月報地方税 2月号 固定資産税と不動産取得税における家屋について



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月報地方税 2月号 
固定資産税と不動産取得税における家屋について 
資産評価室 広冨 将司 

  
1 はじめに 

固定資産の「所有」に着目し、当該固定資産所在の市町村が毎年その所有者に課税する固定資産税と、不動産の「取得」に着目し、当該不動産所在の都道府県がその取得者に課税する不動産取得税は、税の性質や課税主体を異にする全く別の税である。しかし、両税の課税客体は、土地及び家屋を対象とする点で共通しており、その課税標準は、「適正な時価」としての固定資産または不動産の「価格」とされ、求め方も原則的には共通していることから、それぞれの税の課税庁である市町村と都道府県は密接に関係を保ちながら、両税の制度が維持されているところである。 
そこで、本稿では、固定資産税(家屋)の観点から、両税における「家屋の定義と認定」及び「価格の決定方法」を例にとりながら、両税の関係について確認の意味も込めて、述べていくこととする。なお、本文意見にわたる部分はすべて私見であることを、あらかじめお断りしておく。 

2 家屋の定義と認定 

地方税法(以下「法」という。)は、固定資産税における固定資産を「土地、家屋及び償却資産を総称する。」(法341 Ⅰ)とし、家屋については「住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」(同Ⅲ)と規定している。また、不動産取得税における不動産を「土地及び家屋を総称する。」(法73 Ⅰ)とし、家屋については「住宅、店舗、工場、倉庫その他の建物をいう。」(同Ⅲ)と規定している。 
これらを概観するに、条文上、表現が若干異なるものの、家屋の定義については同趣旨の規定と解して差し支えないと思われる。 
固定資産または不動産という語で一括りにされる土地と家屋ではあるが、土地については埋め立てなどの例外を除いて、課税の対象となるものが突然現れることや滅失することは想像し難いところである。一方で家屋は、新築や滅失が恒常的に数多く発生するため、特に、ある建築物が新築された際、当該建築物が、固定資産税及び不動産取得税の課税対象となる「家屋」であるか否かを認定することが重要となる。 
家屋認定に関し、固定資産税については、総務省の通知である「地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)」が、「家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいう」(第3章第1節第1 2)と定義している。一方、不動産取得税については、「地方税法の施行に関する取扱について(道府県税関係)」が、家屋の範囲を「固定資産税にいう家屋又は不動産登記法上の建物の意義と同一であり、屋根及び周壁を有し、土地に定着した建造物であって、その目的に供しうる状態にあるものをいう」(第5章第12(2))と定義している。 
ここでも固定資産税と不動産取得税の規定の表現は少々異なるが、基本的な考え方は同じと解すべきであろう。 
そこで、「不動産登記法の建物とその意義を同じくする」及び「不動産登記法上の建物の意義と同一」とする規定について、より詳細にみてみると、不動産登記法における具体的な取扱いを定めている「不動産登記規則」(平成17年2月18日法務省令第18号)第111条は、次のとおり規定している。 

(建物) 
第11条 建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。 


ここにいう「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有」することを「外気遮断性(外気分断性)」、「土地に定着した建造物」であることを「土地定着性」、「その目的とする用途に供し得る状態にある」ことを「用途性」といい、これが一般に家屋の3要件とされている。これらの要件を踏まえた上で、社会通念上、家屋と認められるか否かを判断していくことになる。 
また、この社会通念上ということに関して、「地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)」では、固定資産税における家屋認定について、「例えば鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等は一般に社会通念上家屋とは認められないと考えるので、特にその構造その他からみて一般家屋との権衡上課税客体とせざるを得ないものを除いては、課税客体とはしないものとすること。」(第3章第1節第1 2)と規定し、同通知(道府県税関係)は、不動産取得税における家屋認定について、「土地の定着物であっても、いわゆる構築物は家屋ではないこと。家屋であるか構築物であるかの判定は、その構造、用途等を総合的に判断して行う必要があるが、いわゆる工業用サイロについては概ね家屋と解されること。」(第5章第1 2 (2)イ)、「鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等は、一般に社会通念上家屋とは認められないと考えられるので、特に構造その他からみて一般家屋との均衡上課税客体とせざるを得ないものを除き、課税しないことが適当であること。」(同エ)と規定している。 
ここでもやはり、固定資産税と不動産取得税の規定は、表現が少々異なるが、趣旨は同じと解してよいものと思われる。 
なお、上記の規定には、「例えば鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等は一般に社会通念上家屋とは認められないと考える」との記述がされているが、これは、鶏舎等は構造上簡素なものが多く、社会通念上家屋とは認められないものの、その中でも一般的な家屋と同列に扱わざるを得ないものについては、課税客体となるとしているのであって、必ずしも全ての鶏舎等を家屋として認めないとしているのではないことに注意が必要である。 
また、不動産登記法上の建物であるかどうかを定め難い特殊な構造・用途の建造物の取扱いは、法務省の通達である「不動産登記事務取扱手続準則」に例示されており、この例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定することになる。 

