10年ぶり引上げで中医協 診療報酬 配分めぐり攻防



10年ぶり引き上げで中医協 診療報酬 配分めぐり攻防 (東京新聞 2010年1月28日) 

医療崩壊の流れを食い止めようと、十年ぶりの引き上げが決まった二〇一〇年度の診療報酬。 
厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)で現在、具体的な報酬配分を検討している。 
改定案の答申は二月中旬に迫っているが、病院と診療所の再診料統一などでは、議論が暗礁に乗り上げている。(佐橋大、境田未緒) 
  
「再診料は最低でも七十一点(七百十円)だ」。 
今月十五日の中医協総会。 
委員の一人、安達秀樹・京都府医師会副会長は、病院の再診料を上げ、診療所を下げて統一するよう求めた健康保険組合側の委員に反ばくした。 
  
病院や診療所の初診料は一律だが、再診料は 病院(二百床未満)が六百円、診療所は七百十円。 

再診料で差が生じたのは一九八五年から。厚生労働省は「病院は入院患者の受け入れ、診療所は外来患者の診察と、それぞれの機能に力を入れてほしいという観点から差をつけてきた」と説明する。 

ただ、近年は同一サービス同一料金の考え方や、病院重視の流れもあり、中医協は改定の骨子案で、再診料統一を打ち出した。 
  
問題は、どこで一本化するか。 
健保など医療費を支払う側の委員や厚労省は、診療所の再診料を下げ、病院を上げて一本化する考え。 
開業医が主体の日本医師会(日医)などは、診療所レベルへの引き上げを求める。 
  
日医によると、診療所の収入に占める再診料の割合は8・5%と高く、引き下げれば経営が成り立たなくなる診療所も出るという。民主党内にも日医に同調する動きがあり、混迷を深めている。 
     ◇ 
 傷の処置や検査をせず問診だけの場合、再診料に上乗せされている外来管理加算(五百二十円)も焦点の一つ。 目に見える検査などと違って患者には理解しにくい料金で〇八年、「懇切丁寧な説明」を要件として、問診が五分超でないと加算を認めない「五分ルール」が導入された。 
 時間だけで機械的に診察の価値を決めるルールに医療関係者は反発。 
「(医療界全体で)年間八百億円の減収になった」との主張もあり今回、ルール撤廃が決まった。 
撤廃だけでは算定回数が増えて財源を圧迫する可能性があり、新たな要件や加算額の見直しが必要とみられるが、議論は進まない。 
  
このほか勤務医の負担軽減策で、救命救急センターを受診した軽症患者から特別料金を徴収する制度も検討課題だが、日医などは時期尚早としている。 
ぎりぎりまで、限られた財源をめぐる配分の攻防が続きそうだ。 

◆無駄解消へ患者も協力を 
 中医協の議論は、昨年十二月に社会保障審議会の医療部会・医療保険部会がまとめた「診療報酬改定の基本方針」に沿って進められている。 
医療部会長として方針をまとめた斎藤英彦・名古屋セントラル病院長に改定の考え方などを聞いた。 
     ◇ 
 基本方針は「救急、産科、小児、外科などの医療の再建」「病院勤務医の負担の軽減」を重点課題とした。 
 ただ、医療費全体の底上げは必要。日本の医療費の対国内総生産(GDP)比は国際的に見て低い。 
一方で自己負担額は高い。 
厳しい経済環境が続く中、底上げ分は税金でカバーすることも必要では。外科医の減少などがあり、特に手術点数を上げなければいけない。 
 ちょっとした風邪で大病院に行けば、重症患者に手が回らなくなることもある。 
同じ病気であちこちの病院にかかれば同じ検査を繰り返し、医療費がかさむ。 
現場の疲弊を防ぎ、医療費の無駄遣いをなくすためにも患者さんの協力は欠かせない。 
 今後は国民がどのレベルの医療を望み、そのためにどれほど金を使っていいのか合意を得ていく必要もある。