『藤沢町民病院も夕張医療センターも、全国から多くの若い医師が訪れている。 藤沢は私の目標。その藤沢がある岩手の医療は絶対に崩壊してほしくない。県民が意識を変えてほしい』 村上智彦 医師



『藤沢町民病院も夕張医療センターも、全国から多くの若い医師が訪れている。 
藤沢は私の目標。その藤沢がある岩手の医療は絶対に崩壊してほしくない。県民が意識を変えてほしい』 村上智彦 医師 




★SOS地域医療 「各地の挑戦」インタビュー★(3) 村上智彦(北海道・夕張医療センター長) 住民の意識変革必要 
2009.02.24岩手日報  
  


 ―夕張の医療はなぜ崩壊したのか。 

 「住民意識の問題だ。権利だけを主張して(重症でもないのに救急を利用する)コンビニ受診を繰り返したり、医療費を払わなかったりした。健康に対する意識も低く、不摂生を繰り返して病気になり、高額な医療費を使って地域財政を圧迫していた。市民が意識を改めないと、地域医療の再生は図れない」 

 ―岩手でも、県立診療所の無床化などで反対運動が起きている。 

 「早く目を覚ませと言いたい。わがままな要求ばかりしている地域に来る医者はいない。限られた医者と、自らの健康を大切にする活動をすべきだ。医療崩壊するまで気づかなかった夕張のようになってほしくない」 

 ―夕張医療センターが実施している訪問診療では糖尿病、がんなどあらゆる病気の患者がいる。 

 「病名はさまざまだが、ほとんどは生活習慣病だ。かつて日本の医療は結核などの感染症との闘いで、専門医療がなければ患者は助からなかった。生活習慣病は予防が可能で、家庭で療養もできる。高齢化社会とは障害とともに生きる社会であり、病気と闘う医療よりも、患者を支え、寄り添う医療が求められている」 

 ―本県の藤沢町民病院が取り組んでいる保健、医療、福祉が一体となった「地域包括ケア」が夕張でも生かされている。 

 「医者が診察できるのは病人だけで、大多数の地域住民とふれあえるのは保健師や介護ヘルパーらだ。藤沢町は、こうした人たちの能力がとても高く、地域住民の生活背景をしっかり把握している。少しでも様子がおかしければ医師に連絡するので重症化しない。医師はとても助けられ、医療費も安く済む」 

 ―夕張医療センターに老人保健施設を併設している。藤沢と同じ形態だ。 

 「医療はそれ自体が目的でなく、患者が家族に囲まれ、生きがいを持って暮らすための手段でしかない。だから夕張医療センターは、社会復帰に向けたリハビリを行う老人保健施設が主役で、それを支えるために医療センターがある」 

 ―藤沢町民病院も夕張医療センターも、全国から多くの若い医師が訪れている。 

 「日本の医学教育は専門医の育成に主眼が置かれているが、高齢化が進めば進むほど、訪問診療などが重要になる。何でも診れる総合医が大切になってくる。病院自体が地域医療に対する理念をしっかり持っていれば、高い報酬は出せなくても、総合医を目指す医師は集まる」 

 「藤沢は私の目標。その藤沢がある岩手の医療は絶対に崩壊してほしくない。県民が意識を変えてほしい」 

 村上智彦氏(むらかみ・ともひこ) 医師、薬剤師、臨床検査技師。自治医大地域医療学教室臨床派遣助手、98年から1年間、国保藤沢町民病院勤務。07年夕張医療センター長。47歳。北海道枝幸(えさし)町出身。 

〔「住民の意識が変わらないと、地域の医療は守れない。地域医療はまちづくりそのものだ」と語る村上智彦医師〕 

岩手日報社