3 価格の決定方法 

法第73条の21は、不動産取得税に関し、「不動産の価格の決定等」を規定しており、第1項では、「道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。」としている。前述のとおり、固定資産税と不動産取得税は、「所有」と「取得」という着眼点に相違がある税だが、その課税標準の「価格」は、不動産取得税についても原則として固定資産税における固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を基礎とする点で、両税は共通している。 
また、同条第2項は、都道府県知事は「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産」について、「第388条第1項の固定資産評価基準によって、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。」と規定するとともに、同条第3項は、「道府県知事は前項の規定によって不動産の価格を決定した場合においては、直ちに、当該価格その他必要な事項を当該不動産の所在地の市町村長に通知しなければならない。」としている。なお、「第388条第1項の固定資産評価基準」とは、総務大臣が「固定資産税に係る総務大臣の任務」として定め、告示しなければならない「固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続」を指すものである。 
ここで全体を通していえるのは、固定資産税と不動産取得税では、共に固定資産評価基準によって評価が行われるということである。これは、両税が、同じ法において家屋とその価格の定義を同じくする関係上、原則として同一の基準を用いた評価によってその価格を求めることが適切と考えられた結果によるものと思われる。ただし、両税に適用する固定資産評価基準が同じであれば、その再建築費評点数も同点数となることが原則であるが、固定資産税では価格決定に当たって、初年度から「損耗の状況による減点補正率」を適川するのに対し、不動産取得税の価格決定にはこれを適用しない等の差異もあるため、両税における価格が単純に同じになることはないことを念のため付言する。 
なお、注意を要するのは、固定資産課税台帳に価格が登録されていないため、不動産取得税における価格を求めるために都道府県が評価を行う場合である。前述のとおり法第73条の21第3項は、都道府県知事が「不動産の価格を決定した場合においては、直ちに、当該価格その他必要な事項を当該不動産の所在地の市町村長に通知しなければならない。」と規定している。これを受けて、法第409条第2項は、固定資産評価員(市町村長の指揮を受けて固定資産を適正に評価し、且つ、市町村長が行う価格の決定を補助するために、市町村に設置されるものであるが、その職務を市町村長が行うこともできる。)は、都道府県知事が家屋の所在地の市町村長に通知した価格があるときは、当該家屋について改築、損壊その他の特別の事情があるため当該通知に係る価格により難い場合を除くほか、当該通知に係る価格に基づいて、当該家屋の評価をしなければならないとしている。 
課税実務の中で、多くの都道府県と市町村の間では、木造家屋と一定規模に満たない非木造家屋の評価を市町村が行い、その他の家屋を都道府県が評価するという、いわゆる業務分担が行われていることと思う。しかしながら、法第409条第2項によれば、都道府県知事から通知を受けた価格、すなわち、不動産取得税の評価が自動的に、固定資産税における価格になるわけではなく、あくまで、当該通知に基づいて市町村の固定資産評価員が固定資産税上の価格の決定に必要な処置をした後に初めて固定資産税における価格となるとされていることに留意が必要である。 

4 価格決定の時期と適用される固定資産評価基準 

不動産取得税の評価に先立って市町村が評価を行い、当該家屋について固定資産課税台帳に価格の登録をしていれば、それが不動産取得税における価格の基礎となることは前述のとおりであるが、課税の要件が確定する日の違いにより、両税において適用される固定資産評価基準が異なる場合があることについても述べておきたい。 
固定資産税は賦課期日制度を採っている(法359)ため、家屋を新築した場合、これが完成した後に、最初に到来する賦課期日(1月1日)をもって課税要件が確定することになるが、不動産取得税は原則として家屋の取得をもって直ちに賦課されるため、基本的に課税要件の確定日が固定資産税の賦課期日より先に到来する。 
両税の評価に用いる固定資産評価基準は原則的に同一の基準であるが、固定資産評価基準は原則、3年毎に改正されるため、この課税要件確定日の違いにより、用いる基準が異なることがある。具体的に、平成20年5月1日に新築・取得した家屋の例をとってみたい(表参照)。 
                課税要件確定日  適用される評価基準 
固定資産税              平成21年1月1日 
(完成後最初に到来する1月1日)  平成21年度基準 
不動産所得税            平成20年5月1日 
(取得した日)  平成18年度基準 
この場合、適用する固定資産評価基準が固定資産税では平成21年度基準、不動産取得税では平成18年度基準となることに注意が必要である。 

5 おわりに 

以上、家屋の認定基準、価格の決定方法を例にとって、固定資産税と不動産取得税の関係について基本的事項ながら若干の説明をしてきた。 
最後に、都道府県知事が家屋の評価を行い不動産取得税における価格を決定した場合において、市町村の評価担当者に特に留意いただきたい点を、書き加えておきたい。 
この場合も、固定資産税の家屋の価格については、都道府県知事から通知された価格を基に市町村の固定資産評価員が評価をすることから市町村側にはその評価の責任が当然に生じてくるものである。したがって、評価を含めた固定資産税に関する納税者からの疑問に対して市町村側が、「実際の評価を担当したのが都道府県」であることや、「評価関係資料を都道府県が廃棄してしまった」という理由のみで十分な説明を行えないようなことでは、課税庁としての責任を果たしているとは言い難いと思われる(この様なことは、市町村の評価担当者に都道府県との家屋評価の分担のデメリットを質問すると、度々聞かれるところでもある。)。昨今は、これまでに増して説明責任が重要視されてきている。市町村においては今一度、固定資産税の対象となる全ての家屋に関する評価の責任は自らにあることを理解いただくよう、お願いしたいと思う。