『2009年最初の情報提供です。私にとっても明るいニュースから始めさせていただきます。2005年7月、 名古屋市立病院経営改善推進委員会の委員長 所見を 名古屋市医師会報、2008年12月1日号で取り上げて戴きました。』 長 隆

 

『2009年最初の情報提供です。私にとっても明るいニュースから始めさせていただきます。2005年7月、 名古屋市立病院経営改善推進委員会の委員長 所見を 名古屋市医師会報、2008年12月1日号で取り上げて戴きました。 』 長 隆


「名古屋市民病院と公立病院改革プランの行方」 

(笠松正憲 名古屋市医師会調査室、医療法人かさまつ皮膚科理事長) 
     
掲載雑誌:  名古屋医報,第1327号、p 8~14、2008.12. 

1.救急の充実を 

名古屋市立病院再編計画では、西部医療センター中央病院の周産期医療センターと小児医療センター、東部医療センター中央病院の脳血管センターと心疾患センターで救急を予定している。 

「西部医療センターの場合、小児科医を15人、産婦人科医を10人以上集めれば365日24時間救急に対応できる」と上田病院局長は述べている。 

しかし、現時点において市立病院全体でも小児科医は17人、産婦人科医は14人である。 

上田局長は「名古屋市立大学に3年後に備えて人員確保をお願いしている。 
また、二つの中央病院が救急を担い、魅力ある病院になれば若い医師が集まる」とも述べている。市民の期待にこたえるべく、最大限の努力を期待したい。 


2.経営形態は今のまで良いのか 

前述の通り、名古屋市立病院は地方公営企業法の全部適用を行った。比較的取り組みやすい手法であるが、民間経営手法が不徹底になりがちな点を監視する必要がある。 

地方公営企業法の全部適用については、人事・予算等の権限を付与し、自立的運用を行うことが目的である。 
しかし、現在すでに全部適用をした公立病院の状況からは、医師確保や経営改善を図る上で、必ずしも有効な手段になっていないと聞く。 

しかしながら、独立行政法人等への移行は、経営計画の策定に時間を要すことや、職員の身分などの様々な問題を解決していく必要があるため、容易にできるものではない。 

今後、再編。ネットワーク化の進展状況等も踏まえつつ、地方独立行政法人化(非公務員型)や指定管理者制度へ移行することも考えられるであろう。 

元名古屋市立病院経営改善推進委員長であり、総務省公立病院改革懇談会座長である長隆(おさたかし)氏は、 

『名古屋市立病院の医師・看護師不足ヘの提言』として面白い提言をしている。 

『基本計画では、全く病床削減しないということになっているが、思い切って2センターに特化して病床数を50%削減し、名古屋市立大学付属病院として一体経営化する選択肢もあろう。 

市立大学の教授がセンターに臨床指導に出向き、センター病院の医師を臨床教授に登用する。 
看護師も、大学と付属センターと一体の人事としてレベルアップし魅力ある看護師教育がなされるべきである』 
と述べている。この意見は委員会の提言内容には盛り込まれなかったが、私は参考とすべきと考える。 


3.特色のある病院作りを 

「何もかもやる、はもう無理。集中と選択が必要だ。各病院に特色がないことが問題だ。得意分野が分かりにくい病院は、患者も選びにくい。」と上田病院局長は述べている。 

同感である。しかしながら、周産期医療センター、小児医療センター、陽子線がん治療、脳血管センター、心疾患センターどれも重要な施設であることは事実だが、全国的にみて特長があると言えるだろうか。 

松原武久名古屋市長が「名古屋市立大学は名古屋市の宝である」といっているように、名古屋市立大学医学部および大学病院を自前で保持している市の利点を最大限生かしてほしい。 

すなわち最新の医療施設、技術および人材の活用である。私が皮膚科医であるから言うわけではないが、社会的問題となっているアトピー性皮膚炎に対応し『アトピー性皮膚炎専門病院(病棟)』、あるいは患者が急増している尋常性乾癬に対応した『乾癬専門病院(病棟)』など、全国でも類をみない特色ある病院作りの発想が必要であろう。 

「日本全国から患者を集める」考えを持ってほしい。先に挙げた公立病院改革ガイドラインには『経営感覚に富む人材の登用等』について『経営効率化の実現に向けては、経営形態の如何に関わらず、病院事業の経営改革に強い意識を持ち、経営感覚に富む人材を幹部職員に登用(外部からの登用も含む。)することが肝要である。こうした人材登用等を通じ、医師をはじめ全職員の経営に対する意識改革を図り、日標達成に向け一丸となった協力体制を構築することが不可欠である点に特に留意すべきである。』と記述されている。 

病院局長に企業経営のプロを、病院長や医師に学閥等にとらわれない特徴のある医師の招聘というのも魅力ある市民病院を作るのに大切な観点だと私は考える。 


最後に、自治体病院が、それぞれ地域医療に果たしてきた役割が、現在の社会状況の中で十分に果たせなくなってきていることは、まず認識しなくてはならない。 

また、国が財政再建の方針を、地方自治体をも例外とせず適用しようとしている今、自治体病院は採算度外視の経営は認められなくなる 

。経営を再生するには何が必要か。何よりもまず、自治体病院が「お役所体質」から脱皮することが求められるだろう。病院職員一丸となって収入増とコスト削減に取り組む必要がある。 
  
さらに言えば、自治体病院の問題は、病院に勤務する者だけの努力で解決するものではない。 
住民(患者)も地域医療を担う「当事者」であることを意識すべきである。 
自らの病気や健康についてよく知り、かかりつけ医を持ち、何でも病院で受診するという診療行動を考え直さなければならない。 
軽症なのに休日・夜間に病院で診療を受ける「コンビニ受診」を減らす必要がある。 
病院勤務医が過酷な勤務で退職しないよう、負担軽減を図ることも重要なのである。今の体制のままでは、病院財務の悪化や医師不足が契機となって、医療崩壊を起こす病院が続出するだろう。自治体病院の崩壊を防ぐために、地域に住む関係者が一体となった取り組みを行うことが求められている。 
  

さて、名古屋市立病院について言えば、市民の医療ニーズに沿った高度医療や救急医療に対応することが求められている。 
現在進めている西部医療センター中央病院の整備に留まらず、東部医療センター中央病院の施設充実にも力を注いでほしい 

。先に、自治体病院改革の視点を列挙したがいろいろな問題が予想される。単純な経営母体の統合だけなら住民や地域医療機関も受け入れることができるが、必ず規模等のリストラが伴う。 

そうなると受け入れ難い地域も出てくる。実際に名古屋市内でも、サテライト病院となる地域住民や医療機関からは不満の声があがっていると聞く。 
『むだ使いをせず、こういうところにお金をつぎこんで、田舎でも安心して最低限の医療を受けられるようにしてほしい』といった旨の市民の意見は大切なものである。 

国から求められたとはいえ、「公立病院改革プラン」を作成することは、市民病院の意義を考える良い機会になるであろう。名古屋市立病院のあり方を十分に議論し、どのような特色のある「公立病院改革プラン」が作成されるか期待して見守りたい。名古屋市および名古屋市民病院を愛する調査室新人委員のつぶやきでした。