インタビュー/3病院の統合成功を望む 総務省公立病院改革懇談会・長隆座長(67)

長崎市立市民病院


 インタビュー/3病院の統合成功を望む 総務省公立病院改革懇談会・長隆座長(67) 

-長崎市の問題をどう見るか。 

 非常に注目している。ガイドラインでは明確に「日赤」の実名を挙げて病院の再編・統合を求めており、国も日赤長崎原爆病院との統合を成功させてほしいと思っている。』          
     
  
    ながさきインサイド/報道部 堂下康一/長崎市の見直し案と県案を比較 
2009.02.01長崎新聞   
  

 県が長崎市に市立市民病院、成人病センター、日赤長崎原爆病院を統合して高機能病院を建設するよう求めている問題で、市は市民病院と成人病センターを合併する従来計画の見直し案を公表した。見直しの主な部分である医師数、病床数について県案と比較する。 

◎医師数は県案が現実的 市、2月下旬までに態度決定 

◇医師数 

 市は当初案の八十二人を九十二人に増員した。だが、二〇〇九年一月一日現在で市民病院と成人病センターには計六十九人しかおらず、新たに二十人以上の増員が必要となる。これに対し、現在、両病院の医師の大部分を派遣している長崎大は、医師不足を理由に、今後の協力は困難との見通しを示している。また、当初案で「数人」としていた前期、後期の研修医はそれぞれ二十人、三十人と明示した。 

 県案における新病院の医師数は百八人。一方、長崎原爆病院(五十三人)を加えた三病院の現在の医師数は計百二十二人で、数字上は県案を充足できる。長崎大は事実上、県案を共同提案していることから全面協力の方針で、各診療科の医師の配置などにも柔軟に対応するとみられる。研修医は前期三十人、後期四十五人を予定。 

◇病床数 

 市は当初案の四百五十床を「よりよい医療を提供する」などを理由に五百六床に増床した。救命救急センター二十床や地域周産期母子医療センター四十二床など内訳の一部を示したが、残り四百二十二床の詳細は不明。 

 県案は六百床。救命救急センター二十床のほか、脳血管センター、心疾患センター、糖尿病・腎センター、原爆医療センターはいずれも四十七床など全体像を明示している。 

◇議論の経過 

 長崎市は県案について四十二項目を質問し、県は用地買収費など一部を除き回答した。県は、両案の比較を含め地域医療体制のあり方について公開の場で議論するよう求めているが、市は「時間がない」として応じない方針。田上市長は二月下旬の市議会開会までに態度を決定するとしている。 

◎インタビュー/3病院の統合成功を望む 総務省公立病院改革懇談会・長隆座長(67) 

 <国の公立病院改革ガイドライン策定を主導し、全国の公立病院再建に取り組む長氏が、長崎市の病院統合問題について語った> 

 -長崎市の問題をどう見るか。 

 非常に注目している。ガイドラインでは明確に「日赤」の実名を挙げて病院の再編・統合を求めており、国も日赤長崎原爆病院との統合を成功させてほしいと思っている。 

 長崎市は中小の民間病院が乱立しており、こういう地域を想定してガイドラインの策定に臨んだ。公立病院の果たすべき役割を精査し、既存の計画が進行中であっても見直して、統廃合を進めるべきだ。そうして地域医療の崩壊を防がなければならない。 

 長崎市が国の方針に反して統合を受け入れないのであれば、結果責任は市と市長が負うことになる。ただ、市の計画で医師を充足できれば国の負けだ。 

 -市も市民病院と成人病センターを統合する計画で、医師や病床の数など当初案を見直した。 

 形は統合だが、病床数は確保できる医師と看護師の数、提供する医療機能によって決まる。長崎大は医師不足で医師派遣の協力が困難と言っており、市の案では医師を確保できない。よってガイドラインが求めている医師の勤務環境の改善にもつながらない。 

 二〇〇八年度の市民病院の研修医のマッチングはたった一人。これは老朽化しているからではなく、若い医師を引きつける体質になっていないからだ。今、魅力ある病院にできないところに「これからやる」と言われても信用できない。 

 -新市立病院と原爆病院を統合すると、現在の職員数を減らす必要がある。 

 山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院を統合した山形県・酒田市病院機構では一人もリストラしなかった。酒田病院の看護師の一部を日本海病院に移したり、三年たって病院機構に残りたいかどうかを尋ね、残りたくない人は本庁や関係機関に戻すようにしたりした。さまざまな手法を研究したらどうか。 

 -長崎市はガイドラインが慎重な対応を求めているPFIを導入する計画だ。 

 「慎重に」というのは「認めない」と解釈してもらっていい。滋賀県近江八幡市の市立総合医療センターで失敗し、高知県の高地医療センターは見直しも検討中。また長崎市がPFIの導入可能性を調査させた業者は近江八幡市の医療センターのコンサルタントだ。 

 PFIの最大の問題点は、自治体と契約を結ぶ特定目的会社(SPC)が利益を確保しようと実際に清掃や調理などを行う業者への委託料を低く抑えるため、経営の質を追求するインセンティブ(刺激)が働かないこと。高知医療センターではSPCの約千四百項目の業務のうち四分の一ほどが未達成だった。 

 -県の提案に問題点はないのか。 

 ほかの公立病院の面積に合わせて設計するのではなく、目指すべき機能を効率的に考えて必要な面積を算出すべきだ。民間は自治体よりかなり低額で建設しており、さまざまな合理的手法を検討してほしい。 

 ◎ことば/PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ) 

 自治体の財政負担を減らすため、公共施設の建設、管理運営に民間の資金や経営ノウハウなどを活用する手法。 

 大手ゼネコンを代表とするSPCが建設、運営(医業部門は市が直営)する方式で2006年10月に開院した近江八幡市立総合医療センターは、医業収益の伸び悩みと建設費の金利負担などにより、事実上破たんした。 

 長崎市の新市立病院計画では、建設費の長期的な金利負担を低減するため、建物が完成した時点で市が買い取るとしている。昨年12月市議会では、PFI導入の必要性について疑問が相次いだが、関連予算は賛成多数で可決された。 

 【略歴】おさ・たかし 医療機関の経営を専門とする東日本税理士法人代表社員。これまで総務省の地方公営企業経営アドバイザーや自治体病院経営改善研究会座長を務めた。 

 【写真説明】 

長隆氏