亀田総合病院報 2010年11月号 巻頭言・亀田総合病院長 亀田信介

亀田総合病院報 2010年11月号 巻頭言・亀田総合病院長 亀田信介 

国民IDの価値 

 最近100歳を超えた高齢者に多数の所在不明者が存在することが,全国的に大きな話題となっています。 
多分80歳代,90歳代の高齢者を調査したら,更に多数の所在不明者の存在が判明するでしょう。 
同様に年金問題においても,国の威信をかけ膨大な人材と時間を費やし調査をしているにもかかわらず,名寄せは未だに完了せず,何時終わるかも解りません。 
日本のような移民も少なく,さほど大きくない先進国で,何故この様に個人データの管理も追跡調査も出来ないのでしょうか? 

 日本には個人にひも付いた統一番号が有りません。 
この事は先進国の中では極めて異例のことです。 
以前から何度も議論には上がっていながら,省庁の壁や国民の誤解により実現しませんでした。 

今回政府は2013年を目処に国民IDを創設しようと計画していますが,何としても実現してもらいたいと思います。 
統一IDにより国民に対する国家管理が強くなるのではないかという懸念もありますが,今後の超長寿社会においてはそれを遥かにしのぐメリットが有ります。 

 医療,介護の分野においても,ひとりの患者さまに対してそれぞれの機関ごとに独自のIDを付けているため,同一人物が多数のIDを持つこととなり,情報共有の大きなネックとなっています。 

 昨年,当院では社会保障カードの実証実験を行いました。 
基本的な考え方として,様々な情報を集めた大きなデータベースを作るのではなく,分散された多くのデータベースに中継データベースを介してアクセスをし,情報を活用するというものです。 
中継データベースでは個人の認証と権限の管理を行いますが,そのためには統一番号が必要となり,今回の実証実験では,参加者に独自の社会保障番号を付与しました。 

今回の実験では,当院で構築した患者さま参加カルテPLANET,鴨川市の住民検診データ,保険者からの医療費のお知らせ,保険証資格確認,年金情報(ダミーデータ)へのアクセスを可能にしました。 

 今後は,これらの情報基盤を活用,発展させ,安房全域を対象視野に,住民の誰もが医療,介護情報のみならず,行政による様々な住民サービスや地域情報を管理,活用できる地域情報ネットワークシステムを作り上げようと計画しています。 

ですが,それを実現するためには統一IDが不可欠です。 

 住基ネットは何故ほとんど活用されないのでしょうか? 
最も大きな原因は,国民の視点で作ったのではなく行政の視点で作られ,国民にとっては上からの押しつけと感じたり,欲しいサービスメニューがあまり存在しないからではないでしょうか。 

従って,今後の計画を進める上で最も重要なことは,住民のための情報システムであり,医療機関や行政の視点は二の次にすること。 
多くの人が使いたい,便利,良かったと思える多くのコンテンツを持つこと。そして誰もが簡単に,安全に使えることだと考えます。 

 超長寿社会に於けるICT(lnformation and Communication Technology : 情報通信技術)の活用とはいかにあるべきか! 安房から全国に向けて発信して行きたいと思います。