三重県 病院事業のありかた 答申は 官僚経営の欠陥を厳しく指摘 病院事業庁(県立病院経営室)の廃止まで勧告していた。



三重県 病院事業のありかた 答申は 官僚経営の欠陥を厳しく指摘 病院事業庁(県立病院経営室)の廃止まで勧告していた。  


一志病院、民間譲渡へ 三重県立4院 改革方針案 
2009年2月17日・18日中日新聞 

 三重県は、県立一志病院(津市)の民間譲渡など県立4病院の改革方針案をまとめた。公立病院の民間譲渡は東海地方では例がなく、全国では昨年3月までに19病院で実施。県は県議会や病院職員と協議して改革方針を正式決定し、決定から3年以内に新たな運営形態に移行する。 

 一志病院は「診療圏が津市内に限定され、県立病院としての位置付けが不明確」とされた。2008年度は8700万円の経常赤字見込みで、収益の悪化も指摘されていた。 

野呂昭彦知事は17日の県議会全員協議会で、津市の県立一志病院を民間譲渡するなど県立病院改革方針案を示した。「一志病院は残念ながら県立としての維持は難しい」と説明。県議からは反発の声が相次いだ。 

 改革案では、2011年度末をめどに四日市市の総合医療センターを地方独立行政法人に、志摩市の志摩病院を民間に運営してもらう指定管理者制度に移行し、病院事業庁を廃止するとした。津市のこころの医療センターは公営企業として現在と同じ形で続ける。 

 県立病院事業は一般会計から毎年40億円近い繰り入れをしても赤字が続いており、野呂知事は「病院の存続すら危ぶまれる。改革の先送りはできない」と強い口調で話した。一志病院の譲渡先や志摩病院の指定管理者は公募で事業者を選定。一志病院は譲渡後も資金の支援を続ける。 

 県議の質疑は改革案に否定的な意見ばかりだった。西塚宗郎氏(新政みえ)は「経営形態を変えても医師が増えるかどうか分からず、問題を解決する方向が見えない」と指摘。萩原量吉氏(共産党県議団)は「採算性だけで判断し、地域医療を切り捨てる行為」と批判した。改革案は定例会で審議。県議会と病院職員から承認を得られれば、移行作業に取り掛かる。 

 一志病院の飛松正樹院長は「三重大の協力で、地域住民の健康問題を担う家庭医療という新分野に取り組んできた。さらに発展させたかったが野呂知事は経営面から判断したのだろう」と無念さをにじませた。 

 志摩病院(志摩市)は指定管理者制の導入、総合医療センター(四日市市)は地方独立行政法人への移行を進める。精神科の「こころの医療センター」(津市)は県立のままとする。 




以下三重県 病院事業のありかた 答申(平成20年9月9日)抜粋 

第2節 病院事業庁(県立病院経営室)の在り方について 


1.現状の評価と課題 

(1)病院事業庁(県立病院経営室)について 

① 病院事業庁(県立病院経営室、以下「本庁組織」という)は、県立病院の組織人事、経営企画、財務及び県議会・情報公開等の行政対応の他、4病院間或いは知事部局との調整を担当しており、職員の大半が行政職で構成されている。 

② 本庁組織の実態としては、4病院間或いは知事部局との連絡調整等としての側面が強く、組織として経営ノウハウの蓄積がなされていないことから、病院現場から要請が高い経営支援については必ずしも対応できていないと見られる。 

③ この要因としては、事務職員が知事部局との人事交流により短期間で異動すること、医療職が少なく全体の経営に携わった経験者がいないこと、本庁組織が病院現場から離れて位置していることなどが考えらる。 

(2)本庁組織と病院現場の関係 

① 議会等への対外的な説明は、病院現場の職員ではなく本庁職員が行う体制となっており、効率的ではる。しかしながら、本庁組織が病院現場の事情を十分に把握していないとの批判や、逆に病院現場が本庁組織に判断や責任を依存し、自立性や主体性を欠いているとの指摘も聞かれることから、本庁組織と病院現場の間には不信感が先行し、協働関係が取りづらい状況になっていると思われる。 

② 県立病院は近年、医業収益が落ち込む一方で費用は増加している。医療費抑制基調の中で経営を改善するためには、増収対策とともに費用の抑制がより重要となる。このことから病院は、収入や資金繰りの状況を踏まえ、主体的に費用執行の判断を行う必要がある。しかし、病院長には人事権がなく費用の大半を占める人件費が管理不能であること、人件費以外の費用の権限は病院長にある一方で、資金管理は本庁組織で一括対応しており病院は資金繰りを意識せずにすむことなどのシステム的な要因から、病院が責任をもって主体的に費用をコントロールする仕組みになっていない。 

(3)病院の経営管理体制について 

① 病院を取り巻く環境が大きく変化する中で、公共の福祉の増進と効率的な経営を両立させていくためは院長のリーダーシップの発揮と、組織全体として迅速かつ柔軟に対応することが必要である。しかしながら、病院長を支える事務職員は、知事部局との人事交流により配属されることから専門性を持たないこと、単年度で区切られる予算や人事の制約により対応のスピードが遅いことなどから、刻々と変化する地域の医療ニーズに即応できる体制とはなっていない。 

② 医療費は抑制基調にあり、医業収益の大幅な増加が望みにくい状況にあることから、病院事業の経営の安定化には人件費の抑制が求められる。しかしながら現状の病院事業庁は、柔軟な給与体系の見直しや機動的な人員管理が行えない体制であり、結果として医業収益に対する人件費の比率は上昇傾向にある。 

③ 役割機能や規模が異なる4つの県立病院は、総合医療センターでは看護師不足が、一志病院や志摩病院では医師不足が最も深刻な課題となっているなど、抱える経営課題もそれぞれ異なっている。 
さらに、地域環境を踏まえた病院個別の給与体系や柔軟な勤務体系の構築は、公務員制度の枠組みの中では制度的に困難となっているほか、4病院が離れて立地しているために医療スタッフの病院間の異動がスムーズに行えないなど、事業庁全体として柔軟で効率的な運営はなされていない。 

2.今後の方向性 
( 
1) 病院職員のモチベーション向上及び経営責任の明確化のためには、病院長が名実ともに経営責任者として、人事、予算(資金)の権限を持ち、柔軟に運営 
方針を決定できるようにするとともに、対外的な説明責任もすべて負うことが必要である。このため、4つの病院をそれぞれの組織(法人)として分離させるとともに、病院事業庁(県立病院経営室)は廃止・縮小させることが適当である。 

(2) 目まぐるしく変わる医療環境に対応していくためには、経営を支える事務部門の強化が重要となる。従って病院固有の経営人材の確保が求められる。 
( 
3) 県立病院はいずれも医療スタッフが不足しており、しかも不足する職種や地域事情、課題は病院によって異なる。このため、地域事情にあった勤務体制や 
魅力ある給与体系を病院毎に確立し、短時間勤務の導入や非常勤職員の積極的な活用などにより医療スタッフを確保することが求められる。 

(4) 医療費抑制基調の下で、経営を安定化させ、地域住民に継続して良質な医療を提供するためには、人件費総額の抑制と職員のモチベーション向上につなが 
る給与体系の構築が必要である。現行の給与体系を改め、職務の責任や困難度合いに応じて公平に処遇されるようなシステムを確立することが求められる。