009年の政権交代後は国家戦略室長、内閣府副大臣(行政刷新・経済財政等担当)に就任。衆院当選5回。44歳。愛知県出身