民主党政権の医療政策2010



民主党政権の医療政策2010 
「新規の市場約50兆円、雇用284万人」、医療・介護・健康で創出・政府が新成長戦略を閣議決定、 
医療の「国家戦略プロジェクト」は二つ 
     2010年6月18日 橋本佳子(m3.com編集長) 

政府は6月18日、昨年12月30日の「基本方針」を具体化した「新成長戦略」を閣議決定した(首相官邸のホームページを参照)。 
7つの戦略分野の基本方針と2020年までの「行程表」を定めた内容で、ライフ・イノベーション分野では、「医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出」により、2020年までに「新規市場約50兆円、新規雇用284万人」を目指すとしている。 

 7つの戦略分野、合計で約330に上る施策のうち、特に経済成長に貢献度が高い21の施策を「国家戦略プロジェクト」と位置づけているのが特徴。 
医療分野では「医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等」と「国際医療交流(外国人患者の受け入れ)」の二つが入っている。 
これら二つは、6月15日に行政刷新会議の規制・制度改革分科会がまとめた第1次報報告書を踏まえた施策だ(『保険外併用療養の拡大へ、レセプトデータ活用も提言』を参照、行政刷新会議のホームページPDF:230 KBを参照)。 

 「コンソーシアム」を作り先進医療を推進 

 「医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等」では、がんや認知症などの重点疾患ごとに、専門的医療機関を中心としたコンソーシアムを形成し、研究費や人材の重点的な投入、先進医療に関する規制緩和により、新しい医薬品や医療機器の実用化を促進することを目指している。 
また安全性を担保できるなど、一定の基準を満たす医療機関に関しては、先進医療の評価・確認手続きを簡素化するなど規制緩和を図り、国内未承認または適応外の医薬品・医療機器を保険外併用療養で提供することにより、ドラック・ラグ、デバイス・ラグの解消を目指す。 

 新たな医薬品・医療機器の創出、再生医療市場の顕在化などにより、2020年までに年間7000億円の経済効果を期待している。 

 また、「国際医療交流(外国人患者の受け入れ)」は、最先端の機器による診断やがん・心疾患等の治療、滞在型の慢性疾患管理など日本の医療の強みを提供しながら、国際交流とさらなる高度化につなげることを目指す。 
そのため、いわゆる「医療滞在ビザ」を設置し、査証・在留資格の取扱を明確化して渡航回数、期限等を弾力化するほか、外国人医師・看護師による国内診療を可能とするなどの規制緩和を行う。 
さらに、外国人患者の受け入れに資する医療機関の認証制度の創設や、円滑な外国人受け入れのための支援なども行う。2012年度からの本格実施を目指している。 

 ただ「国際医療交流」の2020年の目標数値は定めていない。「日本人患者の診療が前提であり、実際に外国人患者を受け入れる医療機関がどの程度に上るのかなどが把握しにくいため」(内閣官房国家戦略室)。 

 「新規市場50兆円」は2007年と2020年の比較 

 医療・介護・健康関連サービスの「新規市場約50兆円、新規雇用284万人」は、2007年の数字を基に試算したもの。 
2020年までに、医療費は約34兆円から約59兆円(25兆円増)、介護は約7兆円から約19兆円(12兆円増)、健康関連サービスは約13兆円から約25兆円(12兆円増)にそれぞれ増加するほか、革新的新薬等開発の経済波及効果の約1.7兆円を合わせて、約50兆円という数字を試算している。 

 「試算のベースになったのは、前政権時代の社会保障国民会議の議論」(国家戦略室)。
社会保障国民会議は2008年11月に最終報告をまとめ、その中で「医療・介護費用のシミュレーション」などを行っている(資料は首相官邸のホームページに掲載)。 

 今回の「新政長戦略」では、「規制緩和」による経済効果を期待していることがうかがえるが、医薬品の研究開発等には、「ヒトとカネ」が必要であり、国費あるいは企業などからどのように資金調達するか、などの考え方は示されていない。 
政府は、財政健全化への道筋を示す「財政運営戦略」が、来週閣議決定する予定だが、同戦略でこの点が示されるのか否かが注目される。 

 【ライフ・イノベーションによる健康大国戦略】 
 下記の5つの項目について、「行程表」として、(1)早期実施事項(2010年度に実施する事項)、(2)2011年度に実施すべき事項、(3)2013年度までに実施すべき事項、(4)2020年度までに実現すべき成果目標が、示されている。 

1. 医療介護サービスの基盤強化、高齢者の安心な暮らしの実現 
2. 医療・介護と連携した健康関連サービス産業の成長促進と雇用の創出 
3. 新たな医療技術の研究開発・実用化促進 
4. ドラック・ラグ、デバイス・ラグの解消 
5. 医療の国際化推進