『東海道沿線の 中核都市でも医師不足』



『東海道沿線の 中核都市でも医師不足』 



[医療改革・提言](3)常勤医確保、至難の業(連載)=神奈川 
2009.02.15 読売新聞   
  

 ◇神奈川の現場から 

 不足する産科医確保を狙って、藤沢市民病院が昨年7月に導入した分娩(ぶんべん)介助手当は、お産1回につき1万5000円、夜勤時は2倍の3万円を支給するという内容だ。多い医師で月に40万円ほど収入が増えた。 

 産婦人科の常勤医は現在5人。日勤では、昼食時間も惜しんで30~40人の外来診察をこなす。夜勤はOBの開業医を含めた6人が、それぞれ月に4、5回入っている。朝の交代後も帝王切開手術が入ることも珍しくなく、そのまま夕方まで32時間勤務となる。 

 夜間に帝王切開などの緊急手術が入った時、すぐに駆け付ける「待機日」もあり、心休まる日は少ない。それでも、手当導入後の産婦人科について、毛利順医長(58)は「お産を扱う時の士気が上がってきた」と語る。 

      ◇ 

 産科は「いつ来るか分からない陣痛」に備え、24時間の当直勤務が必要だ。だが、自治体病院の医師は公務員のため、条例で決まっている給与を引き上げるのは容易ではない。そこで、待遇改善の“苦肉の策”として各市で導入が相次いでいるのが、分娩手当だ。 

 小田原市立病院は06年10月から分娩介助手当を導入し、主治医には1件につき3万円を支給し始めた。大和市立病院も07年7月から同2万5000円を支給している。 

      ◇ 

 大学病院に引き揚げた医師の補充ができず、07年8月に産婦人科を休診した厚木市立病院でも、同年11月から、病院業務手当として月83万5000円、分娩介助手当2万円(夜間・休日は4万円)を設定し、産科医確保に乗り出した。 

 小林常良市長が「県内最高」と胸を張る破格の待遇だが、1年2か月を経ても、医師1人を確保し、婦人科を再開させるので精いっぱい。お産には最低3人の常勤医が必要で、再開のめどは立っていない。 

 同病院総務課は「医師を派遣してきた大学自体、産婦人科医が減っており、新たな確保はままならない」と苦しい事情を明かす。 

 藤沢市民病院の毛利医長は、12年前の赴任以来、激務の産婦人科から、緊急対応の少ない眼科や皮膚科へと移っていく30代の若い医師を何人も見てきた。 

 「命が誕生する瞬間の喜びは格別。立ち会うと、いつもじんとくる。それが産科の魅力」と毛利医長。手当だけでは新たな医師確保につながりにくい現状を憂いながらも、志望する若い医師が増えることを願っている。(水戸部絵美) 


 
《提言要旨》 

 ◆緊急対策 病院勤務医、激務に見合う給与引き上げ 

 ◆構造改革 医療の質を高め、安全性を確保 

 医療の質や安全を確保するため、勤務医の待遇改善や、専門医と開業医の役割分担の見直しが急務だ。 

 勤務医は、36時間連続勤務が常態化するほどの厳しい労働環境にある。しかし、医師を大幅に増やすことはすぐにはできない。せめて給与の大幅アップなど待遇改善で激務に報い、今の勤務医にとどまってもらうことが欠かせない。 

 勤務医と開業医の役割の見直しは、早急に行う必要がある。開業医は、病院勤務時代の専門診療の経験を踏まえて独立するケースが多いが、それでは幅広い症例に対応できない。患者が病院に集中し、勤務医の疲弊も加速する。 

 まず、複数の診療科にわたる症例を診察でき、必要なら専門医に紹介する能力を持つ「家庭医」(総合診療医)を育てることが必要だ。また、高い手術能力などを持つ勤務医については、技術料など、より手厚い報酬を用意すべきだ。