長崎市民病院 ・成人病センター・日赤長崎原爆病院 三病院 移転・統合問題・・・ 連続報道①


 長崎市民病院 ・成人病センター・日赤長崎原爆病院 三病院 移転・統合問題・・・ 連続報道① 

どうする高機能病院 長崎市長・知事に聞く〈上〉/長崎市長 田上富久氏(52)/地域医療発展へ連携を 
2009.01.26長崎新聞  
  長崎市が市民病院と成人病センターを統合し現在地で市民病院を建て替える計画に対し、県と長崎大が日赤長崎原爆病院を加えた三病院を移転・統合し高機能病院を新設するよう求めた問題は、田上市長の態度決定を来月に控え、大詰めの論議を迎えている。長崎市を中心とする将来の医療提供体制をどう構築するのか。田上長崎市長と金子知事にそれぞれの計画についてインタビューした。(医療問題取材班) 

 
-統合問題への基本認識を。 

 私が医療のベクトルを伸ばすと言っているのは、市民病院がこれまで担えなかった高度医療や救命救急センターをしっかりやるということ。 

 判断の一つは医療。高度医療が担えるか、救命センターが住民のニーズに応えられるか。経営が成り立つのかということも大事。新病院の検討が始まって十五年がたち、本来であれば既に開業している時期であって、二〇一三年度の開業はこれ以上遅らせられない。市の財政状況は厳しいので、どの程度の負担になるのかも大きな判断材料。 

 どんな判断をするとしても、その後に関係者が長崎の医療のために力を合わせることが大事だ。意見を交換する場も設けたい。 

 -市は先日、新市立病院計画の見直し案を示した。各数値は開業時のものか。 

 これは病院局の案。市内部のプロジェクトチーム(PT)で県の計画と合わせて検証し、それを基に政策判断する。数値は開業時の目標。 

 -常勤医師は九十二人。今の市の二病院の医師数より二十人以上多い。医師の大部分を派遣している長崎大は医師不足が深刻化し、協力は困難としている。 

 研修医が減少している状況は認識しているが、長崎大との連携は必要だ。いろんな方法を大学と相談しながら考えたい。 

 
-九十二人で救命救急センターを運営できるのか。 

 運営できると思って病院局がこの人数にしたのだろう。私はPTの検証後に判断するが、二次救急の輪番制や市医師会の夜間急患センターとの連携なども検討したい。 

 -市は建設、運営にPFI(民間資金活用による社会資本整備)を導入する計画だが、他県で失敗した病院もあり、総務省は慎重だ。 

 失敗したケースは十分認識している。そうならないようにできると判断し、この手法を提案している。

 
-市と県のPTの会合の場で地域医療体制について議論をしないのか。 

 会合とは別の場で互いに話はしている。医療関係者も含めてオープンな場で議論をしたいと考えたが、私が判断するまでの時間が限られている中で、関係者の日程を調整できなかった。 

 
-市のPTが市の計画を検証しているが、客観性が担保されないとの指摘がある。 

 PTには客観性を確保するよう指示している。データの分析は外部に委託している。第三者に評価させるとしても人選も含めて時間が足りない。 

 -総務省の公立病院改革懇談会座長の長隆氏は統合問題について国に判断を仰ぐよう提言した。 

 一つの考え方だと思うが、短期間で長崎の事情を把握し判断できるのかということを考えると、難しい。 

 
-市の計画を進めた場合、医師が確保できない、救命救急センターを運営できない、PFIが失敗するなどしたら、どこに責任があるのか。 

 そうならないよう最大限努力するが、そうなった場合は要因を分析しなければならない。もちろん私にも責任がある。 




長崎県/どうなる市民の命綱 長崎市立病院建設問題Q&A/県南 
2009.01.27西日本新聞  
  

 長崎市新地町の市民病院の建て替えをめぐり、県が市の計画と異なる案を示してきたため、新病院建設の行方が混沌(こんとん)としている。「市民の命綱」ともいえる新市立病院はどうなるのか。両案の違いや、背景、課題をまとめた。 


 ●市と県の案どう違うの 

 ▼市-2病院統合、現地建て替え 

 ▼県-3病院統合、長崎駅西側へ 

 Q 市と県の案はどう違うの。 

 A 市の計画は、市民病院(病床四百十四床、医師七十人)と同市淵町の市立病院成人病センター(病床百七十六床、医師十六人)を統合し、現在の市民病院の敷地を拡張して建て替えるというもの。当初は、病床四百五十床、医師八十二人以上の病院を計画していたが、今月二十二日、病床を五百六床、医師を百四十二人に増やした見直し案を発表した。 

 Q 当初計画よりも病床が五十六床、医師も六十人ぐらい増えているね。 

 A 医師の増員分のうち、二十人は研修二年未満の「研修医」、三十人は仕事を任せられる研修二年以上の「専修医」を充てるつもりだ。病床増については建物の形状変更で対応する。病院本体の建設費は約十五億円増え、約百三十五億円となる見通しだ。当初予定していた規模の小さい「新型救命救急センター」は、常勤医師五人、二十床の「救命救急センター」に格上げする。 

 Q 県の案はどうなっているの。 

 A 県の案は、市が統合する市民病院と成人病センターに加えて、同市茂里町にある日赤長崎原爆病院(病床三百六十床、医師七十二人)も統合し、JR長崎駅の西側に移転するというものだ。病床六百床、医師百八十三人で、一病院の規模としては、病床、医師の数ともに市の案を大きく上回っている。 


 ●意見が分かれた背景は 

 ▼市-老朽化しすでに用地買収 

 ▼県-医師流出防止へ規模拡大 

 Q そもそも、なぜ市は病院を建て替える必要があるんだろう。 

 A 市民病院の管理棟は一九六一年に、本館は七五年に建てられた。市は老朽化が進んでいるとして九三年から建て替えの検討を始めた。二〇〇六年、経営健全化のために成人病センターと統合して現在地に建て替えることを決定。その計画に基づき〇七年十月から用地買収を始めており、一三年度の開院を目指しているんだ。 

 Q それでも県は別の提案をした。 

 A 県が提案したきっかけの一つは、国が〇七年十二月に策定した公立病院改革ガイドラインだ。ガイドラインは、公立病院の経営を改善させることを地方自治体に求め、都道府県に対しても病院の再編協議に主体的に加わるように求めている。県は、新市立病院と原爆病院を統合することで、市の当初計画よりも経営の効率化や医療機能の高度化が図れると判断した。病院の敷地もより広い土地が必要になるため、移転を求めている。 

 Q 長崎大医学部も県の案を後押ししている。 

 A 長崎大医学部は今、卒業生の県外流出を非常に懸念している。〇四年度に研修医が研修先を自由に決められる新臨床研修制度が始まって以降、県内にとどまる研修医が激減。付属病院での研修を希望する医学部卒業生は〇四年度には五十人いたが、本年度は二十九人に減っている。新市立病院には、研修医たちが魅力を感じるように大規模化、高機能化を求めているんだ。 


 ●それぞれ課題はあるの 

 ▼市-医師確保の実現性に疑問 

 ▼県-病院と病床減に強い反発 

 Q 市の案にはどんな課題があるの。 

 A 市の案では、医師や研修医の確保が本当にできるのかという疑問がある。市が統合する二病院の医師は現状では研修医も含めて八十六人なのに、市の案では統合後に百四十二人となり、現状より五十六人も増やさないといけない。長崎大医学部は「ただでさえ医師不足が深刻なのに、こんなにすんなりと医師が確保できるはずがない」と指摘している。 

 Q 医師が確保できなければどんな事態になるのか。 

 A 救命救急センターや高機能な医療の維持がままならず、病院が医師から敬遠されてさらに医師不足が深刻になるという悪循環に陥りかねない。ただ、県の案でも現状より二十五人多く医師を集めなければならず、市も「医師不足解消の保証はない」と疑問視していて、医師確保は多少の差はあれ両方の案の課題でもあるんだ。 

 Q 県の案の課題は。 

 A 県の案では、統合する三病院の病床が現状より三百五十床も減る。市医師会は「県の案の通りに統合すれば大幅に病床が減ることになり、あふれた患者を地域の民間病院が受け入れるのは難しい」と反発している。また、被爆者団体は原爆病院の存続を強く要求している。市民からは病院の数が三つから一つに減ることで、アクセスの不便さや、新病院への患者の集中を懸念する声も出ているんだ。 

 Q いずれにしろ、利用者にとって最善の医療環境が整うようにしてほしいね。 


西日本新聞社