無床診療所化・・・・・長崎県県離島医療圏組合奈良尾病院 院長山崎一美さん 「以前は入院患者が四十人を超えることもあり、もっときつかった。だから、住民が入院しなくていいよう早い段階で対応したら、入院数は減った。そうなればベッド数も減らすべきだ。だがそれは医療の後退ではない。無床診療所はゴールであり『進化』だ


 無床診療所化・・・・・長崎県県離島医療圏組合奈良尾病院 院長山崎一美さん 「以前は入院患者が四十人を超えることもあり、もっときつかった。だから、住民が入院しなくていいよう早い段階で対応したら、入院数は減った。そうなればベッド数も減らすべきだ。だがそれは医療の後退ではない。無床診療所はゴールであり『進化』だ  

長崎の医療は今<第1部>揺れる公立病院・1/奈良尾病院〈上〉/深刻な派遣医師不足/ベッド数ゼロは「進化」 
2009.01.01 長崎新聞   
  

 医師不足、診療報酬の抑制、患者のたらい回し-。わが国の「医療崩壊」が叫ばれて久しい。県内でも地域医療を支えてきたいくつもの公立病院が経営危機に陥っている。本紙は「長崎の医療は今」と題し、今年一年を通じて県民を取り巻く医療の現状を考える。第一部では、人口当たりの医師数が県内で最も少ない上五島地域、二〇〇九年度に診療所に縮小する松浦市民病院、昨年四月に指定管理者制度に移行した大村市民病院の「今」を追う。 

 65歳以上4割 

 南松新上五島町南部の奈良尾地区。昨年十二月九日午後、高台にある県離島医療圏組合奈良尾病院の白壁が陽光を反射していた。眼下の港には数隻の小型漁船。奈良尾出身の事務長、松竹清(52)が口を開いた。 

 「昔は漁船で港がいっぱいになっていた時もあったんですよ」 

 奈良尾は戦後、イワシ、アジ、サバの巻き網漁船の基地として栄えた。昭和二十-三十年代前半は約五十船団あり、月夜間には休漁する船が港にひしめいた。だが水揚げの減少などで、今は七船団しかない。

 斜面に張り付くように広がる集落の中腹にあった保育所は、子どもが少なくなり、昨年四月に休園した。急速に過疎化と高齢化が進む。人口は町内五地区(新上五島町に合併した旧五町)の中で最少の約二千八百人。六十五歳以上の高齢化率は最も高く、四割近くを占める。奈良尾病院はそんな地域の医療を支えている。 

 十二月十日午前八時、朝日が差し込む二階の病室。 

 「もう熱はないですね。せきも出ませんね。来週には退院できると思います」 

 院長の山崎一美(44)が肺炎で入院中の男性(69)に告げた。泊まりで看病していた妻(74)は「よかったね」と夫に笑顔を向けた。 

 常勤医は2人 

 山崎は毎朝、もう一人の常勤医、早田明彦(32)と二人ですべての患者を回診する。すべてと言ってもこの日は十四人。総ベッド数六十を大きく割り込んでいる。 

 入院患者は主に早田が担当するが、早田がいなくても対応できるよう山崎との二人主治医態勢。回診を終えた山崎は足早に一階に下り、外来患者の診察を始めた。専門は内科。一日に約百人を診るという。 

 長崎大から毎週派遣されていた外科医は、昨年一月から隔週になった。同じ県離島医療圏組合の上五島病院から月一回派遣される泌尿器科医も、昨年四月から来られなくなった。いずれも大学の医師不足が原因。山〓[※注1]はこれら専門外の疾病も一通り診察する。 

 長崎大から外科医が来ない週は、日中に急患が飛び込むと外来は一時ストップする。当直も山崎と早田の一日交代。山崎は二年前のある夜、入院患者の血圧低下に伴う容体悪化と、心肺停止の急患を同時に一人で乗り切った。 

 「以前は入院患者が四十人を超えることもあり、もっときつかった。だから、住民が入院しなくていいよう早い段階で対応したら、入院数は減った。そうなればベッド数も減らすべきだ。だがそれは医療の後退ではない。無床診療所はゴールであり『進化』だ」。山崎]は言う。