宮崎県 地域医療を守る県北ネットワークの会・清本英男代表 厳しい労働環境が医師を遠ざけ、「コンビニ受診」も状況を悪化させているとみられる。会の清本英男代表は要請の席で、「医者は月に10回も呼び出され、寝る時間もないと聞く」と述べ、市民の病院利用のあり方を戒めた。




宮崎県 地域医療を守る県北ネットワークの会・清本英男代表 
厳しい労働環境が医師を遠ざけ、「コンビニ受診」も状況を悪化させているとみられる。会の清本英男代表は要請の席で、「医者は月に10回も呼び出され、寝る時間もないと聞く」と述べ、市民の病院利用のあり方を戒めた。
 
宮崎大医学部池ノ上克(つよむ)・学部長は県と病院が話し合えば、解決できないことはないはず 



[転機・09年県予算](下)医師確保、官学民協力を(連載)=宮崎 
2009.03.04読売新聞   
  


 ◆生死に影響、待ったなし 

 知事応接室は熱気に包まれていた。東国原知事を訪ねた「地域医療を守る県北ネットワークの会」のメンバーが横断幕を掲げ、県立延岡病院(延岡市)の医師確保を強く迫った。 

 同病院では3月末までに医師6人が退職し、腎臓内科と神経内科は4月から休診する見通し。会は危機感を募らせ、2月27日の要請までに15万1907人分の署名を集めた。 

 年間延べ25万人前後が利用する延岡病院では2006年以降、眼科、精神科、消化器内科と休診が相次ぐ。根本に慢性的な医師不足があるものの、厳しい労働環境が医師を遠ざけ、「コンビニ受診」も状況を悪化させているとみられる。会の清本英男代表は要請の席で、「医者は月に10回も呼び出され、寝る時間もないと聞く」と述べ、市民の病院利用のあり方を戒めた。 

 「患者の会」(約50人)の貫慶雄代表(73)(延岡市無鹿町)も地元での受診継続を望む一人だ。「足が不自由なので、移動に他人の手を煩わせたくない」という。糖尿病の不安があり、腎臓内科休診に頭を抱える。「(休診で)人工透析患者が民間病院に集まると、受け入れられない患者が出る恐れがある」 

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 県立日南病院(日南市)では来年4月以降、小児科医の確保の見通しが立たない。宮崎大医学部は3月末で、派遣する医師2人を戻す予定だったが、県南地域で幼い子を持つ親らの熱心な働きかけもあり、派遣の1年間延長を決めた。しかし、課題は先送りされただけに過ぎず、住民は不安を抱いたままだ。 

 県は当初予算案に、県立3病院の医師給与などの改善(約2億8000万円)や、医療秘書の導入(約3000万円)などで計3億7000万円を計上した。延岡病院対策としては、宿直や日直アルバイト医師の確保(約3000万円)、医師給与の改善などで初任給調整手当を1人当たり年間平均約170万円増やす。梅原誠史・県病院局次長は「できる限りの手を尽くし医師の負担軽減策を図ったが、決め手になるとは言えない。自治体側も深夜の診療体制を充実してほしい」との立場を崩さない。 

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 退職する医師6人のうち、2人が戻る宮崎大医学部。池ノ上克(つよむ)・学部長は「県の支援は待遇や処遇改善につながる」と歓迎するが、派遣の継続には様々な課題が横たわる。ただし、「県と病院が話し合えば、解決できないことはないはず」とも付け加えた。今春の入試からは、将来県内で勤務することに主眼を置いて選ぶ「地域特別枠」(5人)も設けている。 

 医師不足や不十分な医療は生死に影響する。県民の暮らしを支えるため、早急に解決すべき課題は山積しており、住民と行政、大学の協力は不可欠。地域医療の“根治”は待ったなしだ。 (この連載は陶山格之、馬場豊、江崎宰が担当しました